第179話 全員が団結
魔界は滅亡の瀬戸際だった。
魔界は崩壊しつつあった。地獄の層は燃える紙のように折り重なり、領土はまるで見えざる手によって消し去られたかのように瞬時に消滅していく。マグマの河は虚空へと反転し、空は悲鳴を上げる裂け目へと裂け、魔界の都市は心臓の鼓動と時を同じくして消え去っていく。
その中心で――
アレスとザカリーは依然として戦い続けていた。
激突するたびに、地獄の根幹はより深く切り裂かれていく。あらゆる打撃はもはや単なる攻撃ではなく、領域の安定を壊滅的に書き換える。魔王たちでさえ、今やその思いを察していた。このままでは、何も残らない。魔界も、領土も、退却する場所も。
ただ忘却だけが残る。
ルーシーは砕け散った尖塔の上に立っていた。ベクターの神聖なる精髄は、彼女の背後で、消えゆく静電気のように蒸発し続けていた。彼女は自分が殺した神にさえ振り返らず、遠くの大惨事に視線を釘付けにしていた。
「…許容範囲を超えているわ」と彼女は冷淡に言った。
スカーレットはすでに避難を指揮し、傷ついた悪魔たちを緊急ポータルへと引きずり込み、背後で地域全体が崩壊していくのを見ていた。悪魔の王たちは険しい表情で集まり、同じ真実を感じ取っていた。
この戦いは続けられない。
オーレリアは不安定に空中に浮かんでいた。黄金の光が不安定な星のように彼女の体の周りを揺らめいていた。彼女の新たな原初の権威は不規則に脈動していた――生々しく、圧倒的で、見慣れない。
彼女の呼吸は浅くなった。
「…できないの」と彼女は静かに認めた。「私は進化したばかり。私の体も、私の魂も、まだ安定していないのよ。」
ルーシーは反論しなかった。
一度だけ。
「休息が必要よ」とルーシーは言った。「今介入すれば、自滅するわ。」
オーレリアは拳を握りしめたまま、遠くで地獄の層が崩壊していくのを見守った。
そして――
「ハハハハ。」
混沌を切り裂く笑い声が上がった。
柔らかな。
嘲るような。
見覚えのある。
皆が振り返った。
上から人影が降りてきた。足元の魔界が崩壊しているなどと言わんばかりに、外套がゆったりとなびいていた。フードの下から赤い瞳が輝き、白い髪が流れ落ち、牙をひらめかせ、状況に似つかわしくないほど面白がっているように笑っていた。
オーレリアは目を見開いた。
「…セラフィナ?」
彼女の背後で――
空が暗くなった。
雲ではない。
怪物だ。
空中の裂け目から軍勢が押し寄せてきた――あらゆる形と規模の獣、砕け散った星々を覆い隠す巨大な影。竜は裂けた空間を渦巻き、深淵の巨獣はまるで水のように空を泳ぎ、神にも悪魔にも屈したことのない怪物は、規律ある静寂の中で進軍していた。
モンスターの領域。
統一。
オーレリアは顎が落ちた。
「…どうやって」彼女は囁いた。
セラフィナは彼女の隣に軽やかに着地し、ブーツはまるで何でもないかのように砕けた地面に触れた。フェンリルも後を追ったが、彼は…様子が違っていた。古代のルーン文字が刻まれた黒い鎧が彼の体を包み込み、魔王でさえも緊張させるような存在感を漂わせていた。
セラフィナは首を傾げ、目を細めてオーレリアを見つめた。
「…何かおかしい気がするわ」と彼女は言った。そしてニヤリと笑った。「いいえ、強くなったのよ。進化したんでしょう?」
オーレリアが言う前にルーシーが答えた。
「彼女は原初の地位に昇格したのよ」
セラフィナは凍りついた。
「…冗談でしょ」
オーレリアは疲れた笑みを浮かべた。「そうだったらよかったのに」
セラフィナは初めて言葉を失った。
そして、彼女は吹き出した。
「そうでしょう」と彼女は言った。「戦争が終わる前に騎士が原初の地位に昇格するのは当然よ」
オーレリアは首を横に振り、セラフィナの背後を力なく指さした。「私のことは忘れて。一体どうやってこんなことができたの?」
彼女はモンスターの軍勢を指差した。
「モンスター地域は誰とも同盟を結ばない。彼ら自身でさえ意見が一致していない。」
セラフィナの笑みが広がった。
「ああ、それ?」彼女は何気なく言った。「私が交渉したのよ。」
オーレリアはじっと見つめた。
「…まさか…」
フェンリルはため息をついた。
「彼女は彼らを脅した。」
オーレリアは顔を手で覆った。
「すべての支配者を…」フェンリルはこめかみをこすりながら続けた。「古代の獣。頂点に立つ怪物。世界を喰らう者。彼女は彼ら全員に挑んだ。」
セラフィナは肩をすくめた。「脅され、挑発され、屈辱を受けた。細かいことまで。」
オーレリアはうめいた。「そんなことは。」
「ああ、絶対に。」
回想が始まると、フェンリルの目が暗くなった。
モンスター地域は混沌の化身だった。
王国は存在しなかった。
評議会は存在しない。
力のみによって支配される領土のみ。
セラフィナは、その中心へとまっすぐに歩みを進めた――たった一人で。
彼女に最初に対峙した支配者は、大陸をも消し去る息を持つ獣、グレイブモーだった。グレイブモーは咆哮し、支配を宣言した。
セラフィナは微笑んだ。
彼女は変身もしなかった。
パワーアップもしなかった。
彼女はただそれを見つめた。
そして言った。「ひざまずけ。」
グレイブモーが拒むと、彼女は一撃でその顎を砕いた。
二番目の支配者、千眼の君主は、彼女の精神を圧倒しようとした。
彼女は笑い、その意識を貪り食った。
最後の支配者、破滅の頂点に辿り着く頃には、モンスター領域は静まり返っていた。
セラフィナは、打ち倒された伝説の者たちの山の頂上に立ち、指先から血を滴らせ、燃えるような目で見つめていた。
「選択肢は二つ」と彼女は彼らに告げた。
「共に神々と戦うか。」
「あるいは、彼らが滅ぼされた時に滅ぼされるか。」
怪物は選択した。
回想は終わった。
オーレリアは恐怖に震えながらセラフィナを見つめた。
「…あなたは一つの種族全体にトラウマを与えた。」
セラフィナは彼女を振り払った。「彼らは回復するでしょう。」
ルーシーは静かに観察しながら、一度頷いた。「効果的だ。」
オーレリアはさらに大きなうめき声を上げた。
誰かがそれ以上言う前に――
巨大な衝撃波が空気を切り裂いた。
アレスとザカリーが戦った戦場は内側へと崩れ落ち、戦争と破壊の渦巻く特異点を形成した。
エネルギー出力が再び急上昇した。
高すぎた。
今行動を起こさなければ――
セラフィナは指の関節を鳴らした。「これからが面白い展開になりそうだわ。」
フェンリルの鎧がルーンで燃え上がった。「介入する?」
ルーシーの視線が鋭くなった。「そうするしかない。」
オーレリアは深呼吸をすると、黄金の光が落ち着きを取り戻した。
「……ならば、神々を止めよう。」と彼女は静かに言った。
軍勢が動き出した。
そして初めて――
下層圏の主要勢力が結束した。
天界に対抗して。
「……わかった。」セラフィナは腕を組み、ゆっくりと言った。「どうやって?」
皆が彼女の方を向いた。
彼女は微笑まなかった。冗談も言わなかった。
「どうやって止めるっていうの?」彼女は戦場を指差しながら続けた。「あの二人は文字通り神々や原初存在、そしてそれ以上の存在と張り合っているのに。彼らの存在だけで存在が崩壊していく。ルーシーはすでにオーレリアの面倒を見ているし、あの二人は死のスパイラルに囚われている。」
彼女は鋭く息を吐いた。
「飛び込むのは自殺行為よ。」
誰も反論しなかった。
彼女が正しかったからだ。
ルーシーはオーレリアの傍らに立ち、片手を軽く肩に置き、冷たい目でオーレリアの不安定なオーラを見つめていた。今もなお、ルーシーはオーレリアが不安定にならないように、演算処理能力――いや、存在レベルの計算――を注いでいた。
「離脱できないわ」ルーシーは冷たく言った。「オーレリアの原初状態が崩壊すれば、反動は魔界の生存能力を超えるわ。」
オーレリアは歯を食いしばった。「つまり、私は負担なのね。」
「あなたは責任ある存在よ」ルーシーは訂正した。「そして守る価値があるのよ」
その言葉でオーレリアは黙った。
沈黙が深まる前に――
足音。
いや――気配。
ナリが先に歩み出た。いつものように落ち着いていて、影は従順な召使いのように彼女を包み込んだ。アニーが続いた。彼女の小柄な体からは恐ろしく濃い魔力が放たれ、若さにもかかわらず鋭い目つきをしていた。エリスは杖を手に、二人の横を歩き、表情は集中しつつも落ち着いていた。
セラフィナは瞬きをした。「……ああ、よかった。ここに来てくれたのね」
彼女は首を傾げた。「当ててみようか。軍はお行儀よくしているわね?」
ナリは一度頷いた。「獣人族の部族すべて。鬼の一族。トカゲ族の軍団。ドラゴン族の長老。オークの軍団。トロールの先鋒。野獣族までも。」
彼女は少し間を置いた。
「すべての指導者、将軍、そして指揮官は集合した。命令を待っている。」
その言葉の重みは、まるで流星のように突き刺さった。
近くに立ち、肩に剣を置いたスカーレットは、信じられないといった様子で見つめた。「そんな…ありえないわ。モンスター地域は決して一つにならないのよ。」
アニーはかすかに微笑んだ。「セラフィナが十分に怖がらせれば、一つになるのよ。」
セラフィナは肩をすくめた。「恐怖は言語よ。」
オーレリアは視線を戻した集結した戦場の間を縫うように進み、現実そのものが引き裂かれる戦場へと戻った。
「…たとえ全員揃っても」彼女は静かに言った。「あの二人を止めるには足りない。」
彼女は唾を飲み込んだ。
「もしリサがここにいたら…」彼女は顔をしかめた。「事態を悪化させるだけだった。」
ある声が彼女の耳元で囁いた。
「あら?私は最高の仕事をするつもりだったのに。」
気温が下がった。
現実がひるんだ。
戦場に激しい圧力が叩きつけられ、アレスとザカリーの衝突さえも半秒ほど途切れた。
オーレリアは目を閉じた。
「…もちろん。」
歪んだ空間の波紋が、まるで存在が渋々場所を空けるかのように、二人の背後で開いた。
リサが歩み出た。
ニヤリと笑う。
ポケットに手を突っ込む。
混沌とした歓喜に瞳が輝いている。
彼女が現れた瞬間、まるで戦場の真ん中に核兵器が無造作に置かれたかのようだった。武器は持たないが、準備万端だった。
スカーレットは本能が叫び、半歩後ずさった。「な、何だ?」
ルーシーの瞳孔がわずかに狭まった。「脅威レベル:許容範囲外。」
セラフィナはため息をついた。「ああ。彼女だ。」
オーレリアは鼻梁をつまんで振り返った。「リサ。」
リサは元気に手を振った。「ねえ〜、会いたかった?」
「どこか別の場所にいるはずだったのに。」
「そして、これが恋しいの?」リサは崩壊する魔界、神レベルの衝突、集結する軍勢を一瞥した。「まさか。」
誰もがそれを感じていた。リサの存在はただ強力だっただけではない。
それは間違っていた。
邪悪ではない。
敵意でもない。
ただ…抑えきれない。
スカーレットはようやく声を取り戻した。「オーレリア」彼女はゆっくりと言った。「今、この人たちが誰なのか説明して。」
オーレリアは疲れたように身振りで示した。「わかった。点呼。」
彼女は指差した。
「こちらはセラフィーナ。吸血鬼、怪物交渉人、歩く戦争犯罪者。」
セラフィーナは物憂げに敬礼した。
「アニー、体の大きさに騙されちゃダメよ」
アニーは優しく微笑んだ。
「ナリ――影のスペシャリスト、暗殺者、恐るべきほど有能よ」
ナリは丁寧に頭を下げた。
「エリーゼ――魔術師、サポート、そして心の支え」
エリーゼは頷いた。
「フェンリル――狼男、最前線、忠誠の化身」
フェンリルは腕を組んだ。
「そして…」オーレリアは少しためらい、深くため息をついた。「…リサ」
リサは両腕を広げた。「時限爆弾のことね」
スカーレットはじっと見つめた。
それから弱々しく笑った。「…正気じゃないわね」
「ええ」オーレリアは即座に答えた。「議論の余地はありません」
地面が再び揺れた――今度はもっと激しく。
アレスは神聖なオーラを燃え上がらせ、咆哮した。ザカリーは悪魔の奔流で応戦し、新たな亀裂を開いた。
時間は刻々と過ぎていた。
セラフィナは首を鳴らした。「わかった。では、力ずくはダメ。組織的な攻撃は自殺行為だ。リサが全力を尽くせば、この世界は終わりだ。」
リサは口を尖らせた。「面白くないわね。」
ルーシーが混沌を切り裂くように言った。「では、直接止めることはできない。」
全員が振り返った。
ルーシーの目が輝いた。
「戦場を変えるのよ。」
オーレリアは息を呑んだ。「…つまり…」
「ええ。」ルーシーは確認した。「紛争を孤立させる。傍観者を排除する。全滅させることなく、強制的に解決させる。」
セラフィナの笑みが、ゆっくりと、鋭く戻った。「まさに私が理想とする計画だわ。」
リサは首を傾げ、目を輝かせた。 「あら。何かお手伝いしましょうか?」
ルーシーは彼女をじっと見つめた。
「…指示に従うならね。」
リサは息を呑んだ。「失礼ね。」
しかし、彼女はさらに大きく笑った。
軍勢は待ち構えていた。
神々は激突した。
そして、戦争が始まって以来初めて、
ついに反撃の糸口が見えてきた。




