第53話 すべての真実
砂漠は夜になると様相を一変させた。
果てしなく続く金色の海は月光の下で銀色に輝き、砂丘は星空の下でかすかに輝いていた。
昼間の灼熱は今や氷の荒野と化し、風は鋭く身を切るような冷気で空気を切り裂いていた。
急ごしらえのテントに囲まれた、広々とした砂漠の真ん中で、私たちの焚き火はパチパチと静かに音を立てていた。
ライラとオーレリアは境界線の外で見張りをしていた。砂丘を背景に、月光に照らされた二人のシルエットが浮かび上がっていた。オーレリアの神聖な輝きは鎧の中でかすかに揺らめき、ライラの弓は既に引き絞られ、しっかりと構えられていた。
ロナンはすでに眠りについていた。まるで終末と戦ったばかりの男のように、いびきをかいていた。公平に言えば、それもそう遠くない未来のことだった。
ダリウスは岩に寄りかかり、剣を膝の上に置いたままうとうとしていた。一方、ケイルは薄暗い光の球体の下で、せっせとメモを取っていた。
セレーネはアンナと一緒に小さなテントの近くに座り、小さな悪魔の少女の髪を編んでいた。柔らかな賛美歌を口ずさみながら。
私は?
私はジャケットにくるまり、火のそばに座り、砂丘を吹き抜ける風のささやきに包まれながら炎を見つめていた。
体は寒さに耐性があったにもかかわらず、冷たさは感じられた。それは肌を通り越し、心の静かな部分にまで染み込んでくるような冷たさだった。
私の隣には、ルナがじっと座っていた。銀色の髪は、織り込まれた月光のように揺らめいていた。
彼女は暖かさを必要としていなかったが、それでも火のそばにいて、両手を膝の上できちんと組んでいた。
彼女の表情は穏やかで、瞳には炎と頭上の星々が映っていた。まるで二つの無限が鏡のように重なり合っているようだった。
しばらくの間、私たちはただ沈黙の中で座っていた。
パチパチと音を立てる炎と遠くの風だけが語りかけていた。
それから彼女は静かに言った。「奥様」
彼女の声が、水面にさざ波が立つように静寂を破った。
私は彼女の方を向いた。「ええ?」
「創造の殿堂で学んだことを話すと約束したのよ。」
好奇心から、少し身を乗り出した。「ええ、あなたは何日も姿を消していましたね。それで…彼らは一体あなたに何をしたかったのですか?」
ルナの視線が空へと移った。「彼らは私を欲しがっていたのではありません。あなたと話し合いたかったのです。」
心臓が一拍飛び上がった。「…私?」
「ええ。」
彼女は私を見返した。表情はいつものように読み取れなかったが、その口調にはかすかな何かが漂っていた。畏敬と心配の入り混じった何か。
「原始評議会が200億周期ぶりに集結した。私も創造自身に召集されたのだ。彼らは絶対原始神――創造と破壊――すべての存在の頂点に立つ二人――の間の均衡について語った。」
パチパチという音は大きくなり、燃えさしが渦巻いた。
星々さえも耳を傾けているようだった。
ルナは柔らかくもはっきりとした声で続けた。
「創造はあらゆる形、法則、そして意味の源泉です。破壊は破壊であり、あらゆるものを虚空へと還す解放です。彼らは敵ではなく、一つの真実の片割れです。絶対者の二つの側面です。」
私はゆっくりと頷き、その言葉を理解しようとした。「つまり…万物の神々なのですね?」
「神々を超えた存在です」ルナは静かに言った。「彼らは始まりであり、終わりそのものです。あらゆる神々、あらゆる世界、あらゆる魂は、彼らの合意――永遠の創造と破壊の循環――によって存在しています。私たち原初の存在でさえ、その循環の中に存在しているのです。」
彼女は言葉を止め、金色の目をわずかに細めた。「でも、何かがその均衡を破ったのです。」
「どういう意味ですか?」
「深淵の玉座です」と彼女は言った。 「彼らは真のアビスの存在ではない。彼らは亀裂であり、破壊の本質が堕落した反映であり、サイクルが初めて確立された時に反抗したのだ。彼らは代償なき創造を、均衡なき力を求めた。彼らは戻ることなく破壊し、回復することなく貪り尽くすことを求めた。」
私は眉をひそめた。「つまり…彼らは現実のグリッチのようなものなの?」
ルナは瞬きをし、軽く首を傾げ、そして頷いた。「それは…驚くほど的確な言葉ね。」
「ありがとう。私は混沌に精通している。」
それを聞くと、彼女の唇がわずかに動いた。彼女なりの微笑みだった。
彼女は続けた。「それ以来、彼らはそこに留まり、世界に影響を与え、生命を堕落させてきた。だが今、初めて、彼らは一つの死すべき魂、あなたに関心を寄せたのだ。」
胸が締め付けられるのを感じた。「完璧な複製のせいだ。」
「完璧な複製のせいだ。」とルナは言った。
彼女の視線は揺るぎなかった。「あらゆるものを――概念さえも――コピーし、分析し、完璧にする能力は、単なる天賦の才ではありません、女主人。それは反響なのです。創造と破壊が分裂する以前に存在した力の欠片なのです。」
息が詰まった。「待って…何を言っているのですか?」
「私が言いたいのは」ルーナは初めてかすかに震える声で囁いた。「あなたの存在は彼らよりも古いかもしれない、と。」
その言葉は、予想以上に私の心に突き刺さった。
炎が弾けた。
一瞬、風が静まり返った。
世界さえも息を呑んだようだった。
「私は…絶対原初存在よりも古いのですか?」私は囁いた。
ルーナはゆっくりと頷いた。 「創造の女神にパーフェクト・コピーを使った瞬間、あなたの魂は単に適応したのではなく、記憶したのです。あなたが取った姿、あなたを再構築したエネルギー――それは偶然ではありませんでした。あなたはかつて存在した何かの反映、絶対創造と絶対破壊の架け橋となったのです。」
彼女は視線をそらし、手をわずかに握りしめた。
「あなたはただの共同体ではないのです彼らの力を利用しています、女主人様。あなたは彼らの間の失われた繋がりを修復しているのです。遥か昔に存在から消え去った完璧な均衡を。」
私はただそこに座り、炎を見つめていた。
私の思考は嵐のようだった。渦巻き、終わりがなく、恐ろしい。
「つまり…」私はようやく、少し震える声で言った。「彼らが私を監視しているのは、私が彼らの宇宙的離婚の欠けたピースだからだ。」
ルーナは一度瞬きをした。「それは…言い方の一つですね。」
私はうめき声をあげ、両手で顔を埋めた。「ただ普通の人生が欲しかっただけなのに…」
彼女は再び首を傾げた。「普通の人生は宇宙的な結末とは共存できない。」
「ええ、気付きました。」
私はため息をつき、再び彼女を見上げた。「それで、これからどうなるの?」
ルーナは遠くを見つめ、その目に月が映っていた。
「原初存在は干渉しない…今のところは。」だが、深淵の玉座は間もなく動き出す。彼らはあなたを自分のものにし、核としようと企むだろう。
「なぜ私が?」
「なぜなら、彼らが繋がりを貪り食えば、彼らは完全になるからだ。深淵は創造と破壊さえも超越するだろう。」
私は青ざめた。「つまり、私が死んだら現実が消去されるということか。」
「ええ」と彼女は優しく言った。
「…いいわね。」
私たちは再び長い間、沈黙の中で座っていた。
炎は弱まった。
他の者たちは安らかに眠りについた。
そして砂漠は果てしない静寂へと広がった。
ついに、ルーナが私の方を向いた。「あなたは怖いのね。」
「そうでしょう?」と私は静かに言った。「誰もが私を利用したり、戦ったり、崇拝したりしたがる。私はただ…疲れている。」
ルーナの視線が和らいだ。「あなたは力以上の存在です、女王様。あなたは、かつて記されていなかった選択なのです。」
その言葉に胸が痛んだ。
彼女は立っていた。外套が冷たい風になびいていた。「もう休んで。私が見張りをするわ。」
「ありがとう、ルナ」私はかすかに微笑みながら言った。「それから…いてくれてありがとう。」
彼女は私を見下ろした。普段は無表情な顔に、かすかな温もりが浮かんでいた。
「いつも、女主人。」
そして横たわり、満天の星空を見上げていると、ある言葉が頭の中でこだました。
創造と破壊の橋。
存在すべきではない均衡。
私。
リリア・フォスター。
ただ普通の人生を望んだ少女――そして、現実そのものが定義できない唯一のものになってしまった。




