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新しい女神  作者: ジュルカ
その ガラ アーク

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第91話 その 余波

嵐は過ぎ去った。

だがその残響――恐怖、恥、怒り――は、ソラリスの人々の心に今も残っていた。


奴隷取引に関わった貴族たちは王命により逮捕された。

彼らの称号はすべて剥奪され、

財産は没収され、

その名は王自らの命で貴族の記録から抹消された。


そして犠牲者たちは――檻から解き放たれ、

都のあちこちにある聖堂や避難所で、司祭や治療師たちに手厚く看護されていた。

数十年ぶりに、王国の影に光が差し込んだのだ。


ソラリス城の門が、軋む音を立てて開かれた。


そこを通って入ってきたのは――私、リリア・フォスター。

腕には、ぐったりした二人を抱えていた。


一人は、私自身。

もう一人も……私。


うん。あの変なやつ。

超越分身トランセンデッド・ダブル」で作った私の分身。

今は嬉しそうにカエルをぬいぐるみみたいに抱えて歩いている。


「ちょ、ちょっと、まだ意識が半分しかないんだから!」

私は笑いながらも叱るように言った。

「リラックスしなよ、ボス。」分身の私はにやっと笑う。「大丈夫、大丈夫。見た目より軽いって――うおっ、やっぱ重い。」


背中の上でセレーネがうめき声をあげた。

金の髪は乱れ、法衣は破けていたが、その微笑みはかすかに、確かに生きていた。


「あなた……来てくれたのね。」

「当たり前でしょ。」私は口元を上げる。「友達を売り飛ばそうなんて、そんなの許せるわけないじゃん。あんたは面倒見る価値があるんだよ。」


セレーネは弱々しく笑った。その声は祈りのように柔らかかった。


中庭に着くと、皆がすでにそこにいた――

アウレリア、ダリウス、ライラ、ロナン、ナリ、アンナ、ルナ、フレイ、ローグ、そして柱に寄りかかって「別に興味ないけど」みたいな顔をしているセラフィナまでも。


私たちを見るなり、全員が駆け寄ってきた。


「リリア!」

「セレ――カエル――どうしたの!?」

「王都中が大騒ぎだぞ!」


もう大混乱だった。

叫び、抱き合い、泣いて笑って――

私は二人を落とさないようにするのが精一杯だった。


「ちょ、ちょっと落ち着いて。」

私はセレーネをそっと地面に降ろした。「大丈夫。二人とも無事。ただ一週間くらい寝て食べなきゃね。多分二週間。」


カエルが顔を上げ、疲れた笑みを浮かべた。


「……生きてる、みたいだな。」

「ディナーおごってね。」私が茶化すと、

「お前も死ななかっただろ。チャラだ。」彼は弱い声で笑い返した。


まもなく王が現れた。護衛を従え、その背後には王女エルサがいた。俯きながらも、その瞳には決意が宿っていた。


群衆は静まり返った。


ソラリス王アラリックは、冒険者たち、解放された奴隷たち、混乱の中で秩序を保とうとする兵士たちを見渡し――そして私に視線を向けた。


「リリア・フォスター殿。」

低く響く声が中庭に広がる。

「娘から、今宵起きたことを聞いた。……この城で行われた罪をも。」


彼は拳を握りしめた。


「我が目が届かなかった闇を暴いた。感謝するとともに……王として、深く恥じている。」


私は首を傾げて言った。


「礼なんていりません、陛下。二度とこんなことが起こらないようにしてください。誰も鎖につながれて生きるべきじゃない。」


エルサが一歩前に出て、私の後ろにいる獣人たちを見つめた。


「住まいと食事、そして護衛を手配します。彼らの再出発は、私が責任を持って見届けます。」

「いいですね。」私は静かに答えた。「やることは山ほどあります。もう二度と彼らの信頼を裏切らないで。」


その夜、城の食堂では全員が集まっていた。

包帯だらけで、傷つき、疲れ果てて――でも生きていた。


カエルは中央に座り、出来事を語っていた。

私はその横で、ガラの残り物を片っ端から口に放り込んでいた。

分身の私は隣で私の動きを鏡のように真似し、ルナは十秒おきにため息をついていた。


「つまりだな、」ダリウスが目を細める。「お前、誘拐されて、薬盛られて、地下で売られたのか?」

「まあ、そんな感じ。」カエルが答える。「そんで、うちの聖女様が隣の檻に放り込まれたってわけだ。」

「ちょっと!」セレーネが赤くなって叫ぶ。「助けに行ったのよ!」

「で、失敗した。」カエルが笑う。

「そっちも鎖に繋がれてたじゃない!」

「細かいことだ。」


皆、疲れた顔で笑った。

心からの笑いだった。


アウレリアでさえ微笑んだが、時折こちらを見ては「また問題起こしたわね」という顔をしていた。


「港の半分を吹き飛ばしたんだって?」

「正確には、消した。」私は食べながら言う。

「それ、もっと悪いわ。」

「どういたしまして。」


ルナの微笑み


夜が更けた頃、ルナが私の隣に来た。

銀髪が灯火の下でやわらかく輝いている。


「ご主人様。」

「ん?」

「また皆を救ったのですね。いつものように。」


私はかすかに笑った。


「それが私の仕事だからね。」


ルナの瞳が柔らかく光った。

誰も見ていない時だけ見せる、あの表情。

世界を失いかけて、そしてまた取り戻した者の目。


夜明けには、王国が変わっていた。

新しい勅令が布告され、旗が取り替えられ、

港には商人の紋章ではなく、平和と団結の象徴が掲げられた。


けれど、城の中の平穏はもっと静かなものだった。


カエルとセレーネは療養室で眠り、

アウレリアはいつものように朝から訓練し、

他の仲間たちはそれぞれ――食べ、眠り、笑っていた。


そして私は?


私はバルコニーに座り、朝日を眺めていた。

分身の私はローグとカードをしていて、毎回負けていた。


そこにエルサがやってきた。

王女の顔から、硬い仮面が少しだけ外れていた。


「知ってますか。」彼女は静かに言った。

「あなたはソラリスを永遠に変えたんです。」

「いいことだね。」私は背もたれに体を預けた。「変わるべきだった。」

「もう二度と、あんなことは起こさせません。」その声に決意がこもっていた。

「あなたならできる。」私は微笑んだ。


「あなたは他の人たちと違う。」彼女は言った。「本気を出せば、私たち全員を滅ぼせたはず。」

「今もできるよ。」私は冗談めかして微笑む。「でも今日はやめとく。」


エルサは心から笑った。

罪の重さから解き放たれた者だけができる笑い方だった。


朝日がソラリスの水晶屋根を照らし出す。

私は数日ぶりに深く息を吸い込んだ。


カエルとセレーネは無事。

奴隷たちは自由。

そして――世界は今、静かだった。


ルナが隣に立ち、水平線を見つめながら言った。


「それで、ご主人様。これからは?」

「これから?」私は笑って答えた。

「今は休む。……そして、星の山へ行こう。」


「また騒ぎを起こすんですか?」

「もちろん。」


二人で笑い合った。


そしてその瞬間、昇りゆく太陽の光の中で――

新たな“自由の女神”は、ようやく心の安らぎを得たのだった。

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