第11話 神を超えた神
教会の壁が再びガタガタと音を立てた。天井から埃が舞い上がり、ろうそくが倒れ、ステンドグラスが震えた。
エルダー・タイタンが近づいてきていた。
私は光る手をこめかみに押し当て、髪が抜けそうになった。「ちくしょう!一体どうやって新しいスキルが使えるんだ!?」
メニューが目の前で点滅し、次々と名前を並べ立てて私を挑発した。
神の権威
聖なる領域
神の声
クールな名前ばかり。文脈は全く不明。
「ああ、その美的感覚に感謝するよ、システム!」私は空に向かって叫んだ。「でも、もっと詳しく教えてほしいんだ、ちくしょう!」
ニャのちび猫の顔が現れ、尻尾を静かにピクピクと動かした。
[リクエストを検知:新しく習得したスキルの説明]
「ああ、ありがとう。聖なるジャムに踏み潰される前に説明して!」
地面が激しく揺れ、轟音が街路に響き渡った。外の人々は悲鳴を上げた。
ニャは瞬きをした。
[スキル:聖なる権威]
信仰に基づく魔法と聖なるエネルギーに対する絶対的な支配権を得る。プリースト、パラディン、その他の聖なる術者は、あなたの下位に位置付けられる。あなたは彼らの奇跡を無効化、吸収、あるいは無効化することができる。
私は凍りついた。「…つまり、私は今や…宗教のボスみたいなものなの?」
[正解だ。]
「ああ、なんてこと…」と私は呟いた。
揺れはますます大きくなった。エルダー・タイタンは、ステンドグラスの窓に影を落とすほど近くにいた。
「さて、次はどうなるんだ?」
[スキル:聖なる領域]
あらゆる聖なるエネルギーがあなたの意志に従う領域を確立する。敵は抑制を受け、味方は祝福を得る。領域内の現実はあなたの権威に適応する。
私は素早く瞬きをした。 「…待って、つまり文字通り自分の宗教バブルを作れるってことか?」
[肯定。範囲はマナ出力に応じて調整可能]
「一体どういう意味だ!?」
外の轟音は耳をつんざくほどに大きくなった。タイタンが街の外壁を越えると、突風が教会を吹き抜けた。
「わかった、わかった。最後のはどうなるんだ?」
[スキル:神々の声]
神々の完成された権威を導き出す。世界そのものに命令を下すことができる。機能例:
神々を召喚する。
奇跡を起こす。
神の法則を書き換える。
唾を吐きながらむせた。「待って、待って、下がって。今、神々を召喚できるって言ったの?」
[肯定]
教会全体が激しく揺れた。石が割れ、司祭たちが通りで叫び声を上げた。
私はニャの光るアイコンを両手で掴み、ストレスボールのように振った。「じゃあ、できるかどうか教えて。今すぐ!もし『神の声』って神の援軍を呼べるって言うなら、あの生い茂った天界のシュレックが、この教会をおもちゃのブロックみたいに蹴飛ばす前に、本当にできるのか確かめなきゃ!」
ニャの目が一度、二度瞬いた。テーブルからグラスを落とそうとする猫のように、落ち着いていた。
[確認:神の声は神々を召喚できる。成功確率:87%。神格を超える何かを引き寄せる確率:12%]
膝がガクガクしそうになった。 「…神格を超える?!一体どういうこと――」
外の轟音がステンドグラスを粉々に砕いた。
「もういい、どうでもいい!」私は叫び、ひび割れた大理石の床に手を叩きつけた。私の声は雷鳴のように響き渡った。
「もしこのスキルが効くなら、効かせてやる!神の声――発動!!」
私が叫んだ瞬間、世界は止まった。
教会だけではない。街だけではない。
宇宙全体が。
轟音を立てていた巨人は歩みの途中で凍りついた。外の鳥たちは空中で立ち止まり、翼は絵画のように宙を舞っていた。落ちてくるステンドグラスの破片さえも、星のようにきらめきながら、微動だにしなかった。
息が詰まった。「…一体何をしたんだ?」
その時――光。
まるで魂が剥がれ落ちるかのような、まばゆい閃光。その圧倒的な圧力は、私が存在すら知らなかったあらゆる領域を貫いた。定命のもの、神聖なもの、神秘的なもの――それは問題ではなかった。誰もが、どこにいても、その光を感じることができた。
そして…彼女が現れた。
一人の少女。
宇宙の糸のようにきらめく金髪のツインテール。身長はわずか4フィート5インチ(約143cm)。小柄で人形のように、脆そうな容姿だった。
なのに…
彼女の足が大理石の床に触れた瞬間、時空の概念全体が彼女を取り囲むように歪んだ。まるで現実が待ち望んでいた軸のように。
私はよろめきながら後ずさりした。「…私…今…クーデレを召喚したの?」
彼女はうつろでロボットのような目で私たちを見た。感情も温もりもない。ただ存在するだけ。まるで彼女自身が現実の法則に形を与えたかのようだった。
冒険者たちはたちまち震え、膝をついた。並外れた神官娘であるセレーネでさえ、彼女の前には息もできないほどだった。
そして私は?私はパニックに陥り、ニャの方を向いた。
「ニャ。誰…いや、一体何だ…これは!」
ニャの猫アイコンが、いつものように穏やかにちらりと視界に入った。
[識別:召喚存在=時空の女神]
私は顎が外れそうになった。「ちょっと待て――何だって?!」
[分類:神域超越]
「神域超越?!一体どういう意味だ?!」
ニャは瞬きをした。
[つまり、彼女は単なる神ではない。次元の外、時空を超え、現実そのもののあらゆる層の上に存在しているということだ。]
私は息を詰まらせた。「…おい、何だって?一体。」
金髪ツインテールの少女はゆっくりと首を傾げ、クーデレの視線を私に釘付けにした。
ほんの一瞬、私はそれを感じた。無限の圧倒的な重み。言葉にすら収まらない存在。
それでも、彼女は口を開いた。
柔らかく単調な声。穏やかで空虚な、まるで機械が真実を朗読しているかのようだった。
「…お前が呼んだんだ。」
胃が膝まで落ちそうになった。「わ…そんなつもりじゃなかったの!死なないようにしてただけ!聖騎士か鳥神か何か召喚しようと思ったのに…まさかこんな…違う!」
彼女の目が一度、ゆっくりと瞬いた。「…じゃあ、命令は何?」
私は凍りついた。外の巨人が再び咆哮し、その反響が凍りついた静寂を破った。髪が逆立った。
「…ああ、なんてこと」と私は囁いた。「…存在してはいけないものを召喚しちゃった。」
ニャの尻尾が視界の中で揺れた。
[訂正:あなたは彼女を召喚しただけじゃない。召喚という行為を完璧にこなした。これがその結果だ。]
私は静止した虚空に向かって叫んだ。
「ちくしょう、ニャ、私はただ助けが欲しかっただけなんだ。存在を壊したくなかったんだ!!」