第176話 地獄の戦争 パート1
戦争はただ激昂するだけでは済まなかった。
それは唸り声を上げた。
カルカの焼け焦げた平原からヴァ=レロスの深淵の空まで、魔界全域で悪魔と天使の激突は、まるで開いた傷のように現実を引き裂いた。マナの嵐が渦巻き、神聖な光と衝突し、空そのものが、いかなる神にも属さない雷鳴で裂けた。
これは領土をめぐる戦いではなかった。
これは生存をめぐる戦いだった。
スカーレット・ブラッドファルは、生きた業火のように動いていた。
深紅の槍を両手で回転させながら、ブラッドファルの血統にのみ受け継がれる術「深淵の術:舞い咲く花」を発動した。彼女が地面に足を踏み入れた瞬間、戦場は深淵のエネルギーの暗赤色の花びらで彩られた。
一枚一枚の花びらが死を象徴していた。
彼らは天使の鎧を紙のように切り裂き、翼を断ち切り、光輪を裂き、叫び声を上げている最中にその体を消し去った。千の天使が瞬く間に倒れ、神聖なる姿は薄れゆく光の粒へと崩れ去った。
スカーレットは速度を緩めなかった。
息を止めた。
彼女は踊り続けた。
「さあ!」彼女は燃えるような目で叫んだ。「天国にあるのはこれだけなの?!」
天使たちは聖なる槍の連射で応えた。
スカーレットは空中で身をよじり、槍は猛スピードで回転し、真紅の輪となった。槍は接触と同時に砕け散り、神聖な光は深淵のエネルギーに呑み込まれ、無へと崩れ去った。
彼女は着地した。槍からは消滅の滴が滴っていた。
「哀れだ。」
彼女の左では、エリート戦悪魔グリフィンが人生最高の時間を過ごしていた。
まるで生きた破城槌のように、彼が天使の陣形に体当たりすると、地面が割れた。古代の戦紋が刻まれた巨大な大剣が、残忍な弧を描いて振り下ろされた。
ドカン!
十体の天使が空高く舞い上がり、叫び声を上げる間もなく、その体を引き裂かれた。グリフィンは低く轟く笑い声を戦場に響かせた。
「ハッハッ!走れ!もっと速く走れ!」彼は咆哮し、再び突撃した。
天使たちは彼を取り囲もうとした――愚か者め。
グリフィンは足を踏みつけ、ウォークエイク・ドミナスを発動させた。地面が上方へと爆発し、天使たちは穢れた大地のギザギザの柱に突き刺された。彼はさらに回転斬りを放ち、20メートル以内のすべてを消し去った。
血――神聖な血と悪魔の血――が空から降り注いだ。
「これが戦争だ!」グリフィンは怒鳴った。「お前の聖なるパレードじゃない!」
頭上で空気が燃え上がった。
炎の精鋭悪魔スカーは、両手を背中に組んで静かに前に出た。彼の足元には暗黒の炎の輪が一つ、二つ、十、そして何百と現れた。
天使たちが上空から突撃し、純粋な光の矢を放った。
スカーは一本の指を立てた。
暗黒の炎の花火。
炎の輪が爆発した。
巨大な黒い地獄の炎の波が、生きた蛇のようにうねりながら上昇した。矢も、翼も、天使も、全てを呑み込み、破壊の嵐となって空を駆け巡った。
航空支援は消えた。
スカーはゆっくりと息を吐き、落ちていく残り火を見守った。
「ちっ」と彼は呟いた。「ひどい」
そして気温が下がった。
一瞬で。
氷の精鋭悪魔エリザベスが前に踏み出すと、戦場は凍りついた。霜は地面を這い、天使の鎧を駆け上がり、そして空へと舞い上がった。
彼女は指を鳴らした。
絶対零度支配。
全てが止まった。
天使たちは飛行中に凍り付き、氷が彼らを内側から蝕む恐怖に表情を歪めた。エリザベスが手を上げると、凍りついた戦場が震えた。
氷の中から、圧縮された氷河のマナで作られた巨大な怪獣ゴーレムが出現した。その目は淡い青色の光を放っていた。
エリザベスはあくびをした。
「終わらせろ。」
ゴーレムが動いた。
一歩踏み出せば1マイルもの凍土が砕け散った。一撃で天使の大隊が全て消滅し、きらめく氷と光の破片と化した。
エリザベスは既に退屈していたので、顔を背けた。
そして、その中心には――
王たちの激突。
ヴァ=レロスの真の魔王、ザカリー・ブラッドファルは、大天使セラフィスと激しく交戦していた。
二人の激突は、王国を揺るがした。
剣と槍が閃光を放ち、深淵の紅が神聖な黄金と激突した。衝撃波が戦場を駆け抜け、山々をなぎ倒し、空を切り裂いた。
セラフィスは恐ろしいほどの精密さで動き、六枚の翼を燃え立たせながら、眩い光の槍を突き刺した。
ザカリーはそれを受け止めた。
素手で。
彼が足を踏ん張ると、足元の地面が爆発し、深淵のエネルギーが彼の手から燃え上がった。彼は唸り声をあげ、セラフィスの胸を蹴り、大天使を吹き飛ばした。
セラフィスは空中で身をよじり、翼で体を安定させながら、新たな光の槍を召喚して投げつけた。
ザカリーは横に避けた。
槍はわずか数インチの差で外れ、遠くの山を貫き、その存在を消し去った。
セラフィスは両手を上げた。
彼の背後に、刃、槍、鎖といった何千もの武器が出現した。それぞれの武器には、真の神々を滅ぼすための印章が輝いていた。
ザカリーは目を細めた。
セラフィスは微笑んだ。
「地獄の真髄を、見せてもらおうじゃないか。」
武器が雨のように降り注いだ。
ザカリーは姿を消した。
彼は嵐の真ん中に再び姿を現した。真紅のエネルギーが彼の周囲を渦巻いていた。
「クリムゾン・ヴォイド」。
深淵が開いた。
武器は丸呑みされ、神聖な光は砕かれ、消滅した。虚空は行く手を阻むすべてを呑み込んだ。セラフィスの攻撃が止むと、空は暗くなった。
セラフィスの笑みはさらに深まった。
「素晴らしい」と彼は優しく言った。「お前は相応しい。」
彼は突進した。
別の場所では、戦況が一変していた。
天使たちは容赦ない攻撃に後退した。悪魔の軍勢が押し寄せ、その咆哮が領域を揺るがした。しかし、勝利が目前に迫ったまさにその時――
空が裂けた。
まばゆいばかりの天界の光柱が降り注ぎ、悪魔の精鋭たちでさえも目を覆わざるを得なかった。
そこから巨大な何かが姿を現した。
何かがおかしい。
空に巨大な天界の印章が形成され、そこから輝く鎧をまとい、聖なる炎で燃える翼を持つ人影が降り立った。
戦場に声が響き渡った。
「最高評議会の布告により、この領域は浄化の刑に処せられる。」
スカーレットは凍りついた。
グリフィンは唸り声を上げた。
エリザベスは眉をひそめた。
ザカリーの瞳は怒りに燃えていた。
「天界の執行者だ」と彼は唸り声を上げた。「奴らは…」
執行者は刃を振り上げた。
現実が悲鳴を上げた。
それが攻撃する前に――
存在が変化した。
咆哮ではない。
爆発でもない。
ただ一歩。
そして突然、エグゼキューターは動きを止めた。
白髪の女が、ポケットに手を突っ込み、存在しない風にスカーフをはためかせながら、エグゼキューターと戦場の間に立っていた。
ルーシー。
彼女の目は冷たかった。
打算的だった。
無関心だった。
「あなたは許可されていません」と彼女は冷たく言った。
エグゼキューターは振り返り、神聖なエネルギーを燃え上がらせながら彼女を分析した。
エラー。エラー。ターゲットは非機密です。
ルーシーは首を傾げた。
「なるほど。」
彼女は動いた。
エグゼキューターはそれが来るとは予想していなかった。
ある瞬間、それはそこに輝き、絶対的な存在として立っていた。
次の瞬間、その頭部は体から離れ、現実そのものが一撃を包み込んだ。ルーシーが振るう論理の刃は、物質だけでなく、機能さえも消し去った。
エグゼキューターは崩れ落ち、無意味なデータへと溶けていった。
ルーシーは辺りを見回した。
「…それで?」
戦場は静まり返った。
そして――
魔王軍は歓声を上げた。
遥か上空で、ザカリーとセラフィスは最後の激突を繰り広げた。
二人の武器がぶつかり合い、重なり合い、深淵と神性が互いに叫び合った。
セラフィスは息を切らし、口からは光の血が滴り落ちた。
ザカリーは身を乗り出し、燃えるような目で見つめた。
「この領域は決して屈服しない」と彼は冷たく言った。「神にも、天にも。」
彼は最後の技を発動した。
ブラッドフォール・ソヴァレンティ。
世界が赤く染まった。
深淵の権能に圧倒され、神の加護も、位階も、そして存在する権利さえも奪われたセラフィスは、悲鳴を上げた。
ザカリーは剣を突き出した。
大天使は砕け散った。
戦争は静寂ではなく――
勝利で終わった。
天使たちは逃げ去った。
空は癒された。
そして魔界は、傷つきながらも崩れることなく、立ち上がった。
灰の中から、地獄のあらゆる層に真実が響き渡った。
天は動き出した。
そして地獄は応えた。




