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新しい女神  作者: ジュルカ
天体アーク
201/217

第199話 ヌルを破る

エイルが空間の裂け目をくぐり抜けた瞬間、背後の宇宙は消え去った。


光はなかった。


音もなかった。


方向もなかった。


ヌルゼロゾーンは闇ではなかった。


減算だった。


破壊神自身が創造した次元――肉体を閉じ込めるためではなく、定義を消し去るために。存在が自らを忘れ去る場所。


エイルが足を踏み入れた瞬間、扉はまるで終わらない思考のように、彼女の背後で閉ざされた。


四方八方から静寂が押し寄せた。


原初の精霊にとってさえ、息苦しかった。


ヌルゼロは攻撃しなかった。


それは無効化した。


ここで概念が解きほぐされた。


時間は流れなかった。

空間は拡張しなかった。

エネルギーは存在しなかった。


それでも――


エイルは立ち尽くし、純粋な虚無の空間へとまっすぐに浮かんでいった。


彼女の白い髪は、まるで水中にいるかのように優しく揺れていたが、移動するための媒体はなかった。彼女の瞳は、古の霊的な炎でかすかに輝いていた。


彼女の核心で、何かが点火した。


無限の霊的発生装置。


リリアとの繋がり。


決して消えることのない、無限の霊的泉。


ヌルゼロは彼女を消そうとした。


彼女の輪郭が揺らめいた。


彼女の名前がかすんだ。


彼女の概念がぼやけた――


彼女はまるで消え失せてしまうかのようだった。


しかしその時――


彼女はより明るく輝いた。


霊的なエネルギーが同心円状に湧き上がり、小さな人工現実のように彼女の周囲に存在の「領域」を刻み込んだ。


ヌルゼロはさらに強く押し寄せた。


それは彼女の記憶を攻撃し始めた。


最初の宇宙戦争。


精霊の誕生。


彼女の消滅。


リリアが彼女を召喚した。


ヌルゼロは一つずつ、その糸を断ち切ろうとした。


エイルは目を閉じた。


「私は単なる記憶ではない」と彼女は静かに囁いた。


「私は起源だ」


精神フィールドが拡大した。


ヌル・ゼロの消去が歪んだ。


ひび割れた。


創造以来初めて――


牢獄は抵抗した。


遥か前方――


彼女はそれらを感じた。


三つの存在。


ルーシー。


リサ。


永遠。


全てが宙吊りの崩壊に閉じ込められていた。


彼女は前に踏み出した。


一歩一歩が彼女を空間へと移動させることはなかった――


それは彼女の存在を許容するために空間を再定義した。


ヌル・ゼロは歪みを生み出し始めた。


不在でできた顔のないシルエット。


ヴォイド・セラフの構造物。


反存在の歩哨。


それらは力ずくで攻撃しなかった。


それらは触れ合った。


そして触れ合った場所で――


概念は消えた。


一つがエイルの肩に触れた。


彼女の袖が消えた。


別の袖が彼女の顔に伸びた。


彼女の輪郭が不安定になった。


彼女の存在率が低下した。


88%…


73%…


無限生成器が激しく炎を上げた。


霊的エネルギーが星が誕生するように噴き出した。


シルエットは消え去り、無へと消えた。


エイルはゆっくりと息を吐いた。


「この場所は存在を否定する。」


彼女は手を挙げた。


「ならば、新たな存在を創造しよう。」


原初の霊的権威 ― 基礎召喚。


波紋が広がった。


ヌル・ゼロは震えた。


痛みではない。


しかし、混乱の中だった。


抵抗は経験したことがなかった。


はるか前方――


概念的静止の立方体の中にいるルーシーは、突然のエネルギーを感じ、それがどんどん近づいてきているのを感じた。


彼女は目を開けた。


彼女の眼鏡がわずかに割れた。


フィービーは分析の途中で、彼女の隣で凍りついた。


リサは混沌とした宙吊り球の中で逆さまに浮かんでいた。


そして永遠――


彼女は腕を組んで直立し、フラクタルプリズムの中に閉じ込められていた。そのプリズムは、彼女の宇宙的権威そのものを抑圧しようとしていた。


エイアが先にルーシーにたどり着いた。


立方体は物理的なものではなかった。


それは実存的否定だった。


「対象はパラドックス複製に指定されました」と、牢獄は目に見えない法則を通して呟いた。


「無効です。」


エイアは手のひらを立方体に当てた。


「原初の精神です。」


「認識:前世の権威です。」


立方体はためらった。


そして、締め付けられた。


ルーシーの消滅速度が加速し始めた。


エイアの霊的オーラが爆発した。


無限発生器が轟音を立てた。


彼女は無限の霊的出力を立方体に注ぎ込んだ。


亀裂が生じた。


ルーシーの目がピクッと動いた。


立方体が砕け散った。


ルーシーは片膝をつき、すぐに体勢を立て直した。


フィービーは彼女の傍らに完全に姿を現し、銀色の髪が研ぎ澄まされたコードのように揺れた。


「評価」フィービーは即座に言った。


「外部からの原始的干渉により、ヌル・ゼロ収容の完全性が損なわれた。」


ルーシーはエイアを見上げた。


「素晴らしい。」


「外に出る必要がある。」エイアは冷静に答えた。


ルーシーは立ち上がった。


「では、急いで処理する。」


リサの球体は激しく脈動した。


凍り付いていても、混沌が放射されていた。


エイルは慎重に近づいた。


「対象はアンバウンド・カオス派生物と機密指定」と牢獄は詠唱した。


「高リスク」


リサの目がぱっと開いた。


彼女はニヤリと笑った。


「やっと面白そうな人が来たわね」


エイルが触れる前に球体は割れた。


リサは自身の静止状態を内側から破壊した。


「まあ、退屈だったわね。随分時間がかかったわね、エイル」


「あなたは自由になれなかったのね」


「私はバイブレーションしていたのよ」


ルーシーはため息をついた。


最後に残ったのは永遠だった。


彼女のプリズムは違っていた。


抑圧ではない。


封じ込めだ。


それは多元宇宙の周波数で振動していた。


まるで何か破滅的なものを抑制しているかのように。


エイルは言葉を止めた。


ルーシーの表情が鋭くなった。


「もしそれが間違って破壊されたら、ヌル・ゼロは崩壊するわ」


リサはニヤリと笑った。


「それは面白いわね。」


エイルは前に出た。


彼女は両手をプリズムに置いた。


ヌル・ゼロが反撃した。


次元全体が圧縮し始めた。


不在が崩壊する星のように内側へと押し寄せた。


彼女の存在が断片化し始めた――


51%…


34%…


19%…


無限の霊的発生装置が最大限に作動した。


無限の霊的出力。


プリズムが割れた。


永遠は目を開けた。


ほんの一瞬――


ヌル・ゼロのすべてが凍りついた。


宇宙論の体現者は一度瞬きをした。


そしてかすかに微笑んだ。


「ああ。」


プリズムは静かな爆発音とともに外側へと爆発した。


ヌル・ゼロは叫んだ。


音のない破裂がその構造を引き裂いた。


ルーシーはすぐに手を差し出した。


「フィービー。」


「次元出口ベクトルを発見。」


リサは指を鳴らした。


「カオスワールド。」


エイルは最後にもう一度、その力を行使した。


霊的な橋が裂けた。


外では――


天界が震えた。


ヌル・ゼロの中では――


牢獄の次元が崩れ始めた。


「出発のチャンス:3秒」とフィービーが言った。


ルーシーはエイルの腕を掴んだ。


リサは笑った。


エタニティは最後に、さりげなく前に出た。


二人は飛び降りた。


ブリッジは彼らの後ろで封鎖され――


そしてヌル・ゼロは崩壊した。


破壊されたわけではない。


だが、永久に亀裂が入った。


天界に戻る――


大広間の下層に裂け目が開いた。


四人の人影が現れた。


ルーシーが先に着地し、落ち着いていた。


リサは逆さまに浮かび、まだ微笑んでいた。


エタニティは伸びをした。


エイルは少しよろめいた――


彼女の霊的な輝きは弱まったが、安定していた。


はるか下の方で――


神々はそれを感じた。


彼らの「完璧な牢獄」は破られたのだ。


ルーシーは眼鏡を直した。


「リリアが玉座の間に近づいている。」


リサは指の関節を鳴らした。


「やっと。退屈になってきた。」


エターニティの瞳がかすかに光った。


「私の故郷に触れた。」


彼女のオーラがほんの少しだけ広がり――


そして天空が暗くなった。


エイルは神宮を見上げた。


「これで終わりにしよう。」

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