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悪と呼ばれたネクロマンサー 〜拾えない命を拾うために、僕は悪を選んだ~  作者: よすが


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第37章「来てしまった人たち」


 昼を少し過ぎた頃。

 砦の外に、

 人影が見えた。

 数は、

 多くない。

 十人ほど。

 足取りは、

 遅い。

 ヨルが、

 先に気づいた。

「……来るぞ」

 クロとミケも、

 外に出る。

 年寄りばかりだった。

 杖をついた者。

 荷を引きずる者。

 肩を借りて歩く者。

 武器は、

 ほとんどない。

 先頭に立つ男が、

 声をかけた。

「……ここが、

 廃砦、ですか」

「……噂を、

 聞きました」

 クロは、

 すぐに答えなかった。

「……どんな噂や」

「……勇者様の道から

 外れた人間でも」

「……追い出されへん

 場所がある、と」

 ミケが、

 思わず顔をしかめる。

「……そんなん、

 誰が言うたんや」

「……村の商人です」

「……もう、

 村は持たんと」

 サラが、

 人の顔を見る。

 疲労。

 脱水。

 古傷。

「……食べ物は?」

「……三日分も、

 ありません」

 沈黙が落ちた。

 ヨルが、

 低く言う。

「……ここは、

 助けを約束する

 場所やない」

 男は、

 うなずいた。

「……分かってます」

「……でも、

 ここしかなかった」

 フェイが、

 一歩前に出る。

「……子どもは?」

「……おりません」

 その言葉が、

 妙に重かった。

 クロは、

 砦を見る。

 壁はある。

 屋根もある。

 だが、

 余裕はない。

 サラが、

 静かに言う。

「……全員、

 今は診れる」

「……でも、

 続けられるとは

 言えません」

 正直だった。

 ヨルが、

 クロを見る。

「……どうする」

 クロは、

 すぐには答えなかった。

 老人たちの視線が、

 一斉に集まる。

 期待じゃない。

 覚悟の目だった。

「……泊まれるのは、

 今日までや」

 クロは、

 そう言った。

「……明日もここに

 居たいなら」

「……働くしかない」

 老人たちは、

 顔を見合わせる。

 やがて、

 一人が言った。

「……畑なら、

 やれます」

「……手は、

 まだ動く」

「……死ぬまで

 働くつもりで

 来ました」

 その言葉で、

 決まった。

「……入れ」

 ヨルが、

 短く言う。

 門はない。

 だが、

 砦は開いた。

 その夜。

 焚き火の数が、

 一つ増えた。

 食べ物は、

 薄かった。

 寝床は、

 狭かった。

 誰も、

 文句を言わなかった。

 クロは、

 夜空を見る。

「……もう、

 戻れへんな」

 ミケが、

 小さく笑う。

「……来てしまった人が

 おるからな」

 その通りだった。

 廃砦は、

 噂の場所になった。

 それは、

 始まりじゃない。

 責任の始まりだった。


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