第15章「拾われない順番」
次の村は、
地図にも名前が薄かった。
通りは短い。
家も少ない。
だが、
煙は上がっていた。
「……人は、
おるな」
ミケが言う。
「……生きては、
いる」
ヨルが続ける。
クロは、
何も言わずに歩いた。
村の中央に、
人が集まっている。
誰も声を張り上げていない。
泣き声もない。
ただ、
待っている。
「……勇者様が、
通ったばかりです」
女が言った。
「……魔物は?」
クロが聞く。
「……倒してくれました」
「……全部?」
「……はい」
その答えは、
迷いがなかった。
だが。
「……死んだ人は?」
ミケが、
少し間を置いて聞く。
女は、
指を二本立てた。
「……前に出た人です」
クロの視線が、
地面に落ちる。
ヨルは、
人の並びを見ていた。
「……残ったのは?」
「……子どもと、
女と、
年寄りです」
誰も嘆かない。
怒りもしない。
「……正しいことを、
してくれたから」
女は、そう言った。
クロは、
日が沈むまで、
村に留まった。
焚き火の音。
静かな夜。
墓は、
二つ。
クロは、
杖を握る。
「……今回も、
聞くんか」
ミケが言う。
「……ああ」
「……聞かんまま、
進めへん」
ヨルは、
止めなかった。
だが、
一歩離れて立つ。
杖が、
静かに熱を持つ。
声は、
一つだけだった。
「……順番や、
思ったんや」
低い声。
「……魔物より、
先に前に出た」
「……若い順や」
「……それが、
守ることやと思った」
クロは、
歯を食いしばる。
「……勇者様は、
間違ってへん」
「……せやけど」
「……順番は、
誰が決めたんやろな」
声は、
それだけで消えた。
夜が、
元に戻る。
クロは、
何も言わずに立ち上がった。
「……また、
同じやな」
ミケが言う。
「……少し、
重なってきた」
ヨルが答える。
一方。
少し離れた場所で。
ガルドは、
報告書を書いていた。
「……村名、
第七定住区」
「……人的被害、二」
数字は、
前より少ない。
だが、
胸は軽くならない。
ガルドは、
紙を折りたたむ。
「……順番、か」
誰に聞かせるでもなく、
そう呟いた。
同じ言葉が、
別の場所で、
重なり始めていた。




