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悪と呼ばれたネクロマンサー 〜拾えない命を拾うために、僕は悪を選んだ~  作者: よすが


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第1章 遺跡と杖

勇者が魔王討伐へと進軍し、

 世界は「正義の時代」に入ったと言われていた。

 人々は勇者の勝利を疑わず、

 危険な力は、すべて「悪」として遠ざけられていた。

 それが、この世界の“常識”だった。


第1章「遺跡と杖」


 石の階段は、思ったよりも深かった。

 クロは、松明を掲げながら足元を確かめる。

「……まだ下か」

 遺跡の中は静かだった。

 風もなく、虫の声もしない。

 それでも、クロは落ち着いていた。

 こういう場所は、嫌いじゃない。


 クロは、遺跡巡りが趣味だった。

 宝探し、というほど大げさなものじゃない。

 壊れた壁を見たり、昔の文字を眺めたり、

 「ここに誰かが生きていた」痕跡を探すのが好きだった。


 階段の先は、広い部屋だった。

 天井は崩れかけ、中央に石の台がある。

「……当たり、かな」

 クロは台に近づく。

 その上に、一本の杖が置かれていた。


 黒ずんだ木。

 先端には、割れた宝石。

 正直、見た目は地味だ。

「……売れそうにはないな」


 そう言いながらも、クロは手を伸ばした。

 その瞬間。

 冷たい感触が、腕を走った。

「……っ」

 クロは反射的に手を引く。

 心臓が、ドクンと鳴った。

「……今の、なんや」


 もう一度、慎重に触れる。

 今度は、何も起きない。

 クロは杖を手に取った。

 不思議と、嫌な感じはしなかった。

 むしろ――

「……落ち着く?」


 背後で、音がした。

 ゴトリ。

 振り返る。


 部屋の隅。

 倒れていたはずの白骨が、少し動いた。

「……は?」

 もう一度。

 ゴトリ。

「……待て待て待て」


 クロは後ずさる。

 だが、逃げなかった。

 白骨は、完全に立ち上がることはなかった。

 ただ、こちらを向いている。

 攻撃してくる様子もない。

「……動くな」


 思わず、そう言った。

 白骨は、本当に動かなかった。

「……俺が、やったんか?」


 クロは、自分の手と杖を見る。

 嫌な予感と、好奇心が入り混じる。

 クロは、ゆっくりと近づいた。

 白骨の前で、膝をつく。

「……すまんな」


 誰に言うでもなく。

 クロは、白骨の頭をそっと地面に戻した。

 その瞬間。

 白骨は、完全に動かなくなった。


「……」


 クロは、しばらく黙っていた。

「……これ、

 人に言ったら、

 誤解されるやつやな」


 杖を見る。

 ただの棒じゃない。

 でも、使い方次第や。


 クロは、白骨を丁寧に並べ直す。

 崩れた石を集め、簡単な墓を作った。

「……勝手に起こして、悪かった」


 遺跡を出るころ、外は夕方だった。

 クロは、杖を背負う。

「……面倒なもん拾ったかもしれん」


 そう言いながら。

 でも。

「……捨てる気は、ないな」


 クロは、歩き出した。

 この杖が、

 やがて「悪」と呼ばれる理由になるとも知らずに。

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