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last hour  作者: Sa
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仕事を手に入れて最も良かったことは、教師用の一軒家が用意されていたことだろう。

急ピッチで進められた都市開発の最中に建てられた職員用社宅は、学校から徒歩十分。

敷地は広く、周囲を見渡しやすい立地で、警戒という点でも申し分がない。

2032年現在、教員の福利厚生はここまで充実しているものなのだろうか。

「やっぱりこっちのほうは土地が余ってるのかしら。私、ナイス判断だったわね」

「どうせ適当に選んだだけだろ」

「違うわよ。選ぶべくして選んだ、って感じ」

二人で暮らすには明らかに広すぎる新居。

転生二日目にして、俺たちは“安心できる我が家”を手に入れていた。


翌朝。

今日はエリの初登校、そして俺の初出勤だ。

「緊張してる?」

朝食を取りながら、エリが何気なく聞いてくる。

「するに決まってるだろ。初めての学校だし、下手すりゃこの家ともおさらばだ」

「それは困るわね。くれぐれも問題起こさないでよ」

「それ、こっちの台詞なんだが」

慣れてきたとはいえお互いに何事もなく過ごせればいいのだが。


俺はしばらくの間、西岡という教師の補佐として働くことになった。

肩まで届く、緩くカールした髪。

柔らかな雰囲気を纏った女性で、俺より数年先にこの学校へ赴任してきたらしい。

「お互い慣れるまで、支え合っていきましょう」

そう言われたが、支えられているのは明らかに俺の方だった。

担当するのは一クラス。

もっとも、この学校には学年という概念が存在せず、15歳から18歳までの生徒が20人ほど在籍しているだけだ。

幸いにも、俺はエリが所属するクラスに配属された。

それが配慮なのか、単なる人手不足なのかは分からない。

俺のような、教育経験もない人間が務められる時点で察しはつくが、求められるのは高度な技能よりも、最低限の良識だった。

それでも、

教師と生徒の間にある、どこかぎこちない不均衡。

職業ゆえのものか、それともこの歪な町そのものが生み出した空気なのか。

俺はその違和感を、確かに感じ取っていた。


その日の暮れ。

任された簡単な雑務を終え、俺は机に広げた名簿に目を通す。

生徒、職員、一人一人をしっかり確認しながら。

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