第178話 モンスターの戦い
天界の処刑人が虚空へと消え去った瞬間、戦況は一変した。
続いてきたのは勝利ではなかった。
恐怖だった。
戦場の至る所で、ほんの少し前まで正義の怒りをもって戦っていた天使たちが、突然立ち止まった。翼は震え、陣形は崩れ、神の命令は思考の途中で砕け散った。
そして――何の前触れもなく――彼らは走り出した。
退却ではない。
避難のためだ。
ルーシーは目を細めた。
「……逃げているわけではない。」
オーレリアもそれを感じた。生まれたばかりの原初の状態の黄金のオーラが、不安げに響いた。まるで何かはるかに重いものが近づいてくるかのようだった――この戦場にも、この領域にも属さない何かが。
そして空が裂けた。
ひび割れたのではない。
裂けたのでもない。
まるで天空そのものが突き落とされたかのようだった。
燃え盛る物体がとてつもない速度で落下し、戦場の中央に激突した。
衝撃は音を消し去った。
衝撃波が爆発し、遺跡をなぎ倒し、魔族の軍団を翻弄し、神々の残骸を粉々に砕いた。何キロメートルも離れた山々は、まるで見えない槌で叩かれたかのように砕け散った。
塵がようやく収まった時――
一人の男が立っていた。
広い肩を、古代の征服の象徴が刻まれた、傷だらけの深紅の鎧で包んでいた。脇には巨大な槍が据えられ、その刃は現実を揺るがすほどの重圧を響かせていた。彼の存在だけで、惑星が内側に崩壊していくように感じられた。
あらゆる下等な存在――魔族の兵士、精鋭の指揮官、そして魔王でさえ――本能が叫び声を上げた。
逃げろ。跪け。祈れ。
これは敵ではない。
これは戦争そのものが形を成したのだ。
ルーシーの目が瞬時に鋭くなった。
「…アレス。」
その名には重みがあった。
アレス、軍神。
半神ではない。
劣等神でもない。
昇天した神――十二神の一員。その存在だけで、数え切れないほどの世界で幾時代もの流血の時代を形作ってきた存在。
ルーシーでさえ――冷徹で計算高いルーシーでさえ――筋肉が緊張するのを感じた。
「これは悪魔が戦うべき戦いではない。」
アレスは明らかに退屈そうに戦場を見渡した。燃え盛る天使の死体。悪魔の残骸。荒廃した地形。
「ふん。」彼の声は遠く雷鳴のように響いた。「ずさんな。」
彼は逃げ惑う天使たちへと視線を上げた。
「卑怯者め。」彼は無関心に呟いた。
そして彼の視線が動いた。
視線はオーレリアに注がれた。
黄金のオーラ。意志によって鍛え直された折れた剣。太古の誕生の残響が、今もなお彼女の存在にまとわりついていた。
アレスは微笑んだ。
感銘を受けたわけではない。
だが、面白がっていた。
「それで」と彼は言った。その声は苦もなく戦場に響き渡った。「この領域は興味深いものを産み出したようだな。」
彼は鎧をまとった片手を上げた。
「慈悲を与えよう。」
すべての悪魔が硬直した。
アレスは指を鳴らした。
地面が答えた。
戦場の真下から地面が裂け、数十万もの動く戦闘装甲が噴き上がった。神聖な合金から鍛え上げられ、戦いの概念そのものを体現した古代の建造物だ。それぞれが完璧に同期して動き、目は赤く燃え、武器は殺戮の響きを響かせていた。
アレスの背後で、空間が歪んだ。
五人の人影が前に出た。
彼の精鋭将軍たち。
それぞれが知覚を歪めるほどの強大な力を放っていた。現実を消し去り、高次元を破壊し、宇宙のあらゆる階層に渡り、休むことなく戦争を仕掛ける力を持つ存在だった。
戦場は息詰まるような静寂に包まれた。
アレスは再び口を開いた。
「我に挑め」と彼は静かに宣言した。
「この領域を救う価値があることを証明しろ。」
彼の視線は冷たくなった。
「失敗すれば…消し去る。」
悪魔たちの士気は揺らいだ。
地獄の階層を支配し、無数の軍団を率いる魔王たちでさえ、血が凍りつくのを感じた。
そして…
深紅の存在が重圧を切り裂いた。
ザカリー・ブラッドファルが前に出た。
真の魔王は何かを後ろに引きずりながら、静かに戦場を歩いた。
頭。
セラフィス。
元大天使の司令官。
死んだ。
ザカリーはそれを何の遠慮もなく足元に落とした。
彼は首を鳴らした。
「ずっとこれを待ち望んでいたんだ」と彼は何気なく言った。「天使を殺すのは楽しい。だが、素手で神を殺すとは?」
彼の視線はアレスに釘付けになった。
「それは語るに値する話だ。」
アレスは彼を見つめた。
そして笑った。
低く、軽蔑するような声。
「お前か?」彼は嘲笑した。「悪魔の王、地獄の支配者、ああ…下等な存在には感銘を与えるものだ。」
彼は一歩前に出た。
「だが、お前はやはり戦場の生き物だ。」
もう一歩。
「私は戦場だ。」
ザカリーはニヤリと笑った。
「よし」と彼は答えた。「では、どちらが先に血を流すか見てみよう。」
二人のオーラがぶつかり合った。
爆発ではない。
崩壊した。
まるで二つの宇宙が衝突するかのように、二人の間の空間は内側に折り重なった。現実が悲鳴を上げた。足元の地面が崩壊し、征服、支配、そして終わりなき戦争という概念が重なり合い、押し潰された。
下級悪魔は皆、片膝をついた。
兵士たちは皆、臓器が悲鳴を上げるのを感じた。
ルーシー、オーレリア、そしてスカーレットだけが立ち尽くした。それぞれが、生の力を超えた何かによって守られていた。
ルーシーは即座に分析した。
「…二人の絶対的な怪物よ」と彼女は呟いた。「この戦いは、我々が望むと望まざるとに関わらず、戦場を塗り替えることになるだろう。」
オーレリアは拳を握りしめ、黄金のオーラが本能的に燃え上がった。
彼女の原初的な本能が揺さぶられた。恐怖ではなく、認識によって。
これはもはや戦争ではなかった。
これは伝説の衝突だった。
アレスは肩を回し、槍に神聖な炎が燃え上がった。
ザカリーの血管は深淵のエネルギーが迸るにつれ、真紅に染まった。
戦場は息を呑んだ。
そして――
彼らは消えた。
続く衝撃波は地平線を砕いた。
そして戦争は、次の、恐ろしい章へと突入した。
彼らの手が触れた瞬間、世界は消滅した。
爆発はなかった。
音もなかった。
光もなかった。
領域そのものが、ただ崩壊した。
空間は砕けたガラスのように内側へ崩壊し、時間は支離滅裂な破片へと砕け散り、魔界の空は神が素手でその皮を引き裂いたかのように裂けた。
そして――
ドカン。
衝撃波はエネルギーとしてではなく、概念の消滅として外側へと爆発した。魔界の全域が、一撃で消滅した。山脈は跡形もなく平らげられ、海は真空に反転し、レイラインは脆い糸のように断ち切られた。
戦場の構想さえも引き裂かれた。
オーレリアは本能的に結界を張り、黄金の威光が燃え上がった。ルーシーは一瞬にして三百万通りの結果を計算し、衝撃波に粉砕される前にスカーレットを力ずくで引き戻した。
他の皆は?
消えた。
死んではいない。
排除された――衝突の直接的な因果関係の外へと押し出された。
震源地で――
アレスとザカリーは既に再び動き出していた。
拳と拳がぶつかり合った。
衝突は現実の第二層を砕き、割れた鏡のように魔界を裂く亀裂を生み出した。ザカリーは崩壊する空間を後方へ滑り落ち、ブーツで存在そのものに溝を刻み、そして笑みを浮かべた。
生々しく、野性的な音。
「これだ――これだ!」ザカリーは咆哮した。「何世紀もこんな生を感じたことはなかった!」
彼は消えた。
アレスはほとんど振り返らなかった。
ザカリーは再び彼の上に現れ、悪魔の印章を燃え上がらせながら、聖なる領域さえも粉砕し得る一撃、クリムゾン・ルインを膝蹴りで叩きつけた。
アレスはそれを受け止めた。
素手で。
衝撃は彼らの足元に残っていたわずかな構造を粉砕し、両神は幾重もの現実の層を突き抜け、そして領域の真下に新たに形成された虚空へと叩きつけられた。
アレスはニヤリと笑った。
「よかった」と彼は言った。「つまらない奴じゃないな」
彼のオーラは拡大した。
神々の意志が燃え上がった。それはマナ、神性、法則に頼るのではなく、天界階層においてこれまで戦われたあらゆる戦争の集大成に依拠する権威だった。
アレスの存在は重くのしかかった。
ステータスは計り知れないほど急上昇した。
力、スピード、持久力、戦闘本能。
すべてが強制的に上方修正された。
彼はザカリーの肋骨にパンチを叩き込んだ。
その一撃はザカリーの胴体を内側に折り曲げ、虚空を突き抜け、地獄の現実の三層を突き破った。そして彼は自らを解放した。口からは黒く燃えるような血が溢れ出た。
ザカリーは血を拭った。
彼の笑みはますます大きくなった。
「ハッハッハ、そうだ!」
彼から超新星のように悪魔のエネルギーが噴き出した。
深淵のルーンの鎖が彼の腕に巻き付き、悪魔の主権昇天を発動した。彼の体は膨張し、角は上向きにねじれ、瞳は深淵の星々で燃えた。
彼はアレスに突進した。
彼らは再び出会った――
そして今度は、現実が悲鳴を上げた。
彼らは光よりも速く、因果律よりも速く、神の知覚よりも速く、打撃を交わした。衝突は無限の距離を消し去り、ミスした一撃は新たな虚空を刻み込んだ。
アレスは完璧な残忍さで攻撃した――無駄な動きも、ためらいもなかった。あらゆる攻撃は戦争の結晶だった。
ザカリーは生々しく、抑制のきかない破壊で応戦した。その動きは征服欲、誇り、そして何世紀にもわたって抑え込まれてきた血への渇望によって突き動かされていた。
アレスは天を割る突きを放った。
ザカリーは深淵を貪る爪で反撃した。
衝突は魔界の層全体を崩壊させ、渦巻く虚無へと変貌させ、その下層の虚空へと注ぎ込んだ。
二人は共にその虚空を突き破った。
ザカリーが先に着地し、断片化された存在の上を滑るように進んだ。アレスはすぐに続き、槍を死にゆく宇宙よりも明るく輝かせながら、地面に叩きつけた。
ザカリーは腕を組んだ。
槍が命中した。
衝撃はザカリーのガードを粉砕し、彼を深淵へと突き落とした。しかし、アレスが追撃する前に、ザカリーは槍を掴んだ。
魔の血管が隆起した。
アレスは抵抗を感じた。
本物の抵抗だ。
ザカリーは歯が折れそうになりながら笑った。
「軍神よ」彼は唸り声を上げ、アレスを引きずりながら体を起こした。「戦いに身を捧げるのはお前だけではないのだ。」
彼はアレスに頭突きを放った。
一撃は二人の額の間で爆発し、衝撃波が複数の領域に同時に波紋を巻き起こした。
初めて――
アレスは押し戻された。
彼が滑り降りるにつれ、ブーツが現実を切り裂き、神聖な炎の火花が彼の後ろにたなびいた。
静寂が訪れた。
心臓が一拍鼓動した。
そしてアレスは背筋を伸ばした。
彼の笑顔は消えた。
「……素晴らしい」彼は静かに言った。
戦場――わずかに残っていたもの――が震えた。
両神は拳を振り上げた。
次の一撃は、単に戦いを決するだけではなかった。
それは、この王国がそもそも存在し続ける価値があるかどうかを決定するでしょう。




