第57話 その カダラの戦い
世界が揺れ動いていた。
背後で、ノクティスの落下後、かろうじて安定していたネクサス・コアが激しく唸りを上げていた。彼の体――あるいは残っていたもの――は、崩れ落ちる自身の影に飲み込まれていた。メディアとルナは依然として空のどこかで、不可能な決闘を繰り広げていた。物質と空間は激しく歪み、現実そのものが悲鳴を上げ始めていた。
しかし、真の戦いは外にあった。
地面を通して、その振動を感じ取ることができた。あらゆる振動、あらゆる咆哮、あらゆる断末魔の叫び。
大精霊竜が到来したのだ。
よろめきながら立ち上がった。マナはまだ激しく渦巻いていた。まるで体が再び書き換えられたかのようだった――。
ニャの声が、私の傍らで、速く、必死に、ちらついた。
[スキル習得:深淵支配 → 深淵レクイエムに完成]
[スキル習得:闇喰らい → ワールド喰らいに完成]
[スキル習得:深淵世界 → 虚世界へ完成]
[スキル習得:虚空操作 → 虚空支配に完成]
[全耐性:闇、無、精神、霊的、魔属性攻撃 — 絶対]
私は息を切らしながら瞬きをした。「にゃ…それは…多いわね。」
[控えめな表現に気づいた。]
[女主人は概念耐性を獲得した。]
「…つまり、またシステムを破壊したってことね。」
[肯定]
「…いいね。」
天井が震えた。竜の咆哮が再び世界を波打たせた。雲を裂き、空気そのものを焦がすような音だった。
全感覚を通して、かすかながらもまだ生きている仲間の存在を感じ取ることができた。
ケイルのマナ測定値は安定していた。結界は今のところ維持されているようだ。
ロナンとダリウスは崩壊したギルドホールの近くで戦っていた。
ライラの矢が光の軌跡のように空を駆けた。
そしてセレーネ――
ああ、セレーネ。
彼女は星のように燃えていた。
外、カダラの中央広場の中心で、戦いは混沌と輝きの嵐と化していた。
グレート・スピリット・ドラゴンは街の上空に浮かんでいた。翼は宮殿の壁よりも広く広がり、その息は石を溶かしてガラスの川に変えてしまうほどの熱を放っていた。
冒険者たち――数百人――が散り散りになり、必死に戦い、呪文が夜空を照らしていた。
そしてセレーネは杖を高く掲げ、叫んだ。その声は戦場に響き渡った。
「聖域――降臨せよ!」
彼女から光が爆発した。
街を貫く神聖な円が、数百メートルの幅に、黄金の炎を放ちながら刻まれた。
聖域がカダラを包み込み、闇を暁へと変えた。
仲間たちは傷が瞬時に癒えるのに息を呑んだ。武器はまばゆい光を放った。
悪魔と堕落したモンスターたちは、聖なるエネルギーに身を焦がされ、悲鳴を上げた。
セレーネの全身は神聖な輝きに輝き、瞳は純粋な力で白く染まった。
私は彼女にその呪文を教えた。
そして今、彼女は私よりも優れた術を駆使していた。
ケイルは後衛から命令を叫び、冒険者たちを将軍のように指揮した。「重装せよ!前線よ、盾を構えろ!術者よ、同期せよ!ドラゴンにブレス攻撃をさせん!」
ロナンは狂人のように笑みを浮かべ、刃は稲妻に覆われた。「さあ、これが本当の戦いだ!」
ダリウスは大剣を地面に叩きつけ、土の棘を召喚してドラゴンの爪の一つを釘付けにした。
ライラは崩れ落ちる屋根から飛び降り、矢は流れ星のように空を駆け、一つ一つがドラゴンの鱗に輝く亀裂を刻んだ。
ドラゴンは苦痛と怒りに咆哮した。翼を一度羽ばたかせ、風が建物を砕いた。
セレーネは再び杖を高く掲げ、その声は神の力に満ち溢れていた。
「天の光よ――汝の前にあるすべての悪を清めよ!」
「審判の光線!」
雲間から純然たる光の槍が降り注ぎ、ドラゴンの胸を真正面から貫いた。
爆発は砂漠全体を照らし出した。
一瞬…ドラゴンは怯んだ。
しかし、その目は再び開き、かつてないほど明るく燃えていた。
一方、街の地下深くで、私は拳を握りしめた。
オムニセンスの繋がりを通して、セレーネの痛みが伝わってきた。
あらゆる火傷。マナのあらゆる負担。
彼女は限界を超えていた。
「ニャ、セレーネの状況を確認。」
[クリティカル出力。マナ残量23%。体力負荷:極限]
「ちくしょう。」
ネクサス・コアに目を向けた。汚染は安定しつつあったが、かろうじてだった。
コアが機能不全に陥れば、街はマナ過負荷で爆発するだろう。
今ここを去れば、戻る前に崩壊してしまうかもしれない。
二つの選択肢。どちらも地獄だ。
しかし、聞き覚えのある声がかすかに頭の中に響いた。セレーネの祈りが、彼女が唱えた聖域を通して届けられた。
「リリア…君には私の声が聞こえているはずだ。君は私に、光のために戦うこと、ただ光の中で生きることではないことを教えてくれた。さあ、行け。君にしかできないことを。」
私はかすかに微笑んだ。 「…本当によく学びすぎたわね?」
ニャは瞬きした。
[決断の時間です、女王様。]
私は手を挙げ、空中にシンボルを描いた。
「空間反転。」
私の周りの世界全体が反転した。
地上 ― 戦場
私が足を踏み入れると、空気が裂け、青い炎が私の周囲で踊った。
戦場は一瞬凍りついた。
皆が見上げた。
私は聖域の上に立ち、宙に浮かんでいた。白い髪は魔力で燃え上がり、瞳は青と金色に輝いていた ― 光と深淵が混ざり合ったように。
大精霊竜は巨大な頭が私に向かってきた。
腐敗の中にあっても、私はその精神を感じ取ることができた。
それは邪悪ではなく、縛られていた。
「…つまり、あなたは私の敵ではないのね」と私は呟いた。
それでもドラゴンは反抗するように咆哮し、喉元に凝縮したエネルギーの球体が形成され始めた。
私は手を上げた。
「アビス・レクイエム」
ドラゴンの攻撃は内破した――蝋燭のように消え去った。
「ワールド・デバウラー!」
私が攻撃すると、青黒いオーラが私の腕を渦巻いた。
パンチが命中し、空そのものが砕け散った。
ドラゴンは叫び声を上げ、その力の波が数マイル以内のすべてをなぎ倒した。
しかし、今回は光は消えなかった。
なぜなら、私の背後で、セレーネの声が再び響いたからだ。
「神の増幅――聖域昇華!」
天の光が深淵と溶け合った。
光と闇が踊り、溶け合い、一つになった。
大精霊竜は最後にもう一度叫び声を上げた。その体は砕け散り、輝く破片となって空へと舞い上がり、故郷へと帰る星のように昇っていった。
そして…夜は再び静寂を取り戻した。
セレーネは息を切らし、膝から崩れ落ちた。
ロナンは弱々しく笑った。「私たち…本当に…やったの…」
ケイルは力尽きて、ただ後ろに倒れた。
私はオーラが薄れていくのを感じながら、宙に舞い降り、セレーネの隣にひざまずいた。
彼女はかすかに微笑んだ。「大丈夫だって言ったでしょ?」
私は小さく笑った。「危うく世界を壊しそうになったわね。」
「最高の者から学んだのね」と彼女は囁いた。
しかし、ニャの声が静寂を破った。
[警告:ルナのバイタルレベル低下。メディアのエネルギーフィールド崩壊。空間と物質の構造が不安定だ。
血の気が引いた。
「ルナ…」
皆が私を見上げ、不安げな表情を浮かべていた。
オーレリアは剣を強く握りしめた。「行け。後始末は我々がする。」
私は頷いた。「街を守り抜いてくれ。もし失敗したら、逃げろ。」
そして、私は閃光の中に消えた。
なぜなら、戦争はまだ終わっていなかったからだ。
そして、ルナと物質の玉座との戦いは、限界点に達しようとしていた。




