第195話 その死の女王
大広間の三階は、もはや建築物とは思えなかった。
まるで現実そのものに刻まれた墓地のようだった。
柱は真っ二つに裂け、床は裂けて裂け、深淵の霧へと続く裂け目へと続いていた。神聖なルーン文字が壁を不規則に揺らめき、まるで天界でさえ、その中で何か不自然なことが起こっていることを理解しているかのようだった。
タナトスは破壊の中心に立ち、鎌を肩にさりげなく乗せていた。
彼の存在は静かだった。
静かすぎるほどに。
彼の周囲の空気は、避けられない必然性で満ちていた。「全ては死ぬ」と囁くような重圧だった。
私が先に突進した。
鋼鉄と鎌がぶつかり合い、悲鳴が部屋を裂いた。火花は火花ではなく、消え去ったタイムラインの破片が灰のように散り散りになっていた。
タナトスは死体が投げかける影のように動いた。滑らか。効率的。冷酷。
彼の鎌が私のガードをかすめ、危うく肩をかすめそうになった。私は体をひねり、刃をくぐり抜け、回転蹴りで反撃した。その蹴りは床を割った。
彼はほとんど動かなかった。
「お前は速いな」と彼は首を傾げながら呟いた。「だが、理解力が足りないな」
彼は振り下ろした。
刃は空間を切り裂かなかった。
寿命を削った。
私はかろうじて間に合うように受け流したが、死の圧力が刃に叩きつけられ、ジョワユーズは抗議の叫び声を上げた。衝撃で私は廊下を吹き飛ばされ、背中の下で大理石が砕け散った。
私は空中で宙返りし、着地するとすぐに再び突進した。
私たちの姿はぼやけた。
天井を越え、柱を越え、空気を越え、ぶつかり合った。
彼は黒い球体――デスキャノン――を次々と召喚した。それぞれが破壊の轟音を響かせていた。私はそれらの間を縫うように進み、二つを切り裂き、もう一つをスターイーターで吸収し、柱の向こうから彼を肩で押し込んだ。
彼はうめき声さえ上げなかった。
ただ微笑んだ。
「よく抵抗したな」塵の中から蘇りながら、彼は言った。「だが、抵抗は終わる。」
私は歯を食いしばった。
もう十分だ。
私はジョワユーズを掲げた。
「スタースラッシュ。」
剣が点火した。
無数の星がその刃先に凝縮し、光が幾重にも重なり、剣は宇宙の地平線へと変貌した。
私は消えた。
彼の前に現れた。
そして切り裂いた。
一撃は彼を肩から腰まで真っ二つに切り裂いた。
部屋は彼と共に裂けた。垂直の光の裂け目がホールを貫き、神聖な碑文を存在から引き裂いた。
彼の体が分離した。
一瞬――
静寂。
私は息を吐いた。
そして両半分は黒い霧と化し、私の背後で再び合体した。
「悪くないな」タナトスは軽く言った。「もう少しで倒せるところだったぞ」
彼は振り下ろした。
私は防いだ――
遅すぎた。
その一撃の力は物理的なものではなく、致命的なものだった。
その一撃は、私を後方に叩き落とし、戦闘中に彼が切り開いた穴へと突き落とした。それは、骸骨の手と囁く魂たちの虚空へと螺旋状に下降する深淵だった。
彼は微笑んだ。
「真のデススラッシュ。」
大鎌は純粋な終焉を輝かせた。
刃は振り下ろされ――
そして世界は消え去った。
私は落ちた。
空間を通り抜けたのではない。
闇を通り抜けたのではない。
主張を通り抜けたのではない。
私の頭上で穴が閉じた。
下には色褪せた魂の海が広がっていた。彼らの姿は消え去り、存在しない地平線へと漂っていった。
タナトスの声がこだました。
「そこはデスクレーム。誰も自らの終焉からは逃れられない。神も、異常も、不条理も。」
海が上へと伸びてきた。
手が私の足を掴んだ。
腕。
喉。
引っ張られる。
引きずられる。
主張する。
一瞬――
穏やかな気持ちだった。
まるで降伏したかのようだった。
まるで終焉のようだった。
そして、私の内側で何かが笑った。
死?
私を主張する?
私は目を閉じた。
そして、終焉の答えを待った。
海は凍りついた。
手は震えた。
水平線が割れた。
私は目を開けた。
剣を握りしめ、終焉を切り裂く。
現実が私の頭上で裂けた。
死の主張そのものが裂けた。
私は外に出た。
大広間に戻った。
タナトスはすでに立ち去ろうとしていた。
その時、空気が悲鳴を上げた。
彼の背後で、現実が燃える紙のように引き裂かれた。
私は踏み込んだ。
腹が立った。
ブーツが床に叩きつけられ、轟音が響いた。
「うわあ」肩の埃を払いながら、私は怒鳴った。「本当にそんな芸をしなければならなかったの?」
タナトスは凍りついた。
彼の目は大きく見開かれた。
ありえない。
「あなたは…」
私は首を回した。
「それと、言い忘れていたことがあったわ。」
私のオーラが変化した。
爆発的ではなかった。
派手ではなかった。
静かだった。
重々しい。
決定的だった。
「死?」私は冷静に言った。「死は私の奴隷よ。」
3階全体が震えた。
「死だけじゃない。終末の概念全体が。」
タナトスは鎌を強く握りしめた。
「馬鹿げている。」
「そうなの?」私は首を傾げた。 「ニュースターデス。ジェネシスファーストエンド。アンデッドエンパイア。ヘックスオーサー。ニュースターソウル。オムニデスウィル。」
それぞれのスキル名が、まるで判決のようにホールに響き渡った。
「聞き覚えがあるか?」
彼の表情が変わった。
「ハッタリだ。」
私は一歩近づいた。
「それとも、君の父親に聞いた方がいいかな?終末の概念そのもの?退屈な時に叩きのめしたあのやつ?」
沈黙。
彼のオーラが揺らめいた。
ほんの少しだけ。
それで十分だった。
「嘘をついている」と彼は言った――だが、今となっては確信はなかった。
私は手を挙げた。
「新たなる星の死」
頭上の天井が黒く染まった。
星々が燃え上がった。
天上の星々ではない。
葬送の星々。
それぞれが、かつて存在した何かの終焉を告げていた。
それらは静かな審判の輪のように頭上で回転した。
タナトスは絶望に突き進み、デススラッシュは十重に重なった。
私は動かなかった。
刃は突き刺さり――
そして溶けていった。
彼は見つめていた。
「どうして――」
「なぜなら」私は静かに言った。「あなたは存在の内なる死を支配しているから」
私は前に進んだ。
「私はその向こうにある終末を支配している」
彼は咆哮し、すべてを解き放った。
彼の鎌は膨張し、巨大となり、影が領域に広がった。彼は現実世界に潜むあらゆる死を吸い込み、それらを一つの最後の処刑へと圧縮した。
「絶対終焉!」
刃が振り下ろされた。
時の流れが遅くなった。
神々の建築物さえもたじろいだ。
私はジョワユーズを掲げた。
「創世第一終焉。」
剣は白くなった。
光ではない。
エネルギーではない。
空白。
一撃が命中した。
そして一瞬――
全てが止まった。
そしてタナトスの刃は砕けた。
砕けたのではない。
砕けたのだ。
傷のように、亀裂が走った。
彼はよろめいた。
私は動いた。
以前よりも速く。
概念よりも速く。
私は彼の襟首を掴み、拳を彼の胸に突き刺した。
究極の力ではなく。
権威をもって。
「全能の死の意志。」
デス・クレームとの繋がりが切れた。
虚空が抗議の声を上げた。
彼のオーラが薄れた。
「できない…」彼はかすれた声で言った。
「できる。」
私は彼を地面に叩きつけた。
衝撃は天界中のあらゆる墓地に衝撃波を走らせた。一瞬、大広間に凍りついた魂さえも揺らめいた。
タナトスは黒い霧を吐き出した。
「お前は…死神ではない…」
「違う。」
私は身をかがめた。
「私はずっとひどい状態よ。」
私はジョワユーズを彼の喉に押し付けた。
「呪術師よ。」
彼の周囲の空気にルーン文字が浮かび上がった。
彼の死は書き換えられた。
消されたのではなく、
書き換えられたのだ。
「もう魂を奪うことはできない」と私は言った。
彼は恐怖に目を見開いた。
「そんなことは――」
「私が奪ったのよ。」
彼の手に握られていた大鎌は、無害な灰へと崩れ去った。
彼のオーラは崩壊した。
殺されたのではなく、
無力化されたのだ。
死神タナトスは、権限を剥奪され、地面に横たわっていた。
呼吸している。
生きている。
無力だ。
彼は私を見上げた。
「…あなたは何者だ?」
私は立ち上がった。
「あなたが挑発するべきではなかったあの少女よ。」
三階の空気がゆっくりと安定してきた。
葬送の星々は消え去った。
死の重みが薄れていった。
私はスカーフを直した。
「我慢していたんだ」と、何気なく付け加えた。
タナトスはたじろいだ。
「今も我慢しているよ。」
私は大広間の奥へと続く階段の方を向いた。
テレポーターが近いような気がする。心配しないで、すぐ行くから。




