第51章「増える役割」
朝。
砦の中庭に、
少しだけ人の気配が増えた。
壁の上では、
ヨルが外を見ている。
盾は立てかけたまま。
「……役割、
足りてへんな」
ミケが、
腕を組んで言う。
「……人が
増えたからな」
クロは、
焚き火の跡を
片付けながら答える。
フェイは、
年寄りたちと
話していた。
「水汲みは、
俺がやる」
「木は、
俺が割る」
それぞれ、
できることを
探している。
「……勝手に
回り始めとるな」
レインが言う。
「……指示、
出してへんのに」
「……出さんほうが
ええ時もある」
クロは、
壁に立てかけた
図面を見る。
昨日直した箇所。
「……次は
ここやな」
ミケが、
のぞき込む。
「これ、
倉庫?」
「……仮のな」
「え、
ちゃんとした
倉庫ちゃうん?」
「……ちゃんとしたら
壊れた時
困る」
「また
その理屈!」
笑い声。
カイが、
壁際で
木を削っている。
「……矢、
置く場所いる」
「……作る」
「今日?」
「……今日」
昼。
簡易な棚が
増えた。
倉庫未満。
置き場以上。
「……十分やな」
「十分やな」
ミケが、
満足そうにうなずく。
壁の上から、
ヨルが短く言った。
「……音が、
落ち着いとる」
誰も
意味を聞かなかった。
夜。
焚き火の周り。
「なぁ」
レインが、
ぽつりと言う。
「……ここ、
名前つけへん?」
「砦やろ」
「それは
そのままや」
クロは、
首を振る。
「……まだ」
「……決める
段階やない」
誰も、
反論しなかった。
焚き火の火は、
昨日より
少しだけ
大きい。
砦は、
まだ不格好だ。
だが。
今日も、
それぞれが
やることを
見つけていた。




