第168話 魔都への旅
魔界の空は、他の空とは一線を画していた。
夜になると、普通の空は暗くなるが、この空は暗い紫色に染まり、赤い稲妻の筋が走っていた。双子の月は低く不吉に浮かび、鋭い山々の峰々と、得体の知れない獣の咆哮が響き渡る果てしない黒い平原に影を落としていた。
オーレリアとルーシーは、人間、そして神々さえも滅ぼすように設計された地形を、何日も旅してきた。
竜の牙のようにギザギザの山頂を越え、古代の呪いで揺らめく火山ガラスの平原を横切り、魔族だけが読める印章が刻まれた領域を避けてきた。
今、彼らは時を得た。
眼下の谷を見下ろす高原。夜空にかすかに光る、背の高い黒い草の茎に囲まれていた。
ルーシーは魔法の石炭石と温もりの封印で火を起こし、手術のような集中力で座っていた。指先を軽く動かすと、小さな炎が燃え上がった。制御され、効率的で、まさに彼女らしい。
オーレリアは死んだ魔猪を抱えて戻ってきた。角はまだ燃えさしで火花を散らし、牙は水晶の刃のようだった。彼女はそれを火のそばに置いた。
「今日はこれで最後よ」と彼女は鎧の埃を払いながら言った。「この世界の肉は変な味がするわ」
ルーシーは顔を上げなかった。「絶望と苦痛に漬け込まれているの。慣れるわよ」
「…ほっとするわ」オーレリアは呟いた。
二人はしばらく沈黙の中で座っていた。
猪は炎で焼かれ、夜の空気をまるで食べられそうなほどの緊張感で満たした。
オーレリアは椅子に深く座り、空を見上げた。
紫色の雲がスローモーションの蛇のように渦巻いていた。彼女は双子の月が、まるで老いぼれて気に留めない目のように、頭上に漂うのを見ていた。
彼女の指がかすかに――ほんのわずか――動いたが、ルーシーはそれに気づいた。
「あの人たちのことを考えているのね」ルーシーは見ずに言った。「そうじゃないの?」
オーレリアは瞬きをしたが、最初は何も言わなかった。
「…家族のこと」彼女は静かに認めた。「故郷の。両親。妹。食卓でのくだらない言い争いさえも。」
彼女は大きく息を吐いた。
「リリアも。」
ルーシーはようやく振り返った。冷たい視線が少し和らいだ。
「彼女がいなくて寂しいのね。」
オーレリアはそれを否定しなかった。
彼女は膝を抱え、顎を膝に乗せた。「彼女がいないと世界がこんなに静かになるなんて、知らなかったわ」彼女は優しく言った。「こんな…狂気の真っ只中でも。何かが欠けているみたい。」
ルーシーは炎を見つめた。
「…怖いの?」と彼女は簡潔に言った。
オーレリアは眉をひそめた。「何が怖いの?」
ルーシーの声は穏やかだったが、メスのように鋭かった。
「これが終わったら、あなたが戻ってくる…そして彼女はそこにいないということ」
オーレリアは息を呑んだ。
その言葉はどんな悪魔の刃よりも深く突き刺さった。
「私は…」彼女は言いかけたが、すぐに言葉を止めた。
ルーシーは続けた。「あなたは死ぬのが怖いのではない。忘れ去られるのが怖いのだ。置き去りにされるのが怖いのだ」
静寂。
ただ、火の燃える音と、風ではない風のかすかな唸りだけが響いていた。
「…もしかしたら」オーレリアは囁いた。
彼女は星空へと視線を向けた。
「ちゃんと別れを告げることができなかった。彼女が去った時。すべてを犠牲にした時。彼女が私にとってどれほど大切な存在だったか、今もどれほど大切な存在か、伝えることもできなかった。」
彼女は苦々しく笑った。
「そして今、私はここにいる。モンスターだらけの世界で。魔王たちに神々との戦いに加わるよう説得しようとしている…なのに、彼女の声しか頭に浮かばない。彼女の笑い声。彼女を怒らせる者を殴る仕草。」
「彼女は一度神を殴ったことがあるのよ」ルーシーはぼんやりと言った。
オーレリアはほんの少し微笑んだ。
「彼女はたくさんのものを殴ったわ。」
ルーシーは立ち上がり、埃を払い落とした。
「あなたのような人の気持ちは理解できないわ」彼女は台地の端へと歩きながら言った。「感情に突き動かされるなんて。愛。後悔。希望。」
彼女は悪魔が跋扈する谷を見下ろした。
「でも…羨ましい。あの強さ。あの脆さ。」
彼女はオーレリアの方を向いた。眼鏡の下の瞳はかすかに輝いていた。
「もし安心してくれるなら…リリアは今もあなたのことを考えています。ずっと。」
オーレリアは驚いて顔を上げた。
「…感じ取れるの?」
ルーシーは軽く笑った。「私は彼女の完璧な姿よ。同じ考えを共有している。同じ断片。同じ気持ちじゃないかもしれないけど…でも、私は知っている。」
「…彼女は私のことをどう思っているの?」
ルーシーのニヤリとした笑みが消えた。
「彼女はあなたのことを心配しているの」と彼女は優しく言った。「彼女はあなたを信じている。そして、あなたがいなくて寂しいとも思っているの。」
オーレリアはしばらく口を開かなかった。
それから、静かに目尻の涙を拭った。
「ただ、彼女が戻ってきてほしいの」と彼女は囁いた。
「戻ってくるわ」とルーシーはためらうことなく答えた。「そして、戻ってきたときには…あなたが準備していなければならないのよ。」
オーレリアは炎を見つめた。
それからゆっくりと頷いた。
「その通りね。」
彼女は立ち上がった。
彼女の瞳には、今や決意の炎で満たされた星々が映っていた。
「私は彼女のために戦う。皆のために。必ず戻ってくる。前よりも強く。再び彼女の傍らに立てるほど強く。」
ルーシーは珍しく微笑んだ。
「それなら、そう思える。」
魔猪の調理が終わり、ひび割れた岩の上を風が唸り声をあげる中、二人の女は再び肩を並べて座った。
ただの仲間ではない。
ただの戦士ではない。
現実を超えた絆の守護者同士。
そしてどこか、遥か宇宙と物語の彼方で…
ある新たな女神は、心に温かい揺らめきを感じた。
理由は分からなかった。
しかし、彼女は微笑んだ。
そして囁いた。「すぐに戻ってくる。」
魔界では、太陽は決して昇らなかった。正しくは。ただ光を放つだけだった。漆黒の空から真紅の光線が滑り降り、残酷な神の息絶え間ない息遣いのように、ギザギザの地形に長い影を落とした。
オーレリアとルーシーは何時間も歩き続けていた。足元の岩だらけの道は凸凹で、かすかな硫黄の匂いが漂っていた。魔物の植物が道の端で、まるで何かに飲み込まれるのを待つ、知性を持つ雑草のように、うねり、シューシューと音を立てていた。
ルーシーは先を行き、周囲を見渡しながら歩いた。いつものように、彼女の冷たい表情からは何も読み取れなかった。風も彼女の心には届かず、緊張も彼女の心を動かしていなかった。
突然、彼女は立ち止まった。
オーレリアは危うく彼女にぶつかりそうになった。「どうしたの?」
「10メートル先よ」とルーシーは言った。「魔物の盗賊だ。6人。戦闘能力は高い。馬車が1台。生存者候補が2人。そして、おそらく死体も1つ。」
オーレリアは目を見開いた。「数秒でこんなに集まったなんて。本当に大丈夫?」
ルーシーは答えなかった。
彼女は既に動き出していた――オーレリアが瞬きする間もなく――崖の半ばまで。
「待て――ルーシー、待て!作戦を立てろ!」
返事はない。
オーレリアは歯を食いしばった。「ちくしょう…まさか待たないだろうな。」
眼下では混沌が広がっていた。
悪魔の盗賊団――腐敗した角とひび割れた鎧を身につけた、歪んだ人型の姿――が、血まみれの木馬を取り囲んでいた。馬はすでに殺され、御者――白髭を生やし、怯えた目をした、震える悪魔の長老――は、鍵のかかった小さな箱をまるで命そのものであるかのように握りしめていた。
「渡せ、老人!」リーダーは、邪悪なエネルギーを帯びたギザギザの黒い刃を振りかざしながら吠えた。 「さもないと、お前の内臓をえぐり出し、血を絞り尽くし、心臓を飢えの叫びの沼に叩き込んでやる!」
突然――
ドスン!
部下の一人がキャンプを横切り、木に激突して木を真っ二つに折った。
他の者たちが反応する間もなく、ルーシーが視界に入った。眼鏡がきらめき、白衣が処刑場の判事のローブのように背後で翻っていた。
「一体何なんだ――!」
もう一人が剣を掴もうとしたが、瞬きする間もなく腕は奪われていた。
もう一人が剣を振り上げたが、それを落とし、失禁し、彼女の殺意に満ちた視線に一人、意識を失って倒れた。
さらに二人が既に意識を失って地面に倒れていた。一人は首を失っていた。
リーダーは呆然と振り返った。
「何だって――このクソ野郎!」
彼は狂暴な怒りに駆られ、ルーシーに突撃した。
ルーシーは動かなかった。
目の前に迫るまでは。
その時――
バキッ!!
バックハンドが一発。
空気が割れる音。
地面が震えた。
彼の体はミサイルのように宙を舞い、衝撃の反響が届く前に、数キロも離れた遠くの山脈へと消え去った。
オーレリアはようやく現場に到着し、衝撃で目を見開いた。
「一体何が起こったの…ルーシー、あなたは…」
ルーシーは手袋についた血を払いのけた。
「脅威を排除したわ。」
「ああ、でも彼らは人間だった。悪魔だけど、人間だった。あなたは瞬きさえしなかった。」
「彼らは盗賊だった。脅威度:即死。交渉にはマナの無駄。」
オーレリアは大きく息を呑んだ。「本当にためらわないのね?」
ルーシーは無感情に振り返った。「リリアと過ごしすぎたのね。」
オーレリアは身を硬くした。
「…つまり?」
ルーシーは馬車に向かって歩き始めた。「彼女はいつも皆を救おうとした。あなたも彼女のようになろうとする。でも私は違う。一度もそうなったことがない。」
オーレリアはかつてリリアが言った言葉を呟き、独り言を言った。
「彼女は何も気にしない。ただ実行するだけ。ただゲームへの愛のために。」
馬車の中にいた老いた悪魔の男は、この一部始終を見ていた。
彼は震え、二人の女――一人は生ける死の吹雪、もう一人は銀の鎧をまとった女神――を見て目を見開いていた。
彼はゆっくりと馬車から降り、深々と頭を下げた。「あ、ありがとう、ありがとう、ありがとう……あなたがいなかったら、私は――殺されていたところだった。」
オーレリアは彼の隣にひざまずき、手を差し出した。「大丈夫、あなたはもう安全よ。」
「もうだめだと思ったよ」彼は彼女の手を強く握りしめながら言った。 「名前はモーヴィン。ただのスパイス商人だ、本当だ。魔都へ向かう途中、あの野郎どもに襲われたんだ。」
オーレリアは耳をそばだてた。「ちょっと待て、魔都って言ったか?」
モーヴィンは頷いた。「ああ。ヴァ=レロス王国。魔界の中心。魔王自身が統治する場所だ。」
「まさにそこへ向かっている。」
老人は瞬きをした。「君…そこへ行くのか?徒歩で?」
「他に良い方法があるなら話は別だが。」
モーヴィンはくすくす笑った。「そうだな、俺の命とスパイス箱を救ってくれたお礼に、乗せてあげよう。予備の精霊獣を保管ルーンに仕込んである。少し錆び付いているが、馬車は問題なく運べる。」
オーレリアは微笑んだ。「ありがとう、モーヴィン。」
ルーシーは何も言わず、荷馬車の後ろに乗り込み、静かに座って剣を磨いた。
しばらくして、精霊獣――六本の足と深紅のたてがみを持つ、鱗に覆われた巨大なトカゲ――が、修理された馬車を引いて魔界の曲がりくねった崖を進んだ。空気は冷たくなり、空は暗くなり、遠くで何か太古のものが轟くような音が平原に響き渡った。
馬車の中で、オーレリアは窓に頭を預けた。
「…もうすぐ着くわ。」
ルーシーは返事をしなかった。
彼女はかろうじて聞こえる声で何かを呟いた。
「…リリアが持ちこたえているといいけど。」




