第175話 ヴァ・レロスのウォーホーン:最初の行進
流れ星のように、魔界に朝が訪れた。
ヴァ=レロスの高みの塔から、戦角笛が鳴り響いた。深く、喉を鳴らすような、古の響き。五千年以上も耳にしていなかった音。あらゆる悪魔の血にこだまする音。
戦争が始まった。
オーレリアは魔王の城の正面バルコニーに立ち、カルカの長老鍛冶屋によって鍛え上げられた黒曜石の鎧を身にまとっていた。黒いマントが彼女の背後でひらひらと揺れ、裏地には悪魔のルーン文字が刻まれ、真紅の熱で輝いていた。
彼女の後ろにはルーシーが立っていた。彼女は圧縮された量子論理マトリックスから作られた銀色の戦闘服を着ていた――それが一体何を意味するのかはわからないが。彼女のスカーフは不自然に揺れ、まるで異次元の音楽に合わせて踊っているかのようだった。彼女の瞳は計算と準備で輝いていた。
魔王の娘、スカーレット・ブラッドファルが、血のように赤い鎧を身にまとい、背中には槍を背負い、魔炎が両手を舐めながら、彼らの傍らに現れた。
「二人とも準備はいい?」と彼女は地平線を一瞥しながら尋ねた。
オーレリアは深く息を吐いた。「いつものように。」
「よし。」スカーレットは頷いた。「これは単なる戦いではない。魔界戦争の始まりなのだ。信じてくれ。天界の者たちは我々をただの獰猛な怪物だと思っている。彼らがどれほど間違っているか、見せつけてやる。」
ルーシーは何も言わなかった。彼女の指は既に動き始め、軌道、魔力の流れ、敵の位置を計算していた。必要とあらば、現実を破る覚悟ができていた。
ヴァ=レロスの門が開いた。
そしてそこから…地獄の軍団が溢れ出た。
数千、いや、数百万の魔族が行進した。
精鋭のハイデーモンたちが、翼に業火を纏い空を舞い舞った。
デーモン・ロードたちは、巨大な獣――ドラゴン、サーペント、キメラ――に跨っていた。
スペルキャスターたちは影に隠れ、禁断の呪文を放とうとしていた。
メカデーモンたちは、魔法と技術の融合によって鍛え上げられ、轟く咆哮とともに踏み鳴らされた。
ヴァ=レロスの戦合唱団が歌い始めた――破滅と誇りの旋律。
兵士たちの心には、ただ一つの思いがあった。「この世界が燃えるなら、天界も共に燃える。」
展開前の作戦室で、ザカリー・ブラッドファルは剣を地図に突きつけた。
「天界はアビス・スカーの境界付近に展開を開始した。報告によると、複数のアークエンジェルが領域間の裂け目を召喚しているという。我々がこれを阻止しなければ、あらゆる領域に侵入してくるだろう。」
「それから、それらを停止させるのよ」オーレリアは指の関節を鳴らしながら言った。
ルーシーは投影をじっと見つめた。「次元安定装置として機能している塔が三つあるの。同時に破壊すれば、天界との繋がりが途絶えてしまうわ」
「だから、二手に分かれるんだ」ザカリーは言った。「私は軍団と共に中央の道を進む。オーレリア、君はスカーレットと東の塔へ。ルーシー、君は西だ。君だけが探知されずに行動できる」
「よし」ルーシーはそう言うと、すぐに振り返り、量子煙の渦の中に消えていった。
「さよならも言わないで」オーレリアは呟いた。
「彼女は…有能ね」スカーレットはニヤリと笑った。
東部戦線
大地は焼け焦げていた。天界のエネルギーが放射能を帯びた風のように脈打ち、空気を歪めていた。クレーターだらけの戦場の上空に浮かぶ東塔は、神聖な力で響く黄金の鎖に支えられていた。
オーレリアとスカーレットは塹壕に立ち、遠くから見守っていた。
「準備はいいか?」スカーレットは槍を回転させながら尋ねた。
オーレリアは首を鳴らした。「最初のウォーホーンから準備万端だ。」
二人は飛び立った。
スカーレットは爆発する炎の階段で空中に道を作り、オーレリアは尖った岩から飛び降り、ガントレットを使って空へと舞い上がった。アークエンジェルたちが彼らを見つけ、突撃してきた。
「やっつけろ!」スカーレットは咆哮した。
翼がぶつかり合い、刃が悲鳴を上げた。オーレリアは燃え盛る槍の一撃を受け止め、ひっくり返って天使の顎を肘で突き刺した。さらにもう一撃が――スカーレットが空中で突き刺した。
彼らは止まらなかった。
塔に近づくごとに、神の圧力は強まった。
血が飛び散った。
光が爆発した。
そして審判の塔は崩壊し始めた。
一方、西部戦線
ルーシーは中に入らなかった。
彼女はただ塔の中に現れた。警報も、防御もなかった。
塔の中の時間は止まったようだった。天使たちは動かなかった。
彼女は刃に手を添え、幽霊のように塔の中を歩いた。
彼女はコアをスキャンし、あらゆる量子糸、あらゆる現実の鍵を分析した。
「オーバーライド」
たった一度の接触で、塔は溶け始めた――物理的にではなく、概念的に。その目的が解き明かされ始めた。天使たちは何が起こっているのか理解すると同時に、論理の崩壊を理解できずに崩れ落ちた。
ルーシーは「さようなら」と囁いた。
彼女は消えた。
塔は崩壊した。
中心
ザカリーはまるで悪魔の神のように戦った。一撃ごとに天使たちは粉々に砕け散った。
彼は素手で天使の一人を核に突き刺し、さらにもう一人を地震のような咆哮で押し潰した。
彼が中央塔の中心に辿り着くと、黄金の存在がそこに立っていた。
「大天使セラフィス」ザカリーは目を細めた。
「遅すぎる、悪魔よ」セラフィスは創造エネルギーで輝く槍を掲げた。「既に天界の処刑人を配置した」
ザカリーはひるまなかった。
彼は微笑んだ。
「処刑人を止めるために来たのではない」
「お前を殺すために来たのだ」
三つの塔はほぼ同時に崩壊した。
黄金の衝撃波が空に轟いた。
ポータルがちらつき、そして砕け散った。
天界と下層圏の繋がりは
断ち切られた。
ヴァ=レロスでは、再び角笛が鳴った。だが今回は、戦いのためではなかった。
勝利のためだった。
その夜、祝賀ムードはなかった。
まだだ。
なぜなら、これは始まりに過ぎなかったからだ。
しかしルーシーは宮殿の屋根の端に静かに座り、再び星々を眺めていた。今度は、星々が少し近くに感じられた。
オーレリアは再び彼女を見つけた。
「まだ星を数えてるの?」
ルーシーは見なかった。「いいえ。星が戻ってくるのを待っているんです。」
「…また来るわよ」オーレリアは言った。「いつも来るわ。たいていはおやつと皮肉な一言を添えて。」
ルーシーは思わず微笑んだ。 「そう願うよ」
二人は共に座っていた。冷たい論理と温かい炎。
そして二人の頭上では、空が静かな警告に燃えていた――
本当の戦争はまだ始まってもいなかった。




