第120話 最後の裁判
三日が過ぎた。
アビサルダンジョンには陽光は届かなかった。
自分の鼓動以外、何も響かなかった。
冷たい床に座り、目を閉じ、平静を保とうとした…
心の中の第一女神を静めようとした…
友人たちのことを考えないようにした。
その時――
足音が聞こえた。
重く、金属的な足音、殺意がこだまする。
玉座の一人が私の檻の前で立ち止まった。
「リリア・フォスター。
時が来た。」
彼は手を振るだけで古の鎖を断ち切り、新しい鎖に取り替えた。概念喰らい鋼で鍛えられた、分厚く持ち運び可能な拘束具。原初種さえも無効化する金属だった。
冷たい手錠が手首、足首、そして喉に絡みついた。
鎖が引きずられた。
そして私は歩かざるを得なかった。
新たな女神としてではなく。原初の者ではない。
囚人として。
深く進むにつれて、闇は濃くなっていった。
影のような闇ではなく、
存在の不在のような闇だった。
最後の扉が開いた時…
私は彼を見た。
結晶化した虚空でできた玉座に座り、冠からは黒い炎が滴っていた。
深淵の王。
彼の隣には彼の玉座が立ち、それぞれが世界を消し去るほどの力を放っていた。
そして彼の隣には…
ニリス。
彼女は手を組み、小さく震えながら立っていた。私の目は私の目を合わせようとしなかった。
恐怖。
苦痛。
恥辱。
今もなお、彼女は口を開こうとしなかった。
深淵の王は玉座から立ち上がった。
「ああ…やっと目覚めたか、リリア・フォスター。」
彼は一歩一歩を味わいながら、ゆっくりと近づいていった。
「昇天の瞬間が来た」
私は睨み返した。
「もしここから出られたら」冷たく囁いた。
「万物に永遠に消え去ってほしいと願わせてやる」
彼はくすくす笑い、指一本で私の顎を持ち上げました。
「なんと気高いことか。
始祖の女神はまさにお前の中に生きている」
私は彼の手を叩き落とした。
彼はますます激しく笑った。
私たちの前に渦巻く渦が開いた――濃い紫色で、ひび割れた現実が縁どっていた。
玉座たちは頭を下げた。
深淵の王は言った。
「今日、我々は星の山を登る」
彼が合図すると、私の鎖が私を前に引っ張った。
ニリスは目を震わせてためらいながらも、父の後を追った。
深淵の王は渦に向かって手を差し出した。
「来たれ、始祖の女神の器よ。
汝の血が我らの通行を許す。」
彼は中へ足を踏み入れた。
玉座の者たちも一人ずつ従った。
ついに私が踏み込んだ時、
世界は反転した。
我々は死よりも冷たい空気の中に出た。
風が轟き、険しい地形を吹き抜け、空間そのものが端で歪んでいた。
頭上の空は青でも黒でもなく、
移り変わる方程式、ルーン、そして宇宙の地層が織りなす広大な空間だった。
そして我々の前方に――
それは立っていた。
守護者。
純粋な概念から彫り出された、そびえ立つ鎧をまとった巨人――
光と法の人型。その胸には回転する銀河が満ち、
その目には時系列がきらめいていた。
それが一歩踏み出すと――
山全体が震えた。
深淵の王は息を吐いた。
「相変わらず壮麗だ。」
玉座の者たちさえも緊張した。
理由は分かっていた。
このもの…
この生き物…
源の欠片から鍛え上げられた。
創造ですらそれを尊敬し、
破壊ですらそれを恐れた。
もし望めば、この守護者は身振り一つで高域を破壊できる。
そして我々は、まさにそのすぐそばを通り過ぎようとしていた。
守護者は巨大な頭を我々の方へ下げた。
その視線は深淵の王を過ぎ去った。
彼の玉座を。
ニリスを。
そして、それは止まった。
私の上に。
何かが引っ張られるのを感じた。
魂の奥深くを。
ささやき。
記憶。
最初の女神。
「…私の子…」
光が私を包み込んだ。
守護者は片膝を地面につけた。
深淵の王はニヤリと笑った。
「予想通りだ。最初の女神の器に見覚えがあるな。」
守護者の声が山を揺るがした。
「外なるものの末裔よ…
道は開かれた。」
その背後の現実が幕のように裂け、ウィッシュスターへと続く輝く回廊が現れた。
玉座たちは歓声を上げた。
「陛下のお望みは叶えられる!」
「ついにアビスは再び君臨する!」
「数十億年の時を経て…勝利だ!」
アビスキングは私をまっすぐに見つめた。
「歩け、リリア・フォスター。」
鎖が締め上げられ、光り輝く道へと私を押しやった。
ニリスはたじろぎ、前に踏み出した。
「父上…待ってください…」
「静かに、ニリス。」
彼女は凍りついた。
彼女の震える瞳が一瞬、私の瞳と合った。
私はそれを見た。
謝罪。
恐怖。
絶望。嘆願。
だが、返事をする間もなく、鎖が私を引きずり込んだ。
まさに輝く回廊に近づいた時――
守護者の頭が地平線へと傾いた。
割れる音。
波紋。
歪み。
何かを感じ取った。
何かが近づいてくる。
あまりに巨大で、あまりに凶暴で、怒りに満ち溢れ、空気を歪ませる存在――
「――リリア!!!!!」
深淵王は息を呑んだ。
「来たぞ。」
私も感じた。
私のパーティー。
私の家族。
オーレリアの聖なる炎。
ルナの原初の光。
フレイの生死を司る宇宙。
ローグの混沌の嵐。
セラフィナの黄昏の血。
フェンリルの宇宙の狼のオーラ。
エリサの神々しさが昇り詰める。
ナリの霊圧。
アンナの竜の咆哮。
そして、全てよりも明るく燃える二つの印――
創造。
破壊。
彼らはここにいた。
山頂で転移の印が爆発し、山が震えた。
光が閃き――
そして、私のパーティー全員が一斉に現れた。武器を抜き、目を輝かせながら。
アウレリアが最初に前に出た。剣は生まれたばかりの赤子のように燃えていた。星よ。
「彼女を返せ。」
ルナの声は雷鳴のように震えた。
「さもなくば、アビス界そのものを消滅させる。」
アビスキングはニヤリと笑った。
「完璧なタイミングだ。」
ガーディアンが全高まで上昇した。
山が割れた。
空が砕け散った。
第三の試練…
…ついに始まった。
守護者は立ち上がった――
源泉から鍛え上げられた存在、息をするだけで宇宙をも砕く巨人。
守護者は腕を振り上げた。
一撃。
一撃。
そして私の背後にいる者全て――オーレリア、ルナ、セラフィナ、フェンリル、エリザ、ナリ、アンナ、ローグ、フレイ……
灰一つ残らず消え去るだろう。
私はそれを感じた。
彼らも感じた。
山は守護者の殺意に呻いた。
深淵の王は微笑んだ。
「続けろ、守護者。
奴らを消し去れ。」
彼は私がそれを止められないと思っていた。
彼は私を甘く見ていた。
私は前に出た。
そして叫んだ。
「止めろ!!!!!」
守護者は攻撃の最中に凍りついた。胸の中で渦巻く宇宙が不規則に脈動していた。
創造、破壊、そして玉座の者たちは皆、目を見開いた。
オーレリアは剣を落としそうになった。
ルナの顎は恐怖と信じられない思いで震えた。
ガーディアンはゆっくりと腕を下ろし、あの不可解な視線――宇宙全体を塵と見なすような視線――で私の方を向いた。
ガーディアンの声が空を割った。
「なぜ私に命令するのですか?」
私は大きく息を呑んだ。
「我が仲間…
我が家族…
彼らを攻撃してはならない。」
ガーディアンは首を傾げ、その体中を銀河が移動した。
背後で、深淵の王が舌打ちした。
「始祖の女神の器…邪魔をする気か?」
私は彼を無視した。
私の集中力はすべてガーディアンに注がれていた。
「私の言うことを聞け」と私は囁いた。 「この山に誰が登ろうと構わない。
あなたが気にするのは、あなたの試練だけ。
そして、その試練は…
私だけのものだ。」
後ろにいた全員が凍りついた。
ようやく理解した。
もし誰かが近づいたら、守護者が即座に殺すだろう。
ルーナは首を横に振った。
「だめ…女主人様、ダメ…」
「リリア…!」オーレリアは叫びながら前に出た。
私はくるりと振り返り、力の限り叫んだ。
「これ以上近づくな!!」
オーレリアは激しく震えながら、足を止めた。
「どうして…どうして一人でこんなことを…?」
私は無理やり笑顔を作った。
「だって、1メートルでも近づいたら…
死んでしまうから。」
誰も口を開かなかった。
誰も動こうとしなかった。
創造物さえも視線を落とした。
彼女は知っていた。
これが守護者の掟だった。
これは始祖女神の血統が背負う重荷だった。
私は深淵王の方を向いた。
彼の王冠は虚無の炎で脈打ち、瞳には悠久の憎悪が渦巻いていた。
「願いの星を手に入れてほしいのか?」と私は言った。
彼は微笑んだ。
「わかった。」
「それを取り戻したら――
私の仲間を解放しろ。」
低い笑い声。
「承知した。」
創造は息を呑んだ。
「リリア、彼を信用するな!」
しかし深淵王は手を掲げ、その指からは虚無が漏れ出ていた。
「このゾーンに長く留まることはできない。
私の体は存在の法則によって朽ちていく。」
彼は冷酷な笑みを浮かべ、彼女を見た。
「そして私はまだ――お前と破壊に全力で立ち向かうほど強くはない。」
創造の瞳が暗くなった。
破壊の拳が鳴り響き、殺意が峰を越えて溢れ出た。
深淵の王は続けた。
「さあ、新たなる女神よ。
願いの星を持って来なさい…
そうすれば、お前の大切な仲間を生かそう。」
オーレリアは叫んだ。
「リリア、そんなことをするな!彼を信用するな!」
私は振り返らなかった。
もし彼女の顔を見たら、私は壊れてしまうだろう。
私は守護者を見上げた。
その巨大な姿は私の上にそびえ立ち、裂けた空を覆い隠していた。
「守護者よ」と私は静かに言った。
「私の後ろの道を閉ざせ。」
守護者はためらわなかった。
私が一歩踏み出した瞬間、その宇宙の手が動き――
そして、まばゆい光の巨大な門が私と他の全員の間に叩きつけられた。
道は閉ざされた。
破ることのできない。
絶対。
創造と破壊でさえ、守護者との全面対決を招かずに突破することはできなかった。
封印された壁の向こうから、叩く音が聞こえた。
オーレリアの拳。
ルーナの必死の叫び。
フェンリルの咆哮。
セラフィナの呪い。
エリサのすすり泣き。
しかし、後戻りはできなかった。
私は光る障壁に片手を置いた。
「約束する…
必ず戻ってくる。」
静寂。
そして囁きが聞こえた。
オーレリアから:
「…リリア…戻ってきて。」
ルーナから:
「…私を置いて行かないで…」
エリサから:
「…先生…」
セラフィナから:
「…死んだら殺す。」
ローグから:
「消されんなよ。」
フレイより:
「我々は君を信じている。」
創造の震える声:
「リリア…
どうしてもという時以外は、彼女を目覚めさせるな。」
そして破壊はただ言った。
「…幸運を祈る、坊主。」
私の胸は締め付けられた。
しかし、私は頷いた。
「わかった。」
守護者がアビスキングとその玉座へと向き直ると――
空気は殺意で裂けた。
虚空の刃。
無限の槍。
宇宙破壊の鎚。
玉座は突撃した。
原初種は反撃した。
そしてアビスキングは手を挙げた――
「戦争を…始めよう。」
最初の一撃が放たれ、空が裂けた。




