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『白い息の向こうで』

作者: 優飛
掲載日:2025/12/29

碧は、今日も教室の隅で窓を見ていた。

みんなの笑い声が遠く聞こえるのに、自分だけ別の世界にいるみたいだった。


「どうせ、ぼくなんか……」


口に出したら、本当にそうなってしまいそうで、碧は心の中だけでつぶやく。

外は白い息が溶けていく冬の朝。曇った窓ガラスに、指で小さく丸を描いた。


そこにふっと風が吹くように、文字が浮かんだ。


──きょうも、生きててえらいよ。


「……え?」


急いで手をこすっても、消えない。

まるで窓が、碧の気持ちを知っているみたいだった。


胸の奥がきゅっとして、涙がにじむ。

誰にも言えなかった言葉。ずっと欲しかった言葉。


“えらい”なんて、誰も言ってくれなかった。

ネガティブな自分なんて、居場所なんてないと思っていた。


碧は小さく笑った。

笑おうとしてじゃなく、自分でも気づかないうちに。


「……ありがと。」


窓ガラスにそっと指で書き足す。


──ぼく、もう少しだけがんばるよ。


白い息がふわりと広がる。

その向こうで、曇った窓に残った文字が、弱い光に揺れていた。


まるで、彼だけの味方がそこにいるように。

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