第5話 私は放火犯ではありません!
トロルは咆哮を上げ、体がさらに熱くなり、彗星のように炎をたなびかせながら頭を下げ突進してきた。
ニャのちび猫顔が目の前に現れた。
[警告:スキル検知 - ファイアチャージ]
[致命傷確率:100%]
「何だって?!今さらそんなこと言うの!?」
棍棒を振り上げ、燃え盛る炉のような目で迫り来るトロルに、地面が揺れた。
私は歯を食いしばり、腕に炎が渦巻いた。「私が見ている間は許さない!」
足を踏み鳴らし、足元で炎が爆発した。
「食らえ、クソ野郎!太陽の星だ!」
私はそれを投げつけた。
小さな燃え盛る太陽が私の手から飛び出し、戦場を轟音とともに駆け巡った。
トロルは咆哮を上げ、燃え盛る棍棒を振り回し、まるで悪魔のような野球選手のようにそれを叩き落とそうとした。
大間違いだった。
ドカーン!
世界が爆発した。
炎が森を飲み込んだ。木々は瞬時に蒸発した。衝撃波は何マイルも地面をなぎ倒した。鳥も、虫も、あらゆる不運な生き物も、消え去った。
塵が晴れると、静寂が訪れた。
灰は雪のように降り積もった。木々は?炭になった。地面は?黒焦げのガラスになった。森は?…もはや存在していなかった。
私はそこに立ち尽くし、息を切らしながら、自分の光る手を見つめていた。
「…しまった。しまった。しまった!しまった!!」
私は目を大きく見開いて、その場でくるりと回転した。「おい、あの攻撃、どんだけ威力があったんだよ!」
ニャは小さな猫耳をぴくぴくさせながら、私のそばで静かに浮かんでいた。
[説明:火の支配とは、火という概念そのものを絶対的に支配することです。あなたは火を操るのではなく、あなた自身が火なのです。無限のマナと融合することで、その破壊力は惑星の限界をはるかに超える規模になります。]
私は凍りつき、口がぽかんと開いた。
「…待って。つまり、生態系を核爆弾で破壊したってことか…」
[肯定]
「一撃で?!」
[正解]
私はくすぶる空に向かって叫んだ。
「ちくしょう、生態系ジェノサイドを犯してしまった!」
ニャは無邪気に首を傾げた。
[訂正:初心者ゾーンの生態系ジェノサイド]
「…それってマシじゃない!」
私は凍りついた。
ガリガリ…ガリガリ…
足音。いくつも。近づいてくる。
「しまった!人間だ!?」頭がショートした。
辺りを見回した。森――いや、かつての森――は焼けた土と灰で覆われているだけだった。文字通り、隠れる場所などどこにもなかった。
「しまった、しまった、しまった。もし見られたら、私が仕組んだと思うわ!」
私は燃え盛る、火を噴く自分の手を見下ろした。
「…ああ、そうか、もしかしたら私が仕組んだのかもしれないけど、それでも!」
私はくるりと回転し、荒野を駆け抜け、命がけで逃げた。トーガが風になびき、長い銀髪が後ろになびいた。
「だめだ、だめだ、放火罪でここに残る気はない!」
[冒険者の視点]
5人の冒険者小隊が、残った樹木の間から慎重に這い出てきた。
戦士、魔術師、僧侶、盗賊、そしてレンジャー。典型的なパーティ構成だ。
「なんてこった…」戦士は剣を下ろしながら呟いた。
魔術師は顎を緩め、眼鏡を直した。「ここは…ここは初心者の森だったのに…」
僧侶は両手を握りしめた。「天上の女神よ…消え去った。全部。」
盗賊は焦げた瓦礫を蹴った。「一体誰がこんな森を核爆弾で燃やしたんだ?これは火事じゃない。消滅だ。」
レンジャーはしゃがみ込み、地面に触れた。地面はまだ温かく、ほとんど溶けているようだった。
「…これは自然現象じゃない。魔法だ。」
彼らは皆、背筋に寒気が走りながら顔を見合わせた。
戦士は剣をぎゅっと握りしめた。「災厄級の怪物にしか、こんなことはできない…」
魔術師は息を呑んだ。「ならば…神よ、我らを助け給え。」
[我に返れ]
私は1マイルほど離れた、半分燃えた丸太の後ろにしゃがみ込んだ。息を切らし、額から汗が滴り落ちた。
「…よし。危機は回避。目撃者はいない。」
ニャが瞬きしながら目の前に現れた。
[不正解。現在、グラウンド・ゼロを調査している冒険者は5人いる。]
私は顎が外れそうになった。「何だって?!どうしてもっと早く警告してくれなかったんだ!?」
[こうすればもっと面白いと思ったのに。]
私は顔面を激しく叩き、気を失いそうになった。
「なんてこった、この世界に来た初日に災厄の怪物の烙印を押されてしまうなんて。」