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新しい女神  作者: ジュルカ
その ガラ アーク
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第90話 ドレスを着た悪魔:リリアの怒り

「カエルとセレネが移送される」という言葉を聞いた瞬間――

何かが、私の中で“切れた”。


舞踏会の音楽が遠のく。

貴族も、灯りも、ダンスも、すべてが意味を失った。


頭の中には、たったひとつの言葉しかなかった。


「死」。


彼らに。

そして、誰かを鎖で繋ごうとしたすべての者に。


私は王女エルサを見つめた。

その声は、冬の刃のようだった。


「彼らは今どこ?」


彼女はほんの一瞬だけ迷い、そして答えた。


「い、今、港へ……ゲート7に向かっています。そこが……秘密の奴隷船の発着所……」


彼女の言葉が終わる前に――


私の肌から黒いオーラが滲み出た。

それはただの魔力ではない。

原初の怒りが具現化した領域。

憎悪の重さが、空気を切り裂く。


会場に驚きの声が広がる。

グラスが砕け、

何人もの貴族が膝をついた。

尊敬からではない――生存本能だ。


エルサ自身も、目を見開いて後ずさる。


「……連れていって」

私は言った。


――狩りの始まり


エルサは私を導き、金の廊下を駆け抜ける。

兵士も使用人も押しのけ、扉を開くと――

中庭では、すでに黒鎧の兵たちが騒然としていた。


「逃げたぞ! 奴が解き放たれた!!」

「警鐘を鳴らせ! 封鎖しろ!!」


遅い。


私はバルコニーから飛び降りた。

銀のドレスを翻し、踵で大理石を砕いて着地。

黒鎧の兵が駆け寄る――が、全員が遅い。


ドンッ!

拳ひとつで、兵士が地面にめり込む。


背後から一人が襲いかかる――

私は一瞬で消え、隣に現れる。


「お前の動き、鎖みたい。」

囁いて、壁に叩き込んだ。


一人、また一人。

二人、十人、二十人――倒れる。


残ったのは一人の貴族。

恐怖に顔を歪め、足元を濡らしていた。


「も、もう遅いんだ……フォスター様……!

彼らは船に……もう何も――」


私はその顔を掴んだ。


「じゃあ、一緒に船に行こうか。」


――闇の運搬


遠くでは、黒い馬車が港に向かって走っていた。

魔獣に引かれ、中には沈黙する奴隷たち。

目は空っぽ、心は砕かれている。


セレネは隅にうずくまり、目を閉じていた。

隣にはカエル。傷だらけで、反魔力の鎖に縛られたまま。


「もう少しで着くぞ。」

護衛がにやりと笑う。

「また一儲けだな。」


その瞬間――


ドォン!


何かが馬車の前に落ちた。

地面が揺れ、煙が舞い上がる。


「な、何だ?!」


煙の中から歩み出るシルエット――私だ。


銀のドレスは血に染まり、

髪は乱れ、瞳は原初の怒りに燃えていた。


投げ飛ばした貴族は、地面で痙攣している。


「来たぞ!!あいつだ!!」


護衛たちが剣を抜き、魔法を構える。


私は静かに言った。


「カエルとセレネは、どこ?」


御者が震える。


「ひ、ひ、高値の荷は別送されました! ここにはいません!!」


――不正解。


私は消えた。


バキィ!


御者は宙を舞い、海へダイブ。


他の兵が群がる――


悪手。


私は指を鳴らした。


「真なる虚無トゥルー・ヴォイド。」


周囲が黒に染まる。

反現実の球体。

魔法は無効化され、刃は鈍り、思考は崩壊する。


私は歩く。

彼らは逃げる。


だが――私は追わない。


特異点創造シンギュラリティ・クリエイション


地面が概念ごと崩壊する。

重力ではない――存在そのものの引力。


悲鳴は、すぐに消えた。


――解放


私は馬車の前に立ち、一振りで浮かせる。

原初光で錠前を砕いた。


中の獣人、エルフ、カイジン、ゴブリン――

皆、恐怖で身をすくめている。


「もう、自由だよ。」


沈黙。


その中で、ひとりのゴブリンの少女が私を見上げた。


「……あなた、女神さま?」


私はそっと微笑んだ。


「いいえ。もっと悪いわ。あなたたちの報いよ。」


いた。

金の印が刻まれた馬車。

上級の買い手用。


その中に――

意識を失ったセレネとカエルが鎖でつながれていた。


「この二人は歴史に残る高値だ。」

貴族が笑う。


崩落。


天井の一部が砕け、何かが落ちてくる。


私だ。


ゆっくりと降り立ち、背に輝く光翼を広げる。


衛兵が弓を引き、魔導士が詠唱する。


私は、蟻を見るような目で見下ろす。


「私の家族に、手を出したわね。」


手を振るだけで――全てが止まる。


時間でも空間でもない。

“意志”が凍結した。


私は宇宙の意志を呼び出し、こう宣言した。


「この者たちの存在許容量――ゼロ。」


港が消えた。

ただ――消滅した。


――再会


セレネが目を覚ます。

魔力が戻る。


鎖が砕けた。


彼女は驚き、すぐにカエルの拘束も解く。


「カエル、起きて! 私たち……自由よ!」


彼は咳き込みながら目を開く。


「な、何が……?」


そして、私を見た。

周囲には、書き換えられた運命と破壊された現実の光が漂っていた。


「……ああ。納得だ。」


セレネは私を見た。

血と涙と怒り、そして力をその目に宿す私を。


彼女は微笑んだ。


「……来てくれたのね。」


私は二人の肩に手を置き、ひざまずいた。


「当然でしょ。あなたたちは……私の大切な人だもの。」


一方、ガラパーティーでは…


――その頃、舞踏会では


ソラリスに鐘が鳴り響く。


王は窓の外を見て怒鳴った。


「何が起きてるんだ、外で?!」


背後に立つエルサ。

目には涙。


「父上……実は……あなたの恐れていたこと、すべて本当でした。」


その瞬間、王城の頂上から――

巨大な金の光柱が天へと昇る。


そして空に浮かぶのは――


新たなる女神の紋章クレスト


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