第180話 混沌の世界
計画は紙の上では単純だった。
モンスターを隔離する。
巻き添えを排除する。
決着を強いる。
誰も予想していなかったこと――
リサがリサであること。
リサが動いた瞬間、オーレリアはそれを感じた。
突き刺さる感覚。
ねじれる感覚。
いつも誰かが存在を後悔しそうな時に感じる、あの馴染み深い、頭痛を伴う感覚。
「だめ――」オーレリアは言いかけた。
遅すぎた。
リサはもういなかった。
彼女は戦場へは走らなかった。
彼女は視界に飛び込む速度が速すぎて、すべてが遅延し、距離の概念を完全に無視し、アレスとザカリーの衝突の最中に現れた。
世界を引き裂くほどの衝突の衝撃が、彼女の真正面に直撃した。
そして止まった。
リサはあくびをした。
「わあ」彼女は袖についた空想上の埃を払いながら言った。「二人ともうるさいわね」
アレスは咆哮し、神聖なる怒りが噴き出した。
ザカリーの悪魔のオーラが迸り、本能が危険を叫んだ。
二人は同時に反応した。
神の槍。
真紅の殲滅波。
リサはニヤリと笑みを浮かべた。
「よかった」と彼女は言った。「協力してくれたのね。」
彼女は指を鳴らした。
「ワンダ。起きてる?」
声が返ってきた。滑らかで、穏やかで、声量を上げることさえない、どこか危険な声だった。
「いつもよ。随分時間がかかったわね。」
リサの背後で、カーテンが開くように現実が開かれた。
一人の女性が出てきた。銀色の髪が液体の静電気のように流れ、紫色に輝く瞳には、幾重にも重なったシンボルが絶え間なく回転していた。彼女の存在は…違和感があった。圧倒的というよりは、押しつぶされるような感じではなかった。
ただ、絶対的な存在だった。
彼女は手袋を直し、ため息をついた。
「正直言って、リサ」ワンダは言った。「もう炎上している時に召喚されるのがどれだけ面倒か、分かってる?」
リサは笑った。「好きなんだね」
「我慢してるわ」
ワンダの視線はアレスとザカリーに向けられた。
「…ああ。それで遅れたわけね」
アレスは武器を掲げ、神の威厳を燃やした。「よくも…」
リサは指を一本立てた。
「カオスワールドだ」
宇宙が叫んだ。
比喩ではない。
本当に叫んだ。
空間は砕け散った――壊れたわけでも、引き裂かれたわけでもなく――再配置された。
戦場は消え去った。
軍勢も。
魔界も。
崩れ落ちる地獄の層も。
すべてが消え去った。
カオスワールドの中へ
アレスとザカリーは地面に着地した――そう呼べるかどうかは別として。
彼らの頭上の空は、ただの空ではなかった。
崩壊する銀河、ネオンの嵐、反転した星々、そして今日重力が存在するべきかどうかについて互いに議論する概念が織りなす、移り変わるフラクタル空間だった。
足元の地面は、まるで生き物のようにかすかに脈動していた。
アレスはそれを即座に感じ取った。
「…ここは領域ではない」と彼はゆっくりと言った。
ザカリーは唸り声を上げた。「ここは領域だ。」
リサは両手を頭の後ろに回し、ブーツは地面に全く触れることなく、彼らの前にゆったりと降りてきた。
「チンチン」と彼女は言った。「両方とも正解よ。」
ワンダが彼女の隣に現れ、壊れた方程式でできた宙に浮く椅子を召喚し、あぐらをかいて座った。
「ようこそ」ワンダは丁寧に言った。「カオスワールドへ。リサ・フォスターだけが統治する、完全に自律的な多元宇宙構造よ。」
彼女は薄く微笑んだ。
「管理者の明確な承認がない限り、すべての法律、階層、そして権限は停止されます。」
アレスの神聖なる存在感が高まった。
何も起こらなかった。
彼は眉をひそめた。
「…私の権威は…」
「…ここでは通用しません」とリサは言い終えた。「ええ。それがポイントです。」
ザカリーは次に自身の力を試した。真紅の虚空が外へと溢れ出し、空間を飲み込もうとした。
エネルギーは無害な粒子へと溶解した。
リサは首を傾げた。「あら。私の雰囲気を壊したのね。」
彼女は再び怒鳴った。
彼らの周囲の空間がロックされた。
ワンダは冷静に言った。
「収容パラメータを初期化しています。」
混沌の世界プロトコル:
– 外在神性:抑制
– 悪魔の主権:サンドボックス化
– 概念のオーバーライド:拒否
– 物語のエスカレーション:抑制
アレスはついに不安げな表情を見せた。
「これは無理だ」と彼は唸った。「神を否定する世界を創造できる者はいない。」
リサは笑った。
「あら、可愛い子ちゃん」と彼女は言った。「私が作ったんじゃないのよ。」
彼女はさらに身を乗り出した。
「私が創造という概念を盗んで、カフェインを与えて、許可を求めるのをやめるように言ったのよ。」
ザカリーは目を細めた。「あなたはフォスター家出身ね。」
リサは満面の笑みを浮かべた。「金の星!」
ワンダは一度手を叩いた。「さあ、家事だ。」
彼女は立ち上がった。椅子が彼女の足元で溶けていく。
「カオスワールドにいる間、君たちは以下の条件に従う。
リサの許可がない限り、退出はできない。
カオスワールドを破壊することはできない。カオスワールドは因果律よりも速く再生するからだ。
互いに戦うことはできる。」
彼女は微笑んだ。
「だが、ここでの君の行動はすべて、カオスワールドの成長を助長する。」
アレスは硬直した。
ザカリーは甲高い声で笑った。「つまり、争いを糧とする世界に我々を閉じ込めるということか?」
リサは肩をすくめた。「退屈だわ。」
彼女は宙に浮かび上がり、後ろに倒れた。「さあ、戦え。神聖なる確執を解決しろ。」
二体の怪物はためらった。
戦争が始まって以来初めて――
彼らは挑発されるのではなく、観察されているのだ。
アレスは顔をしかめた。「これで自分が優位に立てると思っているのか?」
リサは顎を軽く叩いた。「いいえ。」
彼女はニヤリと笑った。
「それが私を安心させるの。」
ザカリーは首を鳴らし、悪魔の炎が肩を舐めた。「わかった。もしこの世界が混沌を望むなら――」
アレスは槍を掲げ、神聖な炎が燃え上がった。
二人は激突した。
衝突はカオスワールド内部の作り出された宇宙を粉々に砕いた。
星々は一瞬にして生まれ、そして消え去った。
時間は断片化し、そして不正確に再び繋がった。
リサはまるで映画を楽しむかのように見守っていた。
ワンダは冷静に監視した。
「構造健全性98%」ワンダは報告した。「成長率上昇中。」
リサはニヤリと笑った。「これは良い投資だって言ったでしょ。」
外では
戦場は…静かだった。
静かすぎる。
オーレリアは衝突があった場所の空を見つめた。
「…彼女がやったのよ」彼女は囁いた。
セラフィナは口笛を吹いた。「彼女は本当に神級の災害を二つも誘拐したのよ。」
ルーシーは姿勢を調整し、残った歪みを分析しながら目を細めた。
「…封じ込められた」ルーシーは言った。「不完全。混沌。効果的。」
セラフィナは首を傾げ、明るく微笑んだ。「リサのポケットワールド、可愛いわね。」
皆が彼女を見つめた。
「…可愛い?」フェンリルは弱々しく繰り返した。
セラフィナは頷いた。「大きくなると悲鳴を上げるのよ。」
オーレリアはこめかみをこすった。
「もちろんよ。」
しかし、圧力は消え去っていた。
領域は安定した。
軍勢の揺れは止まった。
戦争が始まって以来初めて、魔界は息を吹き返した。
オーレリアは背筋を伸ばした。
「…では、移動しましょう。」と彼女は言った。
ルーシーは頷いた。「神々が気を取られている間に。」
セラフィナの笑みが鋭くなった。「さあ、終わらせましょう。」
カオスワールドに戻ると、
アレスとザカリーはまだ戦っていた。
より激しく。
より怒りに燃えて。
必死になって。
リサはまたあくびをした。
「うわあ」と彼女は呟いた。「本当に何も学ばないんだね。」
ワンダは横目でちらりと見た。「終わらせるの?」
リサは首を横に振った。「いや。」
彼女は微笑んだ。
「お互いに疲れさせればいい。」
彼女の目は輝いた。
「終わる頃には…出て行けと懇願するだろう。」
カオスワールドは脈動した。
より強く、より大きく、より飢えていた。
そしてどこか遠くで…
ついに戦争は転換期を迎えた。




