第171話 勇気の戦い
ザカリー・ブラッドファルが玉座から立ち上がると、宮殿全体が彼の存在感に震撼した。魔風の波が吹き荒れ、その威圧は精鋭の衛兵でさえ身構えざるを得なかった。鎧をまとった彼の姿には、黒い炎が揺らめき、真の魔王、魔界の頂点捕食者としての地位を象徴していた。
最高位の上級魔族から魂縛された衛兵に至るまで、彼の部下たちは皆、ためらうことなく即座に頭を下げた。彼らの膝は、まるで彼の意志の重力に引っ張られるように、床についた。
ザカリーの冷たく絶対的な声が玉座の間に轟いた。
「来い。」
その一声とともに、彼は振り返り、歩き始めた。一歩ごとに背後の空気が歪んだ。玉座の間の奥にある重厚な鉄の扉が軋みながら開き、大地へと螺旋状に続く廊下へと続いていた。
娘のスカーレットは、二人の訪問者に静かに続くように合図した。
オーレリアとルーシーは王の後ろを静かに歩き、一歩一歩が運命の足音のように響き渡った。
長い下り坂を下り、二人はクリムゾン・アリーナに到着した。冥界の根元に刻まれた巨大な闘技場だ。観客席には既に、あらゆる種族と階級の無数の悪魔たちが詰めかけていた。王の存在に呼び起こされ、血の約束に引き寄せられた者たちだ。
ザカリーが穴に足を踏み入れた瞬間、すべての悪魔が雄叫びを上げ、戦いの歌を歌い上げた。これは単なる戦いではない。壮観な光景だ。まさに伝説が動き出した瞬間だった。
ザカリーは二人の方を向き、大声で言った。
「お前たちのうち、誰が魔王の怒りに立ち向かう勇気があるか?」
ルーシーは即座に前に出た。眼鏡の奥の鋭い目。彼女の声は冷静で、冷静で、そして絶対的だった。
「私は…」
しかし、彼女が言い終わる前に、オーレリアは決意を燃やす瞳で手を挙げ、前に出た。
「いいえ」と、彼女はきっぱりと言った。
ルーシーの表情は変わらなかったが、かすかな雰囲気の変化がそれを物語っていた。彼女はたじろいだ。
「オーレリア」ルーシーは早口で言った。「彼を敵に回さないで。あなたはまだ回復途中なのに、この戦いに勝てないわ。」
「分かっているわ」オーレリアはためらうことなく答えた。「でも、私は引き下がらない。」
ザカリーは興味をそそられながら、黙って見ていた。
オーレリアの拳がわずかに震えた。恐怖からではなく、彼女自身の決意の強さからだった。
「これまでの人生で」彼女は続けた。「私より強い人たちが重荷を背負うのを見てきた。リリアのような人たち、ルーシーのような人たち、他の人たちのように。私はただ傍観し、見守り、支えてきた。でも今回は違う。」
彼女は闘技場に足を踏み入れた。
「私はまだ全盛期ではないかもしれない。負けるかもしれない。でも、もう影に隠れるつもりはない。私は騎士だ。剣が砕け、鎧が破れても、騎士は堂々と立ち向かう。」
ルーシーは目を細めた。「死ぬわよ。」
オーレリアはルーシーに微笑み返した。愚かなプライドからではなく、純粋な心から。
「じゃあ、私が倒れたら介入して。でも、その一瞬たりとも前には。」
ルーシーは小さくため息をつき、腕を組んだ。
「わかった。でも、もし彼が致命傷を与えたら、あなたの頑固な尻を救うために、この闘技場を蒸発させる。譲れない。」
オーレリアは頷いた。「了解。」
スカーレットは手を挙げた。「それでは決定だ。さあ、裁判を…始めよう。」
彼女がそう言った瞬間、闘技場は神聖なる魔の結界で封印された――絶対的な死が訪れない限り、干渉は許されない。
ザカリーはマントを脱ぎ捨て、地面に落とし、灰と化した。振り返った瞬間、彼の体は数千年にわたる戦争の重みで音を立てた。彼は単なる王ではない。戦争の化身だったのだ。
オーレリアは剣を抜いた。鋼鉄が彼女の手の中でわずかに震えた。彼女は深呼吸をし、かつての自分の生き方の核となる信条に心を落ち着かせた。
勇気。名誉。決意。
ザカリーは彼の首を鳴らした。
「お前の信念がどれほどの価値があるか、見せてみろ。」
彼は檻から解き放たれた嵐のように動いた――一瞬、彼は立ち止まっていたかと思うと、次の瞬間、彼の拳は彗星のように彼女へと突き刺さった。
オーレリアはかろうじて避け、黒曜石の砂の上を転がり、ブーツから火花を散らした。
速い――!防ぐ余地はない。もっと賢くならなきゃ。もっと賢く、もっと速く。
彼女は正確に攻撃した――刃を関節やツボに狙いを定めて――しかしザカリーはガントレットの背で彼女の攻撃を防いだ。一撃ごとに彼女の骨に振動が伝わった。
「悪くない」と彼は唸った。「だが、お前は手加減している」
「手加減していない!」彼女は叫び、渾身の力を込めて振り回した。
ザカリーは二本の指で剣を受け止めた。
「手加減していると言っただろう」と彼は繰り返した――そして次の瞬間、彼は回転し、彼女を闘技場の壁に叩きつけた。
群衆は歓声を上げた。
オーレリアは咳き込み、唇から血が滴り落ちた――しかし、彼女は立ち上がった。
ルーシーは上から目を細めた。彼女の足がぴくりと前に進んだ。まだだ。まだだ。
ザカリーはゆっくりと、しかし着実に前進した。
「お前は心で戦う。だが、心だけでは神を倒せない」
「神を倒す必要はない」オーレリアは剣を掲げながら答えた。「ただ、神を倒す者たちと共に立つに値すると証明したいだけなのだ」
彼女は体内のエネルギーを全て解放した。魔法が燃え上がった。彼女の刃は精霊の炎で輝き、瞳は反抗の炎に燃えていた。
彼女は突撃した。
斬撃の嵐がアリーナに響き渡った。彼女は荒れ狂う嵐のように動き、一撃一撃は純粋な意志によって突き動かされていた。彼女の刃はザカリーの防御をすり抜け、脇腹、肩、脚を貫いた。血が流れた。
群衆は静まり返った。
ザカリーさえも眉を上げた。
しかしその時――彼は咆哮した。
彼は片手で彼女の刃を捉え、もう片方の手で悪魔のエネルギーの衝撃波を彼女の胸に叩きつけた。
彼女はまるで人形のようにアリーナを横切り、反対側の壁に激突した。
彼女の剣は砕けた。
彼女の肋骨は悲鳴を上げた。
彼女の視界はぼやけた。
ルーシーの体がぼやけた――すでに攻撃の準備を整えていた。
しかしその時、オーレリアは不可能を可能にした。
彼女は再び立ち上がった。
傷だらけ。痣だらけ。だが、折れてはいない。
ザカリーの表情が変わった。
「何がお前を突き動かすんだ?」と彼は尋ねた。
「希望よ」彼女はそう言い、最後にもう一度剣を振り上げた。「そして、愛する人に誓った約束…二度と屈しない。」
彼女は力ではなく、心で突撃した。
ザカリーは彼女の前に立ち、もはや抵抗はしなかった。
衝撃はコロシアム全体を揺るがした。
オーレリアは剣を砕かれ、崩れ落ちた。
しかし、彼女は微笑んでいた。
ザカリーは彼女の傍らに立ち、手を上げた。
静寂。
「彼女は逝った。」
彼は群衆の方を向いた。
「知れ。この戦士は最強ではないかもしれないが、王にふさわしい炎を宿している。」
彼は手を差し出した。
オーレリアはそれを受け取った。
群衆は歓声を上げた。
ルーシーはかすかに笑った。
「随分時間がかかったわね、バカ。」




