第27章「静かな数」
砦は、静かだった。
音がないわけじゃない。
レオの、浅い呼吸音。
風に揺れる、壊れた旗の音。
それだけだ。
ヨルは、入口に立っていた。
盾は前。
背中は、砦。
「……静かすぎるな」
フェイは、中で火を見ている。
来訪者の男は、水を汲みに行っている。
人数は、少ない。
守る対象は、三人。
立てる盾は、一枚。
ヨルは、砦の内側を見回す。
入口。
中庭。
レオのいる部屋。
全部を同時には守れない。
「……三人やったら、回る」
「……四人で、ぎりぎり」
「……これ以上は、無理やな」
誰に聞かせるでもなく、言葉にする。
水場の方から、足音。
来訪者の男が、桶を抱えて戻ってきた。
「……遅くなりました」
「……ええ」
ヨルは、桶を受け取る。
この距離。
この時間。
もし外から何か来たら。
入口を守るか。
レオを守るか。
二つは選べない。
フェイが、不安そうに言う。
「……クロたち、大丈夫かな」
「……戻る」
根拠はない。
だが、言い切る。
ヨルは、砦の壁に手を当てた。
石は冷たい。
「……ここは、人を集める場所やない」
「……守れる数を、知る場所や」
夜。
見張りは、ヨル一人。
眠る時間は、短い。
それでも、目は閉じない。
クロが戻るまで。
ミケが戻るまで。
ここは、崩せない。
ヨルは、盾を握り直した。




