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新しい女神  作者: ジュルカ
星の山の弧

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第95話 創造と永遠はここに集まっている

夜、静かに降りる


山星の山を遠く望む平原に、静かに夜が落ちた。

銀の霞が空に揺れ、涼しい風がテントを撫でていく。


昼のあの大混乱――

泣いて、叫んで、怯えて、語り合って……

そういう全部の後で。


ようやく、俺たちは“静寂”を手に入れた。


心がもう限界だった俺は、アウレリアにそっと膝枕され、そのまま――


十秒も保たずに眠り落ちた。


アウレリアは頬を赤くして、優しく髪を撫で続けていた。


焚き火の周りでは皆がくつろいでいる。


リラは肉を焼き、

ロナンとダリウスは軽口で小競り合いし、

ナリはアンナに「バレない盗み方」を指導し、

カエルは日誌を書き、

フェンリルとセラフィナは談笑し、

ルナは無言で俺を守るように見つめていた。


――みんな、幸せそうだった。

やっと、落ち着けたと思った。


その時までは。


宇宙が震えた


最初は、小さな波紋だった。


ゆらり。

ひずみ。

静止。


……そして。


キャンプ内の“原初生命体”たちが、同時に固まった。


ルナの瞳が見開かれる。


フレイとローグは食べかけのスナックを落とし、


セラフィナは声を止め、青ざめた。


彼らは震える囁きで言った。


「来る……誰かが来る」

「ありえない……ここに降臨する存在なんて……」

「違う……この圧……まさか……」


空気が重くなる。

重力が折れた。

空が渦を巻き始める。


そして――


星々から一本の光が降りてきた。


やわらかく、美しい光だった。


焚き火の数歩先に触れ、


そこから現れたのは――


小さな金髪の少女


裸足。金のツインテール。

白いワンピース。

銀河を閉じ込めたような瞳。


ルナより少し小さいくらいだろうか。

幼い。楽しそうで、好奇心に満ちていた。


ダリウスとロナンたちは困惑する。


「えっ……誰だこの子?」

「迷子か?」

「なんで存在感だけで世界に押し潰されそうなんだ……?」


理由は簡単だった。


ルナが即座に膝をついたからだ。


フレイは額を大地に擦りつけるほど深く頭を下げ、

ローグは震えながら跪き、

セラフィナは両手を胸で組んで深く頭を垂れた。


声を揃えた。


「――永劫エタニティ様」


皆、凍りついた。


カエルの眼鏡が落ち、

エルサは気絶しアンナに抱きつき、

フェンリルの尻尾はビンッと跳ね上がった。


彼女は小さく微笑んでいるだけなのに――


その“存在感”は、無限の多元宇宙が一点に潰れたような圧だった。


アウレリアでさえ肩を震わせ、

俺の頭を守るように抱き寄せる腕に力が入る。


だが永劫はくすくす笑い、手を振った。


「わっ、ごめんね! 人間ってすぐ壊れちゃうの忘れちゃう!」


次の瞬間、圧はふっと消えた。


全員が一斉に息を吸い込む。

ロナンは胸を押さえて「今二回死んだ」とか言っていた。


そして――もうひとつの光


誰も立ち直る暇もなく。


空が再び開いた。


今度は光ではなく――

星々の裂け目。銀河の奔流。


そこから現れたのは、ルナより高く、セラフィナよりも気高い、

輝くような女性だった。


星光を編んだ髪。

星雲の欠片のような肌。

銀河を湛えた瞳。


彼女は“宇宙に存在している”のではなく、

宇宙そのものだった。


永劫が満面の笑みで叫ぶ。


「お母さま!」


原初生命体たちは即座に地面へ。


ルナでさえ、冷静沈着なルナでさえ、

土に額がめり込みそうなほど深く伏した。


「我が女王」

「我が女王」

「我が女王……!」


セラフィナは震えた声で呟く。


「あれが……創造クリエイション……全ての始まり……“もしも”の最初……第一神に生まれた最初の存在……」


饒舌なカエルは沈黙し、

リラは震え、

ダリウスは蒼白になり、

ナリは汗を流し、

アウレリアは神半身なのに震えながら俺を抱き寄せ――


俺?


スヤァ。


石のように熟睡していた。


創造――あの“創造そのもの”が、焚き火まで歩み寄り、旅人のように腰掛けた。

ドレスの下では銀河が水のように揺れている。


永劫は嬉しそうにその膝にぽすんと座った。


創造はゆっくりと微笑む。

永遠の母のように。


「小さき世界を歩くのは久しいな」


永劫は元気よく頷く。


「ねぇ母さま! 新しい女神がここにいるんだよ! 会いに来たの!」


創造は頷いた。


「ええ。共に挨拶をしましょう」


皆の視線が向いたのは――


アウレリアの膝で眠る俺。


アウレリアは震える声で囁いた。


「り、リリア……お、起きて……お願い……」


ルナまで不安げに囁く。


「ご主人さま……目を……お願いです……」


しかし創造は首を傾げ、微笑んだ。


「休ませてあげなさい。今日、彼女はよく耐えた」


永劫も頷く。


「さっき泣いたからね! レイヤー越しに感じたよ! だから寝かせてあげよ!」


セラフィナの顎が外れそうになる。


「感情が……永劫に届いた……?」


永劫は当然のように言った。


「だって特別だもん!」


創造は広い、宇宙のような声で皆へ告げた。


「恐れなくてよい。

我らは裁きに来たのではなく……

“見届け”に来ただけ」


永劫は足をぶらぶらさせながら笑う。


「それに、母さまはリリアのせいで目を覚ましたんだよ!」


場が凍りつく。


ロナンが震える声で呟いた。


「リリアが……“すべてを創った存在”を起こした……?

え、俺、どんな化け物と旅してんだ……?」


フレイは静かに答える。


「運命づけられた……新しき女神です」


アウレリアは俺を見下ろし、小さく囁いた。


「……リリア……本当に……すごい人……」


創造は優しい瞳で俺を見守った。


「彼女が目覚めるまで……待ちましょう」


永劫は元気よく頷く。


「うん! 反応が楽しみ!」


こうして――


全ての始まりの女王と、永遠の化身が。


俺の膝枕睡眠を見守りながら、

焚き火の前に静かに座り込んだのであった。


――当の本人の俺は、何も知らずにぐっすり眠っていた。


私は、暖かい昼寝から目覚めた猫のように伸びをした。


「んん〜……いやぁ……よく寝た。ありがとう、アウレリア。

君の膝、どんな枕より最高だわ。」


アウレリアは固まり、一瞬で顔を真っ赤にした。

他のみんなは、まるでクトゥルフがバレエを踊るのを見たかのような顔をしていた。


カエルの眼鏡は曇り、

ロナンは祈りを捧げ、

リラは眉間を押さえ、

セラフィナでさえ三百年くらい老けたような表情になっていた。


「えっ……みんな? なんでそんな、アザトースがバック転するのを見たみたいな顔してるの?」


返事はなかった。


沈黙。


恐怖。


緊張の汗が垂れていた。


私は瞬きをし、ついに気づいた。


焚き火のそばに座っている二人の新しい人影に。


甘く微笑む金髪の小さな少女。


そして――

ビッグバンが運営する美容院で整えたような銀河ヘアをした、背の高い宇宙的な女性。


私は普通に指さした。


「えっと……あの超新星みたいな髪の女性は誰?

で、あの子供……母娘って感じ?

てか、彼女の髪、宇宙サロンでセットしたみたいなんだけど?

で、あの子は……キング・アーサーと太陽の子供?」


キャンプ全体が凍りついた。


その場にいたすべての“原初”たちが、魂で悲鳴をあげた。


ルナの顔は死ぬほど真っ白になり、

フレイは気絶しかけ、

ローグは呼吸を詰まらせ、

セラフィナは殺人現場でも見たかのように口元に手を当てた。


その瞬間――


セレーネが私の胸倉を掴んで揺さぶってきた。


「リリアァァァァァァ!!!!!!

あんた今、自分が何を言ったのかわかってんの!?」


私は布の人形みたいに揺れまくった。


「へ、へぇ!? 太陽に例えたくらいで何が悪いのよ――!?」


セレーネの目は恐怖でいっぱいだった。


「あの“女性”はこの世に存在するすべての源!!

万物の頂点!! 最初の意志なのよ!!

あらゆる存在と無の起源!!

創造そのものの具現化!!

そして隣の“子供”は永劫エタニティ――

文字通り、生きた無限多元宇宙なの!!!」


私は瞬きをした。


女性を見る。


少女を見る。


セレーネを見る。


「なるほど。

じゃああのエイリアンXみたいな女性が“創造”で、

キング・アーサーと太陽のQ版みたいな子供が“永劫”?」


その場の全員が倒れかけた。


ダリウスは膝をつき、

ロナンは気絶し、

リラは「消される……」と囁き、

アンナはナリの後ろに隠れ、

カエルは完全に気絶した。


アウレリアは両手で顔を覆いながら、囁いた。


「なんで私はこの人を好きなの……なんで……」


ルナは震えすぎて次元の布が揺れた。


創造がただ……微笑んだ


全ての頂点に立つ女王。


存在より前から存在する存在。


全神が恐れるもの。


その女性はまっすぐに私の目を見た。


彼女の髪の中の宇宙がやわらかく揺れ――


そして

微笑んだ。


暖かく、優しく、おかしそうに。


「あなたの表現は……とても創造的で可愛らしいわ。」


周囲の全員が、その瞬間ほぼ死にかけた。


永劫は嬉しそうに浮かんだ。


「ね、ママ! おもしろいって言ったでしょ!」


私は手を軽く上げた。


「……よっ。」


周囲の全員:


「リリアァァァァァァァァァッッッ!!!!!!」


宇宙がゆらぎ、彼女が立ち上がると銀河が足元で形を変えた。


歩くでも浮くでもなく――ただ“在る”ままに、

私のほうへ近づいてくる。


その存在感は、優しい温かさなのに、

なぜか“無限より重い”ように感じた。


彼女は私の横に膝をついた。


私の頬に触れた。


その声は全ての現実を通り抜けて響いた。


「ついに目覚めたのね……新しき女神よ。」


私はごくりと唾を飲んだ。


「えっと……エイリアンXとか言ってごめん。」


彼女はくすりと笑い――

その瞬間、別の宇宙で千の星が生まれた。


「もっとひどい呼ばれ方も、もっと小さな存在から受けたものよ。」


永劫は私の横に正座するように座った。


「ママ、会いに来たかったんだよ。

私、彼女すごくカッコいいって言ったし!」


創造は頷いた。


「ええ。私の娘が敬愛する者を、この目で見届けたかった。」


背後のみんながまた死にかけた。


ルナは震える声で囁いた。


「ご、主人様……ど、どうしてそんな普通に話せるのですか……?」


私は肩をすくめた。


「……起きたばっかりだし、流れで?」


創造は私の隣に座り、静かに見つめる。


彼女の髪の星々がゆっくり消え、

その視線は私だけに向けられた。


「リリア・フォスター……

あなたは運命の縁に立っている。

深淵はうごめき、

外なる世界が反響している。

あなたが現実の歩む道を選ぶのだ。」


私は瞬きをした。


「へぇ。で、その運命には……コーヒーついてくる?」


永劫が笑った。


ローグは、創造が私をその場で消すと本気で思って泣き出した。


「恐れることはない。

あなたは一人ではない。

あなたの家族が共に歩む。」


胸が少し締めつけられた。


その言葉――


家族。


私は目をぬぐった。


永劫は幼児みたいに私の膝に乗ってきて、

見上げながら言った。


「君、星の光と混沌の匂いがする! 好き!」


周囲は大パニック。


ルナはほぼ爆発し、

アウレリアは真っ赤になって黙り込み――


私はおそるおそる永劫の頭をぽんぽんした。


「……で……なんで二人はここに来たの?」


創造と永劫は顔を見合わせた。


そして私を見つめ、


同時に答えた。


「あなたに。」


私は固まった。


二人は微笑んだ。


焚き火が、宇宙の光で揺らめいた。




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