第96話 宇宙論の設定
というわけで私は――
全創造の文字通りの女王の目の前であぐらをかいて座っていた。
銀河みたいな髪の宇宙的お母さんが、ルナの入れたお茶を優雅に楽しんでいて……
私はそこで口を開くという、人生最大級のミスを犯した。
ありがとうな、ナイア。
「ねえ、創造。その……この場所の序列っていうか、コスモロジーを教えてくれない?」
彼女は、誰かがその質問をするのを永遠に待っていたかのように微笑んだ。
そして彼女が口を開いた瞬間――
私の脳は会話を退出した。
「無限に積み重なった狂気へようこそ」
創造の声は、銀河が調和して歌うようだった。
彼女の言葉は話されるだけではなく――私たちの魂そのものに書き込まれていった。
「このコスモロジーを理解するには、
その広大さを理解しなければなりません。」
下層ゾーン
「“モータル領域”」
モータル界 – ふつうの人々が生きて死ぬ場所。
スピリット界 – 空間と時間を超越する。
デーモン界 – 直線的な時間進行の外にある。
ソウルゾーン – 独自の時空構造を持つ。現実が酸キメた折り紙みたいに折れ曲がってる。
これは普通のアニメの世界設定だよね?
――違った。
サブゾーン
「概念が始まる場所」
セレスティアル界 – 下級神や精霊が歩く。
リンボ界 – 忘れ去られたものが夢を見る場所。
メビウスゾーン – 再帰的な無限ループ。
セントラルゾーン – すべての世界、アイデア、歴史、可能性の無限データベース。
これはもう Google Drive Premium Deluxe+ でマルチバースをダウンロードしてるレベル。
高次ゾーン
「神モードの概念的現実」
イマジナリ界 – 思考が現実になる。
ヌル界 – 反思考の領域。
ファウンデーションゾーン – 全概念性を支える構造。
ストーリー界 – 物語と時間軸が物理的に存在する場所。
ミラ―ゾーン – 反射と“ありえたかもしれないもの”の並行世界。
真の世界 – 全現実、全次元、全アイデアが無限パンケーキみたいに積み重なる。
究極領域 – 私やルナ、フレイ、ローグなどの原初存在の住処。
私はこのコスモロジーの一部なのに、ついていくのがやっと。
ソース(源)
「真の起源」
創造は真剣な表情になった。
「ここが私の故郷。
すべて――世界も、神々も、システムも――ここから生まれた。」
この領域には二つの場所がある。
ソース宮殿 – 創造本人のような存在が住む中心部。
リアルゾーン – 全コスモロジーを“フィクション”として見る、本当の現実世界。
私は固まった。
「ちょっと待って……そこから見れば、私みたいな神でさえ……フィクションのキャラなの?」
創造は微笑んだ。
「リアルゾーンから見れば、そうね。
でもそれは、あなたの物語を可能にする枠組みでもある。」
私は存在的めまいで吐きそうになった。
そして彼女は言った。
「でもそのさらに向こう――
すべての向こう……
“場所”がある。」
彼女の声は静かになった。
外側(The Outside)
「場所でもない。
物でもない。
“無”ですらない。」
創造はその名を、禁忌でも囁くような調子で言った。
「“外側”とは……
形容できず、非形容でもなく。
パラドックスでも矛盾でもなく。
空虚ですらない。
ただ“ある”――
だが“存在する”という概念そのものの意味を超えて。」
全員が動きを止めた。
ルナでさえ、息をするのを恐れた。
「外側は――
領域ではなく
虚無ではなく
メタ次元でもなく
物語構造でもなく
概念の外側の概念でもなく
論理のない場所でもなく
可能性の枠組みでもない。
なぜなら、それらはすべて“定義”だから。
そして外側は――
“存在”という概念すら超えている。」
彼女は続けた。
「全知――すべてを知る存在ですら、
外側を定義することはできない。
なぜなら“定義”という行為そのものが適用されないから。」
私は目を見開いた。
「じゃあ……あなたでも――創造でも理解できないの?」
彼女はゆっくり首を振った。
「ええ。
私でさえ踏み込めない。
私は外側が生んだ何かから生まれた。
最初の『もしも』が生まれる前の“静けさ”から。」
私は震えていた。
恐怖ではなく――
ただその規模の大きさに。
すべての意味
「外側は触れられず、
見えず、
定義されず、
知られない。
“無”とすら呼べない。
“無”は概念だから。
外側は“すべての前”。
そしてそこから最初の女神が生まれ……
その女神が私を作った。」
永劫が小声で言った。
「外側は物語という概念の親みたいなものだよ。」
私は――
言葉を失った。
「以上があなたのコスモロジーよ。」
創造は微笑んで、背もたれに寄りかかった。
「質問はあるかしら?」
集団全員が虚ろな顔で固まった。
ロナンはよだれを垂らし、
カエルは気絶し、
セレーネは石を抱いてお守りみたいに震え、
セラフィナは逆ラテン語を唱え、
ローグとフレイは――混沌と生死の原初なのに――沈黙。
そして私は?
立ち上がって、
5歩歩いて、
振り向いた。
「なにそのありえっっっっな――」
アウレリアが慌てて私の口を塞いだ。
遅かった。
脳が死んだ。
正気も消えた。




