第148話 審判の日
二ヶ月。
リュウが普通に感じるには、それだけで十分だった。
普通すぎる。
朝の静まり返った街並み、学校の鐘、明らかに上達しているのに、上達していないふりをするアカリ、春香先生のぎこちない励まし、全く上達していないのに「通り過ぎただけ」と偽るサラ。ニャがまるで全知全能の幽霊妻のように私の後ろに立ち、現実のインフラを軽々と書き換えながら、私のコーヒーの味に口出しすることにも慣れていた。
だから、辞表を手に校長室に立った時、まさか傷つくとは思っていなかった。
でも、傷ついた。
校長は反論もしなかった。ただ長い間書類を見つめ、ため息をついて言った。
「なるほど。あなたのような人間は、一箇所に留まるべきではなかったのですね。」
春香先生は泣いた。泣きじゃくり、我慢できなかった。彼女は泣いたことを謝り続けて、それが彼女の泣き声を増幅させ、なぜか自分が最低な人間に思えてきた。
「どうして、どうして行かなきゃいけないの?私たち、本当は一緒にいられたのに。」
「わかってる。でも行かなきゃいけないの。友達も家族もみんな寂しいし、本当に、みんなと過ごした時間は楽しかった。
必ず戻ってくるわ。」私は彼女の肩を抱きしめながら約束した。「消えたりしないわ。」
彼女はうなずき、目を拭いた。「そうね。まだコーヒーの借りがあるわ。」
「ええ、世界が恋しいなんて思わないわ。」
あかりは冷静を装おうとした。
うまくいかなかった。
彼女はそこに立ち、腕を組んで目をそらし、顎が割れるんじゃないかと思うほど強く噛み締めていた。そして、彼女は崩れ落ちた。前に進み出て、私を抱きしめた。まるで、私が離れると溶けてしまうんじゃないかとでも思っているようだった。
「ああ、行かないでほしい。」彼女は震える声で言った。 「あなたは…本当に私の先生で、救世主で、友だったのに、どうしてこんな日が来てしまったの?」
私は彼女の頭に軽く顎を乗せた。
「もう私なんて必要ないのよ」と私は優しく言った。「それがすべてよ。あなたはもう自分の混沌としたエネルギーをコントロールする方法を学んだのよ。もう私なんて必要ないのよ」
「でも…」
「必ず戻ってくるわ」と私は言葉を遮った。「約束する」
彼女は私の胸に寄り添い、泣いた自分に腹を立てているかのように目を拭った。しかし彼女は微笑んでいて、それが私が求めていたものだった。彼女が頬にキスをするまでは。
私はひどく顔を赤らめ、皆が言葉を止めては話し始めた。ニャはそれが少しも気に入らなかった。サラは顔が真っ赤になり、ハルカ先生は精神的に崩壊寸前だった。アカリはニヤリと笑った。
あの事件の後、サラはすぐに私に電話をかけてきた。門は開いていた。下層域への道は、今のところは安定していた。
私たちは別れを告げた。
最後にもう一度手を振り、ポータルをくぐった――
――そしてすぐに何かを感じた。
間違っていた。
空気は重かった。汚染されておらず、穢れもしていなかった。
空虚だった。
下層領域の空は、神聖なエネルギーの傷跡で裂けていた。都市は消えていた――消えたのだ。廃墟になったのではない。まるで不正なコードのように消去されたのだ。大地そのものが審判の痕跡を刻んでいた。大陸には印章が焼き付けられ、海は分裂しては誤って繋がれ、レイラインは砕かれては無理やり繋がれていた。
私はそこに立ち尽くし、黙っていた。
「……ニャ」と私はゆっくりと言った。「私が間違っていると言ってくれ。」
彼女はすぐには答えなかった。
それだけで全てが分かった。
そして、いつもより静かな彼女の声が聞こえた。
「天界の者たちが降り立った。」
両手が握りしめられた。
「明確にして。」
「神々の最高評議会。真の神々。上位階層の大天使たちよ。」と彼女は言った。「彼らはアビサル事件の後、この領域を『不安定』と宣言した。」
胃が痛くなった。
「審判が下された。」
「…根絶?」私は既に分かっていたように尋ねた。
「ええ。」
その言葉は、これまで受けたどんな攻撃よりも強烈に心に突き刺さった。
「オーレリアはどうなったの?」と私は尋ねた。「ルナ、フレイ、ローグ、そして他の皆は。」
ニャは言葉を切った。
「抵抗したのよ。」
かすかな希望の光を感じた――
「捕らえられたのよ。」
世界は静まり返った。
連れ去られた。
死んではいない。
連れ去られた。
「彼らは天界へと運ばれたのよ。」ニャは続けた。「創造と破壊は不在だった。どちらも源流で高層崩壊を修復していたのよ。」
私は笑った。
うまく言えなかった。壊れていた。鋭い。
「それで。」私は空虚な声で言った。「神々は大人たちが家にいないまで待ったのね。」
「ええ。」
私は遺跡を見渡した。
人々が暮らし、笑い、戦い、生き延びた場所を。
裁判もなしに裁かれた領域を。
私の中で何かが割れた。
爆発的にではなく。
きれいに。
スイッチが切り替わるように。
「私は一人ぼっち」と私は言った。
ニャは即座に答えた。「あなたは…じゃない」
「私は一人ぼっち」と私は繰り返した。「それでいい」
その時、私はそれを感じた。
力ではない。
決意。
澄み切った、冷徹な、絶対的な。
「彼らは私の家族を奪った」と私は言った。「都合が悪いという理由で、彼らは一つの領域を消し去った。彼らはそれを秩序と呼んだ」
私の呼吸はゆっくりとした。
落ち着いた。
「彼らは間違いを犯した」
ニャはためらった。「女王様…あなたの感情の状態は…」
「私は自分が何をしているのか、よく分かっています」
怒りは激しいものではなかった。
それは集中していた。
神を切り裂くほど鋭かった。
「私は現実を書き換えるつもりはない」と私は言った。 「彼らを存在から抹消するつもりはない。」
私は見上げた――空を、天空を、そして神性の幾重にも重なる傲慢さを。
「天界へ足を踏み入れる」と私は静かに言った。
「そして民を引き戻す。」
ニャは黙り込んだ。
それから、そっと。
「そして神々は?」
私は微笑んだ。
冗談などなかった。
「彼らを殺す」と私は言った。
「必要なら素手で。」
風が唸り声を上げた。
空の傷跡が震えた。
遥か上空のどこかで、何かが気づいた。
よし。
そのままにしておけ。
審判はすでに一度下されたのだから。
今度は私の番だった。




