第21章「行ける距離」
夜明け前。
霧が、砦の外に溜まっていた。
ヨルは、すでに外に出ている。
盾を背負い、
足元を確かめている。
「……足跡、二つ」
戻ってきて、
クロに告げる。
「……巡回や」
「……兵?」
ミケが聞く。
「……分からん」
「……でも、
盗賊やったら、
もっと荒い」
クロは、地図を広げた。
「……一番近い街まで、
半日」
「……戻りは?」
「……同じ」
フェイが、
不安そうに聞く。
「……そんなに、
離れるん?」
クロは、
首を振った。
「……離れられへん」
「……だから、
行ける距離だけや」
ミケが、
地図を覗き込む。
「……ここ、
村跡あるやん」
「……勇者、
通ったとこや」
クロは、
その印を指でなぞる。
「……薬が、
残ってる可能性はある」
「……でも」
「……人は、
おらんかもしれん」
ヨルが、
短く言う。
「……それでも、
行く価値はある」
クロは、
少し迷ってからうなずいた。
「……俺とミケで行く」
フェイが、
思わず立ち上がる。
「……危ない」
「……ヨルが、
ここ守る」
ヨルは、
即座に答えた。
「……任せろ」
その一言で、
場が落ち着いた。
ミケが、
小さく息を吐く。
「……二人きりの旅、
久しぶりやな」
「……そうか?」
「……そうや」
砦を出る前。
クロは、
レオの前に立った。
「……すぐ戻る」
レオは、
ゆっくりうなずく。
「……待ってる」
その言葉が、
重い。
クロとミケは、
砦を出た。
ヨルは、
入口に立ったまま動かない。
盾は前。
背中は、砦。
ここは、
もう通り道ではなかった。




