8 マシンファイト
翌日、朝6時きっかりに目を覚ますと隣のベットではまだエリが寝息を立てていた。
一通りの警戒は昨日のうちに済ませていたのだが念のためのトラップと簡単な書き置きを残して俺は部屋を後にした。
昨日みた地図を頼りにホテルを出て少し歩き大通りに出る。端とはいえ大通りにもなると大きなビル群が現れる。
そのほんの一角、地上にひょっこりと出ている小さな入り口から俺は地下へと降りていった。
真新しく白いタイル張りの階段をぬけ、ひらけたホームへに足を踏み入れる。縦長に伸びたその空間には2メートル置きにドアと並ぶための目印が設置されている。白く無機質なライトが淡々と照らすその前で立ち止まる。俺のほかに人は一人もいなかった。
ドアの上にはランプが赤くともっていたが、俺が前に立って一分もすると俺の前にあるライトのみが緑に変化し、それと同時に扉が開く。
中へ入るとそこは約2メートル四方の空間があるのみだったがその一面にはモニターが設置されていた。
「クラン・ベルフォード様おはようございます 行き先をお伝え下さい。何かお困りでしたらパネルにてお願いします。」
女の淡々とした声が狭い個室のなかに響いた。
「C21」
事前に調べておいた場所を伝える。
「中央21番街ですね。出口はどちらにしましょうか」
「苅場ビルに近い所がいいな」
「でしたら13番出口でよろしいでしょうか?」
「ああ」
そう答えると数秒の後
「では出発いたします」
そう声がかかると俺は心地のいい加速を体に感じた。
五分程度経っただろうか、俺は目的地へと到着した。ヤマトの端から中心部までおよそ50キロ以上はあることを考えると相当なスピードで移動していたことが伺える。
俺は階段を上がり、ヤマトの中心街へと足を踏み入れる。
俺の目的地はとあるビル。風俗街とも呼べるような場所にひっそりと佇む小さなビルにはいる。
風俗店の中に唯一の古物商に俺は入った。朝の6時20分だと言うのに店は空いており中には老人が1人いるのみだった。
「いらっしゃい 何が欲しい」
「仕事と情報、それに武器だ」
いきなりそう告げると老人は少し面食らったようだったが
「あんた殺し屋だろ ここは初めてかい?」
老人はすぐにそう返し今度は俺が押し黙った
「そう警戒しなさんな 人を見るのが俺の仕事なんだぜ そんぐらいはわかる 」
警戒が表に出過ぎていたのだろうか。次からは気おつけなくては。
老人は続けて、
「表でそんな話はするもんじゃない ついてきな」
「ヤマトの地下にところ狭しと敷き詰められた交通網そのほんと少し下。政府の研究施設やらとのちょうど間に出来たこの空間、あんたもヤマトで仕事したいならココでやんな」
店の裏手にある小さな扉を出て、ボロボロの階段を降りていきながら老人はそう語る。
「こういう昔からあった建物との隙間から地下を下ればいい」
「で、あんたはそこの門番ってわけか」
「ちょっと違うな 基本的に下には誰でも降りられる 俺は言わばガイドってとこだな あんたみたいな何も知らん奴らにちゃんと案内してやる」
「それであの店構えってわけか?」
「そうだ 裏の世界の人間にゃあんな店、いかにもクセェだろ」
「上には目つけられないのか?」
「つけられてるさでも手は出せない、理由はまぁじき解る」
そんな調子で60メートルほど下っただろうか。錆びれた鉄のドアが現れる。
「ここはな、昔防災用の地下放水路だった 戦後の都市開発ですっかり忘れ去られたこの場所に悪い奴らが目をつけたってわけさ。」
そう言うと重いハンドルを回して扉を開ける。
「ヤマト中心部の地下に敷き詰められたこの街を人々はこう呼ぶ、奈落と」
そこはネオンと蛍光に彩られる鮮やかな街だった。ひんやりとした空気が充満し、ところ狭しと小さなビルが並んでいる。上は20メートルほどで天井になっておりコンクリートに囲またその空間には結構な人が行き交っていた。
「手配屋までは案内してやる。俺はそこまでだ。」
老人はそう言うと息交う人の中をスルスルと抜けていく。路地を抜けると人はだんだん捌けていき俺はそこにある小さな扉に入るよう促される。
入った建物の2階、中東系の香水の香りが感じられる部屋へ通される。懺悔室のような場所だ、薄暗く人が2人はいれるかといった部屋の中。
「ユリウス客だ」老人は部屋の奥、薄暗い空間にそう呼びかけると
「あとはそっちで勝手にやんな」
そう言い残し立ち去った。
そこで待つと奥から、小柄な男が歩いてくる。肌や顔立ちがかなり幼い印象を与えた。東南アジア系顔立ちのその少年は俺たちを遮るように置かれているカウンターの奥に腰掛けた。
「座んなよ」
言われた通りそばの椅子に腰掛ける。
「俺はユーリってんだ あんたは、」
名乗ろうとする俺を制止して、ユーリは自身の端末を操作する。
「クラン・ベルフォード 19歳 登録は昨日、ガラは在留資格のみか」
「武器と情報あと仕事が欲しい」
「あんたかなり場数踏んでんだろ」
「そんな分かりやすいか」
「いや、俺にはさっぱりだ ただ、手配屋にもランクがあってね、あの爺さんがいきなりココへ連れてきたってことはあんたはそう判断されたんだ 俺はともかくあの爺の見る目は確かだ」
「で、武器と情報か 何がいる?」
「武器はまぁ銃なら何でもいい そうだななるべく癖がなくて重いほうがいいな」
「オッケーそいつは楽勝」
「後はリストだ 昨日から1週間のヤマトに登録された人間のリスト そしてそれを探ってる人間のリストも頼む」
「2つ目がちょっと重いな まぁ合わせて22万ってとこだな でもよ、その2つ目のリストにはあんたの名前も載ることになるぜ」
「消せるか?」
「30だな」
「なら同じようにそれを消ししたやつのリストもたのむ」
「旦那、無茶言っちゃいけねぇよそれは無理だ」
「いくらだ?」
しばらく苦い顔をするが
「100いや150は欲しい」
「それでいい」
「それでいいって、あんた勘違いしてないか? うえで使われてる電子通貨はここでは使えない。使えるのは現金のみだ。仕事のレート見てからおんなじこと言えたら考えてやるよ。」
「やっぱ悪いことするなら現金だよな」俺のころと変わっておらず少し安心していた。
「とりあえず仕事見せてみろ」
そう言うと書類の束を手渡される。
「初めての仕事ならこんなもんだな」
1枚1枚確認するが数万円の仕事ばかりだった。そのほとんどが殺しの案件
「これ、堅気か?」
「いやそれはない ここでも身分持ちをやれば上が介入してくるから全員訳あり 殺しは嫌か?」
「必要に迫られればするけどなるべくはな」
書類を読み進めると50万〜と書かれた案件が目にはいる。
「これは?MFってやつ」
「マシンファイトのことか? 確かに稼げるがキツイぜこれは」
「最低50万だろ」
「そうだ、相手するマシンのグレードと企業に応じて金額は変わる 受けるつもりなら7時からの枠にねじ込めるぜ どうだ?」
「きついと思うか?」
「生きて帰れたら上出来だな」
「面白い」




