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新しい女神  作者: ジュルカ
星の山の弧

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第113話 私の中の真実

夜が、世界をやさしく包み込んでいた。


カラハウスの中では、

日中の混沌と修行、そして“ほぼ宇宙規模の混乱”を乗り越えた面々が、

静かに眠っていた。


創造は「また下層界を沈める前に破壊の様子を見てくる」と言って、ソースの宮殿へと戻っていた。

永遠は私のベッドで光る猫のように丸まりながら、リサ(私のカオスな分体)を抱いて寝ていた。

しかも、リサは枕扱いにされていることに、まったく不満がないらしい。むしろ快適そうだった。怖い。


――すべては、静かだった。


――すべては、穏やかだった。


……私の頭の中を除いては。


私は夜の風にあたるために外へ出た。

霜が降りた野原に星が反射している。

吐息が、白くやさしく空へ溶けた。


そして――


久しぶりに、ずいぶん久しぶりに――


「自分が“小さい”と感じた。


弱い、ではない。

ただ、小さい。


私は野原の外れにある岩に座り、空を仰いだ。


「……俺、なんでここにいるんだろうな……」


ぽつりと呟く。


かつての私は、

ただの人間だった。

オタクだった。

アニメ議論と漫画マラソンと“どの宇宙存在がどの世界をソロできるか”について語り合うのが趣味の、

普通の男だった。


それがすべて。


……で、死んだ。


そして、彼女が現れた。


“あの女神”。


すべてを知っているような微笑みを浮かべて。

“パーフェクト・コピー”を飴玉でも渡すかのように私へ差し出し、

AI付きで異世界にポンッと送ってきた。

あたかも「そこにゴブリンが待ち構えてる」なんて知らないかのように。


あの頃の私は、弱かった。

確かに――不死、無限マナ、可愛い神体。

でも、本当に大切な意味での「強さ」は、何もなかった。


何も知らず、すべてを恐れ、

スキルをコピーするしか、生きる手段がなかった。


けれど、戦って、

傷ついて、

耐えて、進んで――


私はこうなった。


原初となり、

新たな女神となり、

第一女神の器と呼ばれる存在に。


……そして今、私は恐ろしい真実に気づいた。


第一女神が「パーフェクト・コピー」を私に渡せるはずがなかった。


そんなものを渡せる存在なんて――


無限で、

境界なく、

ソースより古く、

存在の起源そのものを上書きできるような、

“外側の存在”。


つまり、


第一女神、そのもの。


寒気が走った。


「……まさか……彼女が……本当に……?」


でも、すべてが繋がる。


あのスキル。

進化の時、私の中で響いた“別の声”。

直感、変化、予言、器という言葉。


……そして、あの瞬間。


私の体が、“私じゃない声”で話したとき――


ごくりと喉が鳴る。


「……確かめないと」


私は目を閉じた。


意識を、沈める。


もっと深く。

もっと奥へ。


魂と存在が交わる場所へ。


私の神性が眠る場所へ。

“真実”が眠る、その核心へ。


光がねじれ、空間が反転した。


そして目を開けたとき、

私は別の世界に立っていた。


銀の空の下に広がる、無限の野原。

空には、私の記憶の断片が浮かび、

地平線には本棚が連なり、私の知識を抱えていた。

遠くには、感情が山の形をして佇んでいる。


私の心――魂が“世界”として存在していた。


「……ここが……俺の魂の中か」


歩き出す。


足元の大地が、私のマナで微かに震えていた。


そして、目に入った。


――一軒の家。


小さな、質素な木造の小屋。

この幻想的な空間には似つかわしくない、あまりにも現実的で、静かで、平和な場所。


胸の奥が、ひねられたように痛む。


「……あれは、あるはずがない……」


それでも、私は近づいた。


一歩、また一歩。


空気が重くなる。


そして――


GROOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAR――!!


現実が裂けたような轟音が、背後から襲った。


振り返った。


そして、凍りついた。


巨大な白い狼。


山を覆い隠すほどの巨体。

崩壊寸前の恒星のように輝く金色の瞳。

銀河のようにきらめく毛皮。

宇宙の死よりも冷たい吐息。


時そのものよりも古い存在。

神にも、魂にも存在してはならないモノ。


「……冗談だろ……」


狼が頭を低く下げ、

唸り――


突進してきた。


「うわああああああああ!!」


私は飛びのき、星を割るほどの巨大な爪が大地をえぐる。


魂の大地が震え、風が吠え、私の鼓動が耳を打つ。


これは怪物じゃない。


原初そのもの。

起源に結びついた何か。


狼は睨み、骨まで震える唸り声を上げた。


私は手を上げた。


「ちょっと、話し合いってでき――」


SWIPE――!!


爪が振るわれ、私は転がって回避。

頬が裂け、火花が舞った。


「は、話し合い不可ってことね!?!?」


私は剣を召喚した。


《シンギュラリティ・エッジ》。


剣を振るうと、現実がねじれる。


CLASH――!!


狼が尻尾で受け止め、私は数十メートル吹き飛ばされる。

冒険初日の記憶構造を突き破り、ガラスのように砕けた。


「ぐっ……!」


咳き込みながら、私は理解する。


こいつは今までのどんな敵よりも強い。

ザックよりも、いや、創造すら警戒する存在だ。


「……お前、何なんだよ……」


狼は再び咆哮した。

空が砕ける。


そして――跳んだ。


思考よりも速く。

因果よりも速く。


「ニャ、分析――!!」


……応答なし。


そりゃそうか。


私は呼吸を整え、苦笑した。


「よし。やる気なんだな……」


剣を構える。


「なら――受けて立つ!!」


狼が降下してくる。

爪が空間を歪め、

その力は新しい宇宙の誕生のように輝く。


そして、


魂の世界が、激しく揺れた。

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