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第44章「合わない理由」
王都。
リィナは、
夜になっても机を離れていなかった。
紙の上に、
線を引く。
消す。
また引く。
「……成立しない」
水路。
貯水。
人数。
「……王都の前提が、
そのままじゃ
通らない」
扉の向こうから、
同僚の声。
「まだやってるのか」
「廃砦の話やろ?」
「無理に決まっとる」
リィナは、
顔を上げなかった。
「……だから
“合わない”」
「……合わないことが、
分かっただけ」
紙を一枚、
机の端に寄せる。
「……完成を
目指さない」
「……壊れながら
続く前提」
同僚は、
苦笑した。
「建築じゃないな」
「……そう」
リィナは、
静かに言う。
「……生活です」
窓の外。
整った王都の灯り。
ここでは、
すべてが
守られる前提で
作られている。
あの砦は、
違う。
守る側しかいない。
リィナは、
紙を畳んだ。
「……引く線は、
まだ途中」
それでも、
引く意味は
見えた。
合わない。
だが。
合わない理由が、
初めて言葉になった。




