第190話 天の虐殺
一方――人間が理解できる限りの空高く――審判の大広間は溢れかえっていた。
あらゆる生命体。
あらゆる種族。
あらゆる世界。
惑星、銀河、そして宇宙全体に相当する存在が、一瞬にして強制的に転移させられ、故郷から引き裂かれ、思考の途中で凍りついた。都市は光の彫刻のように宙に浮いていた。海は水晶の枠の中に閉じ込められていた。子供たちは笑い声を上げていた。兵士たちは息を切らしていた。王たちは命令を下していた。
それら全てが、一つのあり得ない空間へと積み重なり、層を成し、圧縮されていた。
天使たちは黄金の鎧を輝かせながら、堅固な隊列を組んで頭上を飛んでいた――しかし、彼らの翼は震えていた。
彼らは義務を果たしていた。
そして天界の夜明け以来初めて、彼らは恐怖を感じていた。
大天使たちでさえそれを感じていた。
ほんの少し前、何かがあらゆるゾーンを通過していた。支配でも命令でもない圧力――だが、結果を約束する圧力。それは神の怒りではなかった。
それは個人的なものだった。
「これは…これは間違いだった」一人の大天使が槍を強く握りしめながら囁いた。「我々は…すべきではなかった」
「静かにしろ」もう一人の大天使が声を震わせながら言い放った。「命令は命令だ」
しかし、疑念は信仰よりも速く広がった。
誰もがそれを感じていたからだ。
あの脈動。
あの到来。
大広間の遥か上空、崩壊する星座と神の法則そのものから作られた玉座に座り、ゼウスは作戦の展開を見守っていた。
凝縮された光のモニターが彼の前に浮かび、それぞれが異なる殲滅戦域を映し出していた。
下層ゾーン:70%が消滅。
文明が崩壊。
世界アンカーが切断。
次元の根源が燃え尽きた。
「よし」ゼウスは冷たく言った。 「どんな犠牲を払ってでも、あの領域を滅ぼしたい。」
天使が硬直したように頭を下げた。「あ、はい、陛下。」
別の画面には――
アレスとザカリー。
凍り付いている。
天界の抑制プリズムに閉じ込められ、動きの途中で体が固定され、表情は怒りと疲労で歪んでいた。意識を失っているにもかかわらず、彼らの存在は封じ込めに負担をかけていた。
ゼウスは嘲笑した。「哀れなことだ。遊びのために同族を裏切るとは。」
別のモニター――
独房。
中にはリリアの友人たちがいた。
ダリウス、ロナン、セレーネ、ケイル、ライラ、セラフィナ、フェンリル、アニー、ナリ、エリーゼ。
彼らと共に――原始人。
ルナ、フレイ、ローグ。
全員が意識を失い、抽象的な存在さえも抑制するために設計された幾重もの封印に鎖で繋がれていた。
そして別のフィード――
ヌル・ゼロ。
絶対的な否定の虚空。
リサ。ルーシー。永遠。
破壊の偶発的設計によって築かれた牢獄に囚われている。彼らでさえ、まだそこから抜け出すことはできない。
ゼウスは顔をしかめた。
「うっとうしいな」と彼は呟いた。「だが、どうにかなるだろう」
一つのスクリーンが他のスクリーンよりも長く表示された。
オーレリア。
不可侵の審判の立方体の中に吊るされ、神の計算の層が彼女を取り囲むように果てしなく折り重なっていた。彼女は意識があった。目覚めていた。
そして激怒していた。
ゼウスは後ろにもたれかかり、指で玉座を叩いた。「リリアは捕まえられなかったが…彼女の恋人なら大丈夫だ」
彼は隣の天使の方を向いた。「殲滅の進捗はどうだ?」
「70%です、陛下」天使は答えた。「予定通りの完了は…」
大広間の扉が爆発した。
クロノスが突如として現れた。
時の巨人は、かつての冷静で遠く離れた観察者とは似ても似つかなかった。その目は燃えるように輝き、そのオーラは因果律そのものを歪めていた。
「ゼウス。」
広間は静まり返った。
ゼウスは立ち上がらなかった。「父上。」
「何をしたのだ?」クロノスは問いただした。
「何が必要だったのか?」ゼウスは冷たく答えた。「浄化だ。」
クロノスは両手を握りしめた。「これを浄化と呼ぶのか?これはジェノサイドだ。下層圏を――無数の歴史、現実、次元を――消し去ろうとしているのだ。一人の少女のために、我々を崇拝していた文明を丸ごと消し去ろうとしているのだ。」
「あの『少女』は」ゼウスは立ち上がり、力を失いながら続けた。「異常存在だ。神の法則を超越し、形而上学的構造を超越し、因果律そのものを超越している。彼女は、かつて考えられたいかなるパラドックスよりも危険だ。」
クロノスは声を落とした。 「それで存在を滅ぼすのか?」
「彼女に支配させるわけにはいかない」ゼウスは唸り声を上げた。
クロノスは息子を見つめた。
長く。
強く。
そして、彼の肩は落ちた。
「…お前は我々皆を破滅させたのだ。」
そして彼は消えた。
ゼウスは嘲笑した。「相変わらず劇的だ。」
その時――
ドカーン。
天界全体が震えた。
警報が鳴り響いた。
インターフェースが赤く光った。
パニックに陥った光の奔流の中に、鎧がひび割れ、翼が引き裂かれた大天使が現れた。
「あ、陛下!」彼は叫んだ。
ゼウスは鋭く振り返った。「今度は何だ?」
「全ての執行部隊が――」大天使は黄金色の血を吐きながら息を呑んだ。「――いなくなった。精鋭部隊も、大天使大隊も、審判の熾天使も、全て――」
「説明しろ」ゼウスは問いただした。
「彼らは死んだ」大天使は囁いた。「虐殺され、消滅し、引き裂かれた。」
ゼウスの目が燃えるように輝いた。「誰に?」
大天使は純粋な恐怖に顔を上げた。
「怪物に…」
彼の足元の床が爆発し、大天使は言葉を発する途中で蒸発し、映像が途切れた。
ゼウスはモニターの方へと振り返った。
そして凍りついた。
そこに彼女がいた。
リリア・フォスター。
たった一人で。
軍勢もいない。
援軍もいない。
ためらいもなかった。
彼女は天国を、まるで既に自分のものとなった戦場であるかのように歩いた。
天使たちが波のように彼女に襲いかかった。聖なる光、審判の槍、神の大砲。
彼女は歩いた。
彼女の一振りは、軍団全体を消し去った。存在は、記録されることなく、あまりにもきれいに書き換えられた。
彼女はジョワユーズを抜いた。
一振り。
一人の大天使が同時に現実のあらゆる層を分断した。
もう一人が逃げようとした。
彼女は指さした。
「逃走」という概念は彼には通用しなくなった。
彼女が通り過ぎると、天空の艦隊全体が崩壊し、神聖なエンジンは彼女の存在だけで押しつぶされた。
彼女は叫んでいなかった。
彼女は激怒していなかった。
彼女は集中していた。
冷酷だった。
効率的だった。
そして、怒り狂っていた。
ゼウスはその時、それを感じた。
恐怖。
真の、息詰まるような恐怖。
「彼女は一人だ…」彼は囁いた。
そして彼女は勝っていた。
いや、彼女は圧倒的だった。
彼は、彼女が審判の門――原初種を止めるために設計されたアーティファクト――を、速度を落とすことなく突き破るのを見ていた。彼女が崩壊する次元を飛び石のように踏み分けていくのを見ていた。
天使が神の権威を行使しようとするたびに――
彼女はそれを覆した。
神々が彼女の未来を覗こうとするたびに――
彼らは何も見なかった。
闇も、
混沌も、
ただ不在だけだった。
「彼女は味方を使っていない」ゼウスは呟き、パニックが忍び寄ってきた。「彼女は儀式を使っていない――」
別のモニターが点滅した。
天界錨が一つ――破壊された。
もう一つ――崩壊した。
天界そのものが不安定になり始めた。
「彼女は軍勢を攻撃しているのではない」ゼウスは悟った。
「彼女はインフラを攻撃しているのだ。」
天空は悲鳴を上げた。
そして遥か下、大広間では、凍りついた群衆は気づかなかった――
彼らを愛する女神が一人でやって来たこと。
彼女が天界そのものを横切ったこと。
そして神々が――
天界創造以来初めて――
追われる者となったこと。
一方――
天界は虐殺場と化した。
数え切れないほどの軍勢が、あらゆる門、あらゆる階層、あらゆる神聖なる天空から押し寄せた。援軍が叫び声をあげるたびに、数百万は数十億へと変貌した――完璧な隊形を組んだ天使の軍団、神聖な方程式を詠唱するセラフィム、概念そのものを消し去るために鍛えられた武器を振るう処刑人。
そして、それらすべてが彼女を迎え撃った。
リリア・フォスターは動きを止めなかった。
彼女は神性の嵐の中を歩み続けた。背後では、ジョワユーズがまるで死を約束するかのようにハミングしていた。一歩ごとに天界の大地が裂け、一息ごとに天界を支える法則が歪んでいった。
「フォーメーション・アルファ!」大天使が咆哮した。
翼が広がり、盾が結ばれた。何千もの天使が一斉に詠唱し、神聖なグリフが彼らの頭上に巨大な印章を形作った。
呪文は終わった。
陣形は消え去った。
リリアはぼやけた。
砕けたのではなく、まるで動きそのものが追いつかなくなったかのように、ぼやけていた。
頭部は完璧な線を描いて胴体から分離した。翼は羽ばたく途中で引き裂かれ、鎧は紙のように裂けた。天使の中には自分が死んでいることにすら気づかない者もいた。上半身はまだ詠唱を続けながら、下半身は黄金の灰と崩れ落ちていった。
さらに続いた。
彼らはいつも続いた。
光の矢が空を満たした。幾十億、幾十億。それぞれが宇宙を根底から消し去ることができるほどだった。天空はその密度に暗黒化し、神の消滅によって作られた偽りの夜となった。
リリアは口を開いた。
星喰い。
矢は曲がった。
湾曲した。
怯えた獲物のように内側に崩れ落ちた。
神聖な光はすべて飲み込まれ、彼女の存在へと圧縮され、完全に呑み込まれ、「攻撃」という概念はもはや通用しなくなった。空は瞬く間に晴れ渡った。
彼女は息を吐いた。
衝撃波が三つの航空大隊を消し去った。
彼女は飛び上がった。
航空支援は気づくのが遅すぎた。
リリアは生きたギロチンのように彼らを切り裂き、手足を知覚よりも速く動かした。彼女は熾天使の一人を真っ二つに引き裂き、その体を別の分隊の弾丸として使い、そして再び姿を消した。
「牢獄の門、今だ!」高位の裁判官が叫んだ。
彼女の周囲に黄金の構造物が広がった――魂、精神、そしてアイデンティティを縛り付けるために設計された、互いに絡み合う次元の錠前。それは、反逆するプライモーディアルのための牢獄だった。
門が閉まった。
半秒間。
リリアは筋肉を鍛えた。
牢獄はガラスのように砕け散り、法の破片が虚空へと散り散りになった。彼女は叫び声をあげる裁判官を蹴り飛ばし、彼を天界六層へと吹き飛ばし、そして彼の体は崩壊した。
背後から至近距離から大砲が放たれた。純粋な審判のエネルギーが凝縮された光線は、外なる神々をも滅ぼすほどだった。
彼女は振り返らなかった。
彼女は片手を上げた。
それを受け止めた。
光線は彼女の掌に収まり、無効化され、無へと砕け散った。
彼女はテレポートした。
砲撃天使の背後に現れた。
彼の核を貫いた。
刃を横に引いた。
天使は綺麗に真っ二つに裂け、魂と概念は同時に切り離された。
援軍が到着した。
彼女はため息をついた。
「もうたくさんだ。」
リリアは我慢の限界に達した。
エレメンタル・トゥルー・アルファ。
第一波は、荒々しい元素の力によって消し去られた――時間を燃やす炎、因果律を凍らせる氷、次元を切り裂く稲妻。軍団全体が抽象的な残滓へと還元され、その元素は存在そのものから剥ぎ取られた。
更なる天使たちが殺到した。
究極の物質創造。
彼女は手を伸ばした。
現実は折り畳まれた。
彼らの体は圧縮され、分子は粉砕され、原子結合は書き換えられ、数百万の天使が物質の点へと崩壊し、そして内破し、何も残さなかった。
生存者たちは叫び声を上げた。
全宇宙の絹織機。
糸が瞬時に紡がれ、戦場を織り交ぜ、天使、大天使、神獣を等しく縛り付けた。リリアは引っ張った。
彼らは叫びながら、様々な全宇宙へと投げ出され――無限の現実に散らばり、二度と戻る道を見つけることはなかった。
それでも彼らはやって来た。
常に、さらに。
リリアは目を閉じた。
新しい星の魂。
範囲内の天使は皆、凍りついた。
時間ではなく、意志が。
彼らの魂は存在の途中で停止した。肉体は固定され、思考は停止した。
リリアは天使たちに背を向けた。
彼女の声は穏やかだった。
「自害しろ。」
その命令は魂の空間に響き渡った。
一人ずつ、天使たちが動き出した。
刃が内側に向けられた。
翼が切り裂かれた。
槍が心臓を突き刺した。
神々は糸を切られた操り人形のように自らを殺し、悲鳴が天を満たし、血――本物の血――が空から降り注いだ。
玉座から見守っていた神々は青ざめた。
神託の部屋では、神々の予言者たちが倒れた。
スクリーンが割れた。
予言は燃え尽きた。
勝利を伴うすべての未来は消え去った。
「彼女はいかなる道も辿っていない」と、一人の神が囁いた。「皆を消し去っているのだ」
もう一人の神が膝をついた。「彼女は我々を襲いに来る」
ゼウスは投影を見つめた。拳を強く握りしめ、その手からは雷鳴が流れ出た。
「彼女は一つの存在だ」と彼は唸り声を上げた。「一つだ」
しかし――
天界全体が既に消滅していた。
審判の塔は崩壊した。
神のレイラインは断ち切られた。
天界そのものが、その基盤が揺らぎ、悲鳴を上げた。
リリアは別の軍勢を切り裂いた。ブーツは血に染まり、表情は読み取れなかった。彼女は咆哮もせず、笑うこともなかった。
彼女は働きかけた。
これはもはや怒りではなかった。
これは処刑だった。
ある神が介入しようとした――より劣った、必死の神。
彼は杖を掲げ、至高の命令を発動した。
リリアが彼の前に現れた。
彼の顔を掴んだ。
彼を地面に叩きつけ、周囲の世界が内側に折り畳まれた。
彼女は身をかがめた。
「あなたは私の民を奪った。」
彼女は殴りつけた。
神は神の法の破片へと砕け散った。
もう一人の神は逃げようとした。
彼女は指をさした。
コレクションを書き直す。
彼の存在は過去、現在、未来のあらゆる記録から消去された。誰も彼の存在を思い出すことはなかった。
天使たちは突撃を止めた。
ある者は武器を落とした。
ある者は祈ろうとした。
そんなことは問題ではなかった。
リリアは前進した。
一歩一歩。
そして一歩ごとに、天国は少しずつ消えていった。
遠く離れた、閉ざされた部屋の中で、囚われた者たちはそれを感じていた。
オーレリアはキューブに力を入れ、あの馴染みのある存在が現実を揺さぶるのを感じ、涙を流した。
「リリア…」彼女は囁いた。
リサはヌルゼロの壁に拳を叩きつけ、狂ったように笑った。「ああ、彼女はキレた。」
ルーシーは目を閉じた。「…神々は死んだ。」
永遠は微笑んだ。
はるか彼方、創造と破壊は震えを感じながらも何も言わなかった。
なぜなら、彼らは知っていたからだ。
これはもはや戦争ではなかった。
これは結果だった。
大広間に戻ると、ゼウスはついに玉座から立ち上がった。
永遠の統治において初めて、彼の手は震えた。
「彼女は侵略などしていない」と彼は呟いた。
「彼女は我々を滅ぼそうとしているのだ。」
そして天界の奥深く――
血の川、砕け散る光輪、そして崩れ落ちる天空を――
リリア・フォスターは一人、歩みを進めた。
神々へと。
審判へと。
終わりへと。




