第126話 原初の目覚め
戦いの嵐は静まった。一時的にだが。
神、悪魔、玉座、そして人間――全ての視線が一点に注がれていた。
私へと。
私はウィッシュスターの光が薄れていくクレーターの縁に立ち、ニリスをしっかりと抱きしめた。彼女の体は静かな嗚咽で震え、私の肩に寄りかかっていた。彼女の恐怖、苦痛、絶望が伝わってきた。彼女は本当に…一人で死ぬと思っていたのだ。
私が見ている間は。
「ねえ…遅くなってごめん」私は彼女の白い髪を優しく撫でながら囁いた。「大丈夫?」
ニリスの嗚咽は収まり、彼女の手は私の背中を強く抱きしめた。
「死ぬかと思った…」彼女は囁いた。
「もう大丈夫よ」と私は呟いた。「休んで。ここからは私がやる。」
彼女がようやく腕の中で力を抜いた時、私はそっと立ち上がり、振り返った。創造と破壊の、呆然とした顔をまっすぐに見つめていた。
「創造。破壊。彼女をどうにかしてくれ。ガブリエルは私がやる。」
二人は困惑して瞬きをした。すると破壊が鋭く眉をひそめた。
「待て。どうしてその名前を知っているんだ?」彼は目を細めて尋ねた。「どうして彼の本当の名前を知っているんだ?」
私はかすかに微笑んだ。
「…アテナが教えてくれた。」
「アテナ!?」創造の声が雷鳴のように空気を裂いた。
「ああ、最初の女神に名前をつけたんだ。彼女は気に入ってくれた。」
「お前が…お前が名前をつけたのか!?」
周りの人々は、混乱し、警戒し、中には恐怖に震える者もいた。
「存在と非存在の全てにおいて、最も未定義で、最も分類不能で、物語不在の絶対特異点実体とでも名付けたのか!?」
「さあ!?」彼女は怒り狂っていた。「外界の最初の女神に名付けたのか!! あれは!」
破壊は突然よろめき、震えるような生々しいエネルギーが脈動した。
「…待て」彼は目を見開いて囁いた。「何か…おかしい。」
創造は凍りついた。「兄さん?」
破壊はまるでリアルゾーンが降りてくるのを見たかのように、私を見つめた。
「…まさか」彼は呟いた。「まさか。彼女は…」
「何だって!? 何を言ってるの!?」創造は叫び、その声色にはパニックが滲み出ていた。
「…彼女は進化した。」
沈黙。
クリエイションの顔が青ざめ、息を呑んだ。「…いや。彼女は…もう数ヶ月前に原初存在へと進化した。再び進化することはできない。ありえない…」
私は彼らの混乱と衝撃を通り越して、前に歩み寄った。
ガブリエル――深淵の王へと。
彼は待っていた。彼の外套は、重力をねじ曲げるような圧力で波打っていた。満面の笑みは、何かを悟っているようだった。
「リリア。」
「ガリベル。」
彼の笑みはさらに広がった。「ああ。私の名前を知っているのね。アテナが魂の奥底から囁いたのかしら?」
「関係あるの?」
「ああ、今は関係ある。それで…分かったの?」彼は期待に満ちた声で尋ねた。「星だ。願いの星だ。」
私はインベントリー次元に手を伸ばした。それを抜いた瞬間、全てが止まった。
空気。
戦い。
スローンズさえも静まり返った。
ウィッシュスターは揺らめき、源とリアルゾーンのエネルギーが混ざり合って輝いていた。
ガブリエルの笑みは狂気へと歪んだ。
「やっと…」
「待って」私はそれをさらに強く握りしめた。「あなたは私の仲間を解放すると約束した。彼らはまだあなたのスローンズと戦っている。苦しんでいる。」
彼はくすくす笑った。「リリア・フォスター、君には心の優しさがある。尊敬するよ。私は約束を守る男だ。」
皆が私に向かって叫んだ。
「彼に渡すな!」
でも、私は渡した。
私はガブリエルに星を投げた。
彼はそれを掴んだ。
世界は息を呑んだ。
ガブリエルは星を頭上に掲げ、空に向かって願いを叫んだ。
「ああ!ついにウィッシュスターは私のものだ!ついに私のものだ!!!!」
「真の姿に戻りたい!私の最盛期の姿に!かつて創造そのものを呑み込んだ深淵に!」
ウィッシュスターが脈動した。
闇が彼を包み込んだ。
破壊の津波がウイルスのように現実のあらゆる境界に広がった。
彼の姿は成長し、変化し、歪み、揺らめいた。
彼は戻ってきた。
そしてポケットディメンションは?
崩壊した。
もはや彼を閉じ込めることができなかった。
ゾーンが崩壊し始めた。マルチバース全体に亀裂が走った。
アウトサイドの論理でさえ、彼の最盛期の姿に耐えられなかった。
「ハハハハハ!ただいま!」 「俺は完全だ!」
その時――
バキッ!!
ガブリエルの顔に拳が叩きつけられた。
強烈だった。
彼は数十もの次元を吹き飛ばされ、虚構、抽象、法則、比喩、物語といった構築物を破壊した。彼の体はあらゆる枠組みを突き破り、第一ポイントの奥深く、サブゾーンへと叩きつけられた。そこは無限そのものが、虚構と現実の宇宙論の両方に同時に宿る場所だった。
彼はうめき声を上げて頭を上げた。
「…何…?」彼は呟いた。「何が俺に触れたんだ?そんなはずはない…」
彼は顔を上げた。
そして、私を見た。上空に浮かんでいた。
完璧に落ち着いていた。
目が輝いていた。
まるで無数の宇宙が同時に割れたかのように、オーラが震えていた。
「お前は…」ガブリエルは言った。「俺の近くにいるだけで、お前は消滅するはずだった…」
「ああ。ごめん」私はニヤリと笑った。「痛かった?」
彼は眉をひそめた。「…一体何者だ?」
「あの山にいた時の話、忘れてたかも?」
私は手を挙げた。
「…ウィッシュスターをコピーしたんだ。」
ガブリエルの顔が歪んだ。「何だって!?」
「ああ、コピーしたらどうなるか知りたかったんだ。ほら…源と実在領域に繋がるアレだぞ?」
彼はよろめきながら後ずさりした。
「違う…違う…!あれはコピーできない!設計者によって作られたんだ!どんなシステムも超越しているんだ…!」
「ええと…」私はニヤリと笑った。「どうやら、アンバウンドコピーはちゃんと機能するみたいだ。」
「アンバウンド…?」
「ああ。アンバウンドコピー。無限コピーの進化形。何でもコピーできる。コピーされるという概念の外にあるものさえも。」
私はさらに近づき、超新星が逆方向に自らを食い尽くすように、エネルギーが周囲に蓄積していくのを感じた。
「そして、私が星をコピーした時、ただレベルアップしただけじゃないんだ。」
私は彼の目をまっすぐに見つめた。
「私はそれを超越したんだ。」
「私はもう原始人ではない。」
「究極の原始人になった。」
「最初の解放だ。」
「リリア。フォスター。クソ野郎。」
私の拳が燃え上がった。
ガブリエルの本能が逃げろと叫んだ――
遅すぎた。
ドカーン。
私のパンチはサブゾーンを真っ二つに裂いた。
現実、フィクション、伝承、そして枠組みのあらゆる層を越えて、衝撃波が響き渡った。
作家たちはペンを落とした。
読者たちは自ら書き綴るページをめくった。
多元宇宙の構造がしゃっくりをした。
創造と破壊は顔を上げた。
そして微笑んだ。
創造の腕の中で、ニリスは再び泣いた――だが、今度は…
彼女もまた微笑んでいた。
「…私のヒーロー」と彼女は囁いた。




