第41章「揺れない正義」
拍手は、
いつもより大きかった。
王都中央広場。
勇者は、
壇上に立っている。
鎧は、
磨き上げられていた。
傷一つない。
「勇者様!」
「ありがとうございます!」
声が、
降り注ぐ。
勇者は、
静かに手を上げた。
歓声が、
さらに高くなる。
「……魔王討伐は、
順調だ」
声は、
落ち着いている。
「……恐れることはない」
群衆は、
安心したように
息を吐いた。
壇上を降りる。
側近が、
すぐに近づく。
「……次の作戦も、
滞りなく」
「……分かっている」
勇者は、
歩きながら答えた。
「……問題はない」
その時。
「……報告です」
別の兵が、
駆け寄る。
「……廃砦付近で、
人の流れが
確認されました」
勇者の足が、
一瞬だけ止まる。
「……避難民か」
「……商人の報告と、
街道警備の証言が一致しています」
「……野盗の証言もあり、
人が集まっているのは
確実かと」
勇者は、
軽く息を吐いた。
「……問題ない」
「……避難は、
推奨している」
「……従わない者が
いるのは、
いつものことだ」
側近が、
わずかに声を落とす。
「……ただ」
「……噂が、
少し」
勇者が、
視線を向ける。
「……どんな噂だ」
「……死霊使いが
関わっている、と」
空気が、
一瞬、
張り詰めた。
勇者は、
ほんのわずかに目を細める。
「……ネクロマンサーか」
一瞬だけ、
過去を思い出すような間。
「……まだ、
残っているのか」
だが、すぐに表情は戻る。
「……危険思想だな」
「……秩序を乱す」
それは、
正しい判断だった。
誰も疑わない。
「……監視を強めろ」
「……証拠が揃えば、
排除する」
側近が、
深くうなずく。
「……討伐は、
まだ」
「……だが」
勇者の声が、
低くなる。
「……私の戦いを
妨げるなら」
「……正義の名で、
裁く」
宣言ではない。
感情でもない。
ただの、
確認。
勇者は、
再び歩き出す。
歓声が、
背中を追いかける。
誰も、
気づかなかった。
その正義が、
“従わない者”を
初めて数え始めたことに。




