46章「帰り道の匂い」
街道。
王都から伸びる道を、
クロたちは歩いていた。
荷は、
来たときより
少し重い。
「……結局さ」
ミケが、
背負い袋を揺らす。
「王都、
楽しかったな」
「……そうか?」
「焼き鳥」
即答だった。
「……あれ、
うまかった」
「……高かった」
「せやけど、
うまかった」
クロは、
否定しない。
「……補給は
十分や」
干し肉。
包帯。
薬草。
替えの弦と、
新しい矢羽。
砥石も入っている。
「実はさ」
ミケが、
思い出したように言う。
「王都におる間に、
ちゃんと
揃えとったんやな」
「……ついでや」
「ついでで
焼き鳥食べたん?」
「……それも
ついで」
ミケは、
笑う。
「リィナは
連れて帰る話やなかったけどな」
クロは、
少しだけ
歩く速度を落とす。
「……無理に
連れてくる
場所やない」
「せやな」
「……けど」
ミケは、
前を見る。
「図面は、
もらえた」
「……それで
十分や」
少し沈黙。
「……王都、
物騒やったな」
「……ああ」
それ以上は、
言わない。
王都は、
もう見えない。
英雄の像も、
歓声も。
残っているのは、
道と、
荷と、
少しの余裕。
「……帰ったら、
また忙しなるな」
「……なる」
「でも、
今はええわ」
「……旅の途中やし」
風が吹く。
肉の匂いは、
もうしない。
それでも、
腹は満ちていた。
戻る場所が、
あるからだ。




