第27話 ルナ・ストライクス
戦場は静まり返った。
覇王が聳え立ち、深紅の炎が燃え盛る。骸骨のようなその体は壊死の怒りに燃えていた。杖は死の脈動を帯び、新たな棺を放とうとしていた。
だが、ルナ…
ルナはそこに浮かんでいた。小さく人形のように。いつものように、その表情は読み取れなかった。しかし、空気は一変した。
彼女の周りの世界が歪んだ。地面が割れ、空が歪んだ。
彼女の金色の瞳は、崩れ落ちる太陽のように燃えていた。
「あなたは…」彼女は言った。その柔らかな単調な声は、何かより深いものに震えていた。「彼女の魂を奪おうとしたのよ。」
彼女の声は大きくはなかった。しかし、響き渡った。広間を、街を、そして近くに存在しようとしたあらゆる領域へと。
覇王は唸り声を上げた。「彼女は私のもの、刈り取るのだ!」
ルナは一度瞬きをした。ゆっくりと。
「…間違いだった。」
バキッ。
空気がガラスのように砕け散った。戦場には、黒い空間の線が広がった。
覇王はよろめき、真紅の炎が揺らめき、全領域が彼に襲いかかった。
棺桶の力にまだ弱っている胸を抱え、私は息を呑んだ。「…ルナ…?」
彼女は手を挙げ、指はまるで存在の概念そのものを閉ざすかのように曲がった。
「時間封鎖。」
覇王は凍りついた。
彼の将軍たちは凍りついた。
アンデッド軍全体が凍りついた。剣は振り下ろされ、頭蓋骨は静寂の中で鳴り響いた。
時間そのものが止まった。
私と、私の仲間、そしてルナだけが動いていた。
セレーネは杖を落とし、目を見開いた。「…神々にかけて…」
ケイルの顎は地面に落ちた。 「し、彼女は時間そのものを閉じ込めてしまった…」
ロナンは囁いた。「彼女を背が低いなんて言わないように気をつけろ」
ダリウスは唾を飲み込み、顔に汗が流れ落ちた。「…あれは女神じゃない。超越した何かだ」
ライラはただ呟いた。「恐ろしい」
オーバーロードは身をよじり、抵抗の亀裂が彼の体中に砕け散った。彼の深紅の炎は、その封印から逃れようと、より一層輝きを増した。
ルーナは首を傾げた。「…執拗さを検知。容認できない」
彼女は両腕を広げた。
「次元崩壊」
空気が爆発した。将軍たちは音もなく塵と化し、消え去った。アンデッドの軍勢は風に舞う砂のように崩れ去った。
オーバーロード・キングは叫び声を上げた。彼の周囲を取り囲む深紅の炎が裂け、引き裂かれ、その圧倒的な力に彼の体は砕け散った。
私はよろめきながら前に出た。声は震えた。 「ルナ!やめろ!消さないでくれ――まだ――」
彼女は私を振り返り、怒りが一瞬静まった。
「…お望み通りに、女主人様」
彼女は指を鳴らした。
崩壊は止まった。覇王はまだ燃えていたが、壊れていた――膝をつき、炎は消え、死霊術のオーラは消えゆく蝋燭のように揺らめいていた。
ルナは再び舞い降り、宇宙の怒りを纏った守護騎士のように私の前に立った。
「…女主人様。彼は今、あなたのものです」
覇王は憎悪に満たされた声で咆哮した。「お、貴様は…神などではない…貴様は…忌まわしき者だ!」
私は目から涙を拭った。手はまだ震えていたが、顔には笑みが浮かんだ。
「…ああ。もしかしたら、そうかもしれない」
拳を握りしめ、マナが湧き上がった。
「だが、俺はお前の忌まわしい存在だ、骨小僧。」




