第3話 私の統計
ため息
木々の間から空を見上げた。太陽は暖かく、葉はそよ風にざわめき、鳥たちはまるで普通の日のようにさえずり続けていた。
「…これが私の新しい世界か?」
私は自分の姿を見下ろした。女神は少なくともちゃんとした服をくれた。簡素な白いローブか、神聖な絹か何かだ。
「ありがとう…でも、どうして私をこんなゴミみたいに押し込んだの、このクソ女神様!?」私は天に向かって叫んだ。
天は何も答えなかった。
「ちくしょう…」私は呟き、光る髪から小枝を払い除けた。
その時、浮遊スクリーンが再びちらついた。
[ユーザー入力待ち…このシステムに名前を付けますか?]
私は目を細めた。「あら。そうか、話すのね。」
[了解]
「じゃあ…名前をつけましょうか?」
[はい]
「…そうか。じゃあ、君の名前は…ニャ。」
[指定承認:ニャ]
文字が消え、チビ猫の顔の形をした小さく光るアイコンに変わった。
私は瞬きした。「…ちょっと待て、なんでアニメの猫娘マスコットみたいな顔してるんだ?」
[「ニャ」って言っただろ。この形は97.3%テーマに合っている。]
「…文字通りの意味じゃない!」
[遅すぎた。]
私は顔面を手で覆った。
「…わかった。よし、ニャ。ここは一体どこにいるのか、俺に何が起こったのか、そしてこの新しい存在は一体何をするのか、教えてくれ。」
猫のアイコンが私に向かって瞬きした。
[リクエスト処理中…]
[現在地: 西大陸、初心者の森、ワールドID: アルテリス-349]
[現在の状態: 神格転生。肉体 = 女神クラス。魂 = 超越者。]
[新たな存在機能: 絶対コピー]
私は首を傾げた。「絶対コピー?」
[はい。スキル、能力、アイテム、概念など、何でもコピーできます。女神とは異なり、コピーしたものは自動的に最適化されるため、コピーしたものは常に最強の状態になります。]
私は固まった。「…待って…では、剣をコピーすると…」
[最強の剣が得られます。]
「…スキルをコピーすると…」
[そのスキルの最強バージョンが得られます。]
「…岩をコピーすると…?」
[最強の岩が得られます。]
「…最強の岩って一体何だ!?」
[エラー。クエリは形而上学的なナンセンスに分類されます。
私は額を叩いた。「まるで態度に問題のあるAlexaみたいだわ。」
ちび猫の顔が無邪気に首を傾げた。
[ニャはAlexaより優れている。]
私はうめいた。「…ああ、よかった。生意気な猫AIの相棒を持つアニメの女神に生まれ変わったんだ。完璧。まさに完璧。」
それで、私はここにいた。
この忌々しい森の中を歩いていた。
木はどれも同じように見え、茂みはゴブリンが隠れているかのようにざわめき、一歩ごとに自分がもう…普通ではないことを思い知らされた。
「うぅ…」私はうめき声をあげ、顔に手を滑らせた。「まだこの体に慣れない…」
下をちらりと見た。水たまりに映る自分の姿がかすかに揺らめいていた。長い銀髪、金色の瞳、完璧な肌。神々が彫り上げた体――いや、いや、女神を模した体だ。
「…しまった。私って…本当に…セクシーだわ。」
着ていたローブが体に張り付いていて、神聖な布がまるでオリンポスから降りてきたかのようにかすかに輝いていた。
なのに…
「ああ、ここは蒸し暑い。」
私はローブを引っ張り上げ、枝に投げ捨てた。その下には、まるで歴史書から飛び出してきたような、なめらかな白いアンダードレスのようなものが身を包んでいた。
「素晴らしい。まるでトーガのパーティーから飛び出してきたみたいだ。」
ストラップを引っ張って調整した。新しい曲線が動き、そして…
「いや。それは考えていない。次に移ろう。」
私は激しく首を振った。集中した。
「ねえ、ニャ!」
小さなチビ猫の顔が、尻尾をひらひらさせながら視界に飛び込んできた。
[はい、マスター?]
「そんな風に呼ばないでくれよ…ううん、いいけど。ステータスを見せてくれないか?自分が何者なのか知りたいんだ。ステータス、魔法、全部。見せてくれ。」
アイコンが点滅した。
[了解。ステータスウィンドウを表示]
目の前に青い光が広がるスクリーン。文字がデジタルの太陽光のように流れていた。
[ステータスウィンドウ]
名前: ——— (未割り当て)
種族: 完璧な女神の亜種
クラス: 創造の女神 (コピー型)
レベル: 1 (?)
称号:
軌跡の救世主 (???)、
完璧なコピー、
神格化アップグレード、
ランダムスポーン犠牲者
HP: ∞
MP: ∞
スタミナ: ∞
筋力: ???
敏捷性: ???
耐久力: ???
知性: ???
幸運: エラー (値が測定限界を超えています)
スキル:
完璧なコピー (EX∞): あらゆるものをコピーし、自動的に完璧な状態にする。
神格化: 不死、老化も腐敗もしない。
現実への存在: あなたの存在は周囲の法則を書き換える。
初心者用ランダムスポーン: 森にゴミのように落とされる。
装備:
神聖衣 (木に投げられる)
トーガドレス(古代ギリシャのコア美学)。
私は瞬きした。
「…一体どういうステータスなんだ?」
[正確だ。]
「…HPとMPが無限だって??」
[はい。]
「…筋力不明?敏捷性不明?一体どういうこと?!」
[つまり、ステータスがシステムを破壊したってことか。]
私は凍りついた。「…システムを破壊したって??」
猫顔がウインクした。
[おめでとう。]
私は顔面を手で覆った。「馬鹿げてる。ただ普通の人生が欲しかっただけなのに!」
[注意:あなたは『制限なし』の人生を望んだ。]
私は空に向かって叫んだ。
「どうして細かい文字で書かれた条件はいつも私の願いを台無しにするの?!」