第197話 ヌルゼロゾーンへ
奥深くへ進むにつれて、オリンポスは静まり返った。
安らかな静寂ではない。
略奪的な静寂。
まるで見張るような静寂。
大理石の広間が果てしなく続き、柱には長きにわたり崇拝に酔いしれた神々の勝利が刻まれていた。空気は凝縮された神々しさで揺らめいていた。息を吸うたびに、古の香と傲慢さが味わえた。
そして、そのすべての下で――
私はそれを感じた。
冷たい。
間違っている。
まるで存在そのものが、隣の扉の向こうにあるものを認めたくないかのようだった。
ヌル・ゼロ・ゾーン。
アテナの声がかすかに脳裏に響いた。
「あの場所は人間のためにあるのではない…神々のためにあるのでもない。」
ニャのインターフェースが視界を横切った。
[ターゲット確認。前方にテレポート・ネクサス。大天使二人配置。]脅威レベル:壊滅的
私はゆっくりと息を吐いた。
もちろん、容易なことではないだろう。
目の前の扉は黒曜石のように白く、幾重にも神聖な暗号の印が刻まれていた。まるで生きているかのように、かすかに脈動していた。
私はノックしなかった。
私は蹴りを入れた。
扉が内側に爆発し、衝撃が廊下を轟かせた。
中は――
結晶化した光で彫られた円形の部屋。その中心には、幾何学的に不可能な、浮遊する螺旋状の構造物がゆっくりと回転していた。ヌル・ゼロのゲートウェイ。
そして、その前に立ちはだかるのは――
二人の大天使。
普通の天使ではない。
司令官ではない。
彼らは戦争で生まれた絶対者だった。
それぞれ12枚の翼を持つ。
崩壊した星々から作られた鎧。
光輪は浮かんでいない――処刑の冠のように頭蓋骨に埋め込まれている。
彼らの存在だけで空間が圧縮された。
一人が前に出た。
「それで」彼は静かに、調和のとれた威厳に満ちた声で言った。「異常現象が到来したのだ。」
二人目は剣を振り上げた。長く、湾曲し、消去のルーンで輝いていた。
「通用しない。」
私は首を鳴らした。
「ええ?リストに追加して。」
しかし、突撃する前に…
私は言葉を止めた。
あることに気づいた。
エイル。
彼女はまだ私と繋がっていた。
まだ大広間で下層圏の生存者たちと。
そして、さらに重要なのは…
私は今、無限の精神生成器を手に入れた。
つまり…
彼女に無限の精神の連続性を与えることができるのだ。
ヌル・ゼロは存在を消去した。
しかし、もし彼女の存在が決して枯渇しなかったら?
もし彼女が自立した精神的特異点になったら?
私は手を挙げた。
「原初の魂の絆。」
部屋は白い輝きとともに爆発した。
大天使たちはよろめいた。
足元に霊的な円が広がり、古の象形文字が再生した宇宙のように外側へと花開いた。
原初の光の柱がどこからともなく降り注いだ。
そして煙が晴れると――
彼女はそこに立っていた。
エイル。
白い髪は古代の雪のように流れ、瞳は穏やか。言葉よりも古い存在。
今も健在だ。
今もなお、主権者である。
彼女は私を見て、軽く頭を下げた。
「電話したのね。」
私は状況にもかかわらず、にやりと笑った。
「よかった。まだオンラインね。」
大天使たちは即座に反応した――空中に神槍が出現した。
エイルは彼らに目を向けなかった。
私は一歩近づいた。
「よく聞け」と私は言った。 「無限の霊的生成器をあなたに繋げた。あなたの存在は今や自立した。無限の循環。無限の再生。ヌルゼロでさえ、尽きることのないものを消すことはできない。」
エイルは流れを感じながら、しばし目を閉じた。
そして頷いた。
「了解しました。」
「ヌルゼロゾーンに入り、ルーシー、リサ、そしてエターニティを回収してほしい。」
彼女の名前を聞いて、表情が少し和らいだ。
「あなたは?」
「あとは私がやります。玉座の間の近くにオーレリアの存在を感じます。」
大天使たちが攻撃を仕掛けた。
エイルが先に動いた。
派手ではない。
大げさではない。
彼女が前に出た――
そして、意識そのものが誕生するかのような霊的圧力が噴き上がった。
最も近くにいた大天使が消去ブレードを振り下ろした。
エイルは指を一本立てた。
ブレードは無害な光の粒子へと溶けていった。
第二の大天使は滅びの槍の滝を放った。
エイルは息を吐いた。
槍は空中で曲がり、
向きを変えた。
そして、代わりに創造主を突き刺した。
十二の翼が砕け散った。
第一の大天使は咆哮し、その領域を拡大した。
「審判の場」
絶対的な断罪の球体が我々を取り囲み、重力は無限に増大した。
ほとんど感じなかった。
エイルは前に歩み寄った。
一歩ごとに場が崩れた。
「あなたには資格がありません」と彼女は静かに言った。
彼女は彼の胸に触れた。
爆発はなかった。
光線もなかった。
ただ――
静寂。
大天使は解き放たれた。
殺されなかった。
不活性な神性として書き換えられた。
二番目の者は門に向かって逃げようとした。
エイルが目の前に現れた。
掌底の一撃。
彼は脆いガラスのように崩れ落ちた。
彼女は私の方を向いた。
ヌルゼロの門は彼女の存在に反応し、回転速度を上げた。
それは彼女を拒絶しようとした。
彼女の霊的特徴を不安定にしようとした。
しかし、無限霊力発生装置が作動した。
無限の霊的エネルギーが彼女の核の中で循環していた。
ヌルゼロは消去を試みた。
それは失敗した。
彼女の輪郭が揺らめき――
そして安定した。
彼女は門に向かって歩み寄った。
彼女の周囲の空間は、まるで現実そのものが彼女の侵入を拒絶するかのように、激しく歪んだ。
私は拳を握りしめた。
「気をつけろ。」
エイルは門のところで立ち止まった。
「あなたのために」と彼女は静かに言った。「私は戻る。」
そして――
彼女はヌル・ゼロへと足を踏み入れた。
門が彼女を呑み込んだ。
部屋は静まり返った。
息苦しい寒さは残っていたが、何かが変化していた。
希望。
私は肩を回し、上の広間へと向かった。
ゼウス。
オーレリア。
玉座の間。
ニャが私の隣でちらちらと光った。
[大天使の力が無力化された。ヌル・ゼロの突破は安定化した。]
「彼女は大丈夫だと思うか?」と私は尋ねた。
ニャの表情は穏やかだった。
「彼女は絶滅よりも古い。」
もっともだ。
私は背中からジョワユーズを掴んだ。
剣は唸りを上げた。今や完全に黒く塗られた柄と銀の縁取りになり、神聖なルーン文字が呼吸の暗号のようにその全長に沿って動いていた。
アテナの声がかすかに響いた。
「彼は理性を持たない。」
「話をしに来たんじゃない。」
遠くで激しい戦闘が繰り広げられ、広間が震えた。衝撃波がオリンポスに波紋を巻き起こした。神々が動き出していた。
そして頂上には――
存在があった。
重々しい。
傲慢な。
怒りに満ちた。
ゼウス。
私は歩き始めた。
もう盲目的に突き進むのはやめよう。
一歩一歩を慎重に。
呼吸を落ち着かせながら。
神聖な建築物は私のオーラの下でかすかにひび割れた。
天使たちが廊下から散り散りになった。
何人かは私の行く手を阻もうとした。
彼らは数秒で倒れた。
派手ではない。
芝居がかったわけでもない。
ただ、効率的だった。
今、私はオーレリアの存在を感じた。
近くに。
凍りついた。
神聖な圧迫感に包まれた何かに閉じ込められた。
私はジョワユーズを強く抱きしめた。
「待って」と私は囁いた。
前方では、巨大な扉から黄金の光が溢れ出ていた。
背後で雷鳴が轟いた。
ゼウスが待っていた。
嵐が迫り始めた。
そして存在を超えたどこかで――
エイルは完全なる虚無へと歩みを進めた。
私のもう一つの自分を取り戻すために。
戦争はすでにオリンポスを破壊していた。
今――
それは個人的な問題だった。




