第45章「送るもの」
朝。
王都の裏通り。
クロたちは、
荷をまとめていた。
「……帰るん?」
ミケが、
紐を結びながら言う。
「……一回な」
クロは、
短く答える。
成果はない。
でも、
無駄でもない。
通りに出ると、
掲示板の前に
人だかりができていた。
「……逃亡兵やと」
「勇者側の報告兵らしい」
「懸賞金、出とるで」
「まだ捕まっとらんのか」
紙に描かれた似顔絵。
簡素な装備。
槍と小円盾。
ミケが、
ちらりと視線を向ける。
「……物騒やな」
クロは、
足を止めなかった。
王都では、
正義から外れた者は
すぐに名を持つ。
それだけだった。
「……待って」
声がした。
振り返ると、
リィナが立っている。
手に、
小さな筒。
「……これは?」
「……図面」
「……完成品じゃない」
クロは、
それを受け取る。
「……読めんでも
ええ」
「……数字は、
現地で変えて」
ミケが、
のぞき込む。
「……これ、
使えるん?」
「……使えない前提で
書いてる」
即答だった。
「……直す前提」
クロは、
うなずく。
「……十分や」
リィナは、
一瞬だけ迷ってから
言った。
「……王都の仕事として
関わるつもりはない」
「……でも」
紙を、
指で軽く叩く。
「……壊れるなら、
理由が欲しい」
それだけだった。
別れ際。
「……名前」
クロが言う。
「……リィナ」
「……また、
必要になったら
呼ぶ」
リィナは、
小さく笑った。
「……壊したら
呼んで」
クロたちは、
王都を出る。
背後では、
英雄の像が
朝日に照らされていた。
正義は、
変わらない。
だが。
正義の外で、
線が引かれ始めていた。




