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朝食を食べ終わり、俺たちは学校へと向かった。
桜台初等教育機関
ヤマト南部にある数少ない学校の一つで生徒総数も500人程度とそこまで多くは無い。新設された建物のようで、白くきれいな建物にはかなりの清潔感が漂っている。
受付に話をつけると俺たちは空き教室の一つへと通された。道中、グラウンドと思わしき場所では子供たちが一心不乱にボールを追いかけている。サッカーでもやっているのだろうか。いくら未来とはいえそういうところはあんまり変わってないんだなーなんて感慨にふけっていた。まぁ俺は学校なんてほんの少ししか通ったことないんだけど。正直かなりうらやましかったのだ。同世代の子供と楽しくサッカーをやるなんてそれにどれだけ憧れただろうか。もちろん俺だって元職場の同僚たちとサッカーをしたこともある。ただ、その時はボスの息子が相手チームにいたので点なんて入れようものならその場で射殺されかねないようなデスゲームではあったのだが。
通された教室には一人の女性が座っていた。年齢は40代程だろうか。部屋の重厚な雰囲気に対してはだいぶ若い印象を抱かせた。
「こんにちは エリ・ベルフォードさんね。そっちは電話をくださったお兄さんでお間違いなくて?」俺たちに椅子に座るように促しながらそう語りかけてくる。
「そうです こんにちは ええと、」
「私は福田といいます。ここの教育長を努めているわ」
「福田さん よろしく」隣にいたエリもそう挨拶する。
「よかった、あまり緊張はしていないようね。何か飲む?」
コーヒーと紅茶を受け取ると福田は続けて
「転入ということだけど、身分もあるようだしまず間違いなく通るはず。今日ここに来てもらったのはこの学校についての説明をしておこうとおもってね。知っての通りここは少し特別な街だから。」
校内を歩きながら、福田が説明を続ける。
「今日は平日だから普段の感じを見てもらうにはちょうどいいわね 学校とはいっても授業は全部映像で行われてるからあんまり」
「じゃあわざわざみんな集まって何してるんですか?」
エリがそう尋ねる。
「子供、特に10代中ごろの子にとっては、集団の中で過ごすという経験は大きな意味を持つのよ。もちろんそれだけがすべてじゃないし、合わない子ももちろんいるわ。それでも、ここは教育というよりはむしろ、育成や選別に重きを置かなくてはならないから。」
福田は伏し目がちにそう告げる。
「もちろん、あなたたち学生がそんなこと気にする必要は無いし それは現場からでも変える必要があると思っているわ。」
窓の外に目をやると、先ほどサッカーをしていた一団は授業を終え、片づけをしているところだった。
校内の見学の後、エリは昨日、警察署で受けたものと同じ検査機を前にして面接を受けた。
「あなたがこの学校に入る理由は?」
「平和に暮らすためです。」
「じゃあ、ここに入って何かやりたいことは?」
「うーん、とりあえずはおいしい物いっぱい食べたいですね。」
そんな感じの質問をいくつか受ける。こいつもなかなか人間らしいごまかし方が出来るようになったもんだと一瞬感心したのだが、実際のところ本心で答えているだけだなんじゃないかとすぐに考えを改めた。
「俺もここで働けませんか?」
エリの転入が認められると、俺はそう切り出した。
「え?」福田は少しだけ驚いたような表情を見せる。
「なるべくこいつと近いところで仕事を探しているんです。掃除でも事務の仕事でも。なんなら前職は掃除の仕事についていたので経験もあります。」
「そういうことなら、でも、掃除は全部ロボットだし、事務の方も空きがないのよ。ねぇ、あなた教師やらない?」少しだけ間をおいて福田はそう切り返してくる。完全に予想外の返しだった。
「教師ですか。 でも資格も、経験もないですし、それに身分だってまともにないのに」
「それは大丈夫よ 今は教えるっていうよりも個々のサポートができる人材の方が大切だしね。それに、そんなこと構ってられないぐらい人手は足りてないのよ。精神的にかなりきつい仕事かもしれないけどそれでもやる?」
正直それはこちらにとってかなり都合のいい展開だった。安定した職に就きつつそれでいてエリに近い場所にいることげできればそれに越したことは無いのだ。
「やります。」
端的に俺はそう答えた。




