第12章「残った村」
村は、静かだった。
家は立っている。
畑も荒れていない。
井戸も、使われている形跡がある。
「……なんも、
起きてへんように見えるな」
ミケが言う。
「……見えるだけや」
ヨルは、村の奥を見ていた。
人影はある。
だが、少ない。
声も、少ない。
通りを歩くと、
干されたままの洗濯物が揺れていた。
風に。
「……ここ、
勇者が通った村やろ」
ミケが、声を落とす。
「……うん」
クロは答えた。
魔物は討たれた。
被害は最小。
――そう報告される類の村だ。
家の前に、腰を下ろした老人がいた。
クロが、声をかける。
「……すみません」
老人は顔を上げる。
「……旅の人か」
「……少し、
話を聞いても?」
老人は、少し考えてからうなずいた。
「……勇者様がな」
それだけで、
言葉が止まる。
「……助かったんですか?」
ミケが聞く。
「……ああ」
老人は答えた。
「……助かった」
だが、
その声に喜びはなかった。
「……魔物は、
全部倒してくれた」
「……若いのも、
何人か、
前に出てな、
持っていかれたがな」
クロが、眉をわずかに動かす。
「……持っていかれた?」
「……討伐の時や」
「……前に出た」
「……そういう者から、
倒れていった」
老人は、空を見上げる。
「……勇者様は、
悪くない」
「……正しいことをした」
「……せやけどな」
そこで、
言葉が途切れた。
ヨルが、一歩前に出る。
「……今、
村は守れているか」
老人は、すぐに答えなかった。
「……守れては、
おる」
「……ただ」
「……作る手が、
足りん」
沈黙。
ミケが、周りを見る。
「……子どもと、
年寄りばっかやな」
老人は、何も言わない。
クロは、拳を握った。
だが、
杖には触れない。
今は、
聞くだけでいい。
「……ありがとうございました」
クロが言う。
村を離れる時。
「……数字やと、
成功なんやろな」
ミケが、小さく言った。
「……ああ」
ヨルが答える。
「……だが、
終わってはいない」
クロは、振り返らなかった。
この村は、
壊れてはいない。
だが、
前に進めずにいた




