第3章 誰かが見ている
夜。
火は、小さくしていた。
「……今日は静かやな」
ミケが、欠伸まじりに言う。
「……静かな方がええ」
クロは、周りを見た。
風。
草。
音は、ない。
それでも。
「……なんか、落ち着かん」
ミケが首をかしげる。
「……気のせいちゃう?」
クロは答えない。
代わりに、火に小枝を足した。
カン。
遠くで、金属が当たる音。
「……今の、聞いた?」
「……聞いた」
二人は、同時に立ち上がる。
闇の向こう。
人影は、見えない。
ミケが、小石を拾う。
「……出てこい」
返事はない。
ザッ。
草を踏む音。
今度は、はっきり。
「……来る」
クロが言う。
三つの影。
距離は、まだある。
「……野盗やな」
ミケが、低く言った。
影は、近づいてくる。
だが——
止まった。
「……?」
野盗たちが、ざわつく。
「……おい、さっきの道……」
「……行けねえ」
クロは、目を細めた。
影の足元。
地面に、深い跡。
何かを、突き立てたような。
「……地面、えぐれてる」
ミケが、呟く。
次の瞬間。
ゴン。
何かが、野盗の足元に落ちた。
石。
いや——
壊れた槍の穂先。
「……ちっ」
野盗の一人が、舌打ちする。
「……やめだ」
「……引くぞ」
三つの影は、来た道を戻っていった。
静かになる。
「……なに、今の」
ミケが言う。
「……俺たち、
何もしてへん」
クロは、地面の跡を見つめる。
「……誰かが、
前に立った」
「……俺たちの、
前で」
ミケが、腕を組む。
「……助けられた?」
「……多分な」
クロは、周りを見回す。
「……名乗らへんタイプや」
「……嫌いやな、そういうの」
ミケは言いながら、少し笑った。
「……私は、
嫌いやない」
火が、ぱちりと鳴る。
クロは、杖を背負い直す。
「……気ぃ抜くな」
「……見られてる」
誰かに。
守られているのか。
それとも、
まだ名も知らない誰かに、
見極められているのか。
答えは、まだ出ない。




