第47章「帰り道で拾うもの」
街道を外れた小道。
道は、急に細くなる。
踏み固められていない。
馬車も通らない。
「……静かやな」
ミケが言う。
「……王都から離れた」
クロの答えは、それだけだった。
少し先。
倒れた荷車。
車輪が、片方外れている。
「……誰かおる?」
ミケが周囲を見る。
返事はない。
クロは荷車に近づいた。
中身は、ほとんど残っていない。
布袋。
割れた瓶。
散らばった麦。
「盗賊か」
レインが低く言う。
「……たぶんな」
痕は、新しくない。
ミケが麦を拾い上げる。
「もったいないな」
「……拾える分だけや」
クロが言う。
袋に入れる。
その時。
「……あ」
道の脇。
小さな布。
包帯だった。
血は、もう乾いている。
「……怪我人やな」
レインが言う。
「……生きてるかは分からん」
クロは言い切らない。
少し沈黙が落ちる。
「助けに行かんのか」
レインが問う。
ミケが、クロを見る。
クロは、包帯を拾い上げた。
「……今は違う」
「痕が古い」
「追えば、別の誰かを見落とす」
レインは、黙る。
「……王都やったら、
誰も立ち止まらんな」
「……見えにくいだけや」
クロは歩き出す。
「助けられてないだけや」
ミケが、小さく息を吐く。
「……砦やったら?」
クロは間を置いた。
「……来たら、拾う」
レインが言う。
「……通り過ぎる側には、ならんか」
「……ならん」
道は、さらに細くなる。
王都は、完全に背後だった。
拾ったのは、
麦と、
包帯と、
ひとつの選択。
それだけで、
砦に戻る理由は足りていた。




