第101話 地獄のトレーニング
私は死んだ。
また死んだ。
またまた死んだ。
そのまたまたまた死んだ。
そのまたまたまたまた死んだ。
……一兆回を超えたあたりで数えるのをやめた。
創造は“普通の相手”みたいには戦わない。
彼女の攻撃は“動かない”。
ただ存在する。
原因の前に生じ、結果の後に現れる。
宿命そのものと殴り合ってる感じ。
息を吸った瞬間――
ズバッ。
存在が真っ二つ。
考えた瞬間――
ドンッ。
魂がほぐれる。
瞬きをした瞬間――
バキン。
身体が概念の塵になる。
逃げようとした瞬間――
消滅。
私は“私”でなくなる。
そして創造が指を鳴らし、
――復活。
また最初から。
「クリエイション――これ完全に児童虐待だからァァ!!」
「深淵の王を倒したいのでしょう?
ならば“生存不可能”を生存しなさい。
……はい、もう一回」
そしてまた殺された。
他のみんなの地獄も進行中
訓練場の別エリアでは、他の仲間たちも例外なく死んでいた。
ローグ vs ダリウス&ロナン
ダリウスは山に叩きつけられ、
ロナンは逆転した重力に引きずられて空へ打ち上げられる。
ローグが手を叩くと――
ドゴォォォォン!!!
崩壊する小宇宙の大津波が二人を直撃。
「さぁ行けよ、坊主ども!!
早く半神になれ!
弱いのはマジで“ダサい”からな!!」
「俺たちこんなの聞いてない!!」
爆発。
また死んだ。
フレイ vs カエル、セレーネ、リラ
フレイは巨大な魔龍“マニア”の背に座り、優雅に微笑む。
“全ての魔力の集合体”がその龍だ。
カエルは命からがら逃げ回り、
セレーネの聖域は腐食し、
リラの矢は空中で溶ける。
マニアが尻尾を小さく振る。
ドガァァァン!!
三人は霊子レベルで蒸発。
フレイが指を鳴らす。
はい復活。
震えてる。
泣いてる。
生きてる。
「もう一回〜♡」
ルナ vs アウレリア
アウレリアは全力で斬る。
ルナは歩きすらしない。
空間が折れ、
時間が反転し、
因果が歪む。
ルナがちょん、と指で触れるだけでアウレリアは赤子に。
別の一撃で元に戻り、
その次で塵にされ、
また蘇生。
アウレリアは汗だくで震えているが……折れない。
「さぁアウレリア。
リリアを守りたいなら、
“自分”を越えなさい」
アウレリアが叫ぶ。
「越える!!」
直後、ルナに消された。
永遠 vs アニー&ナリ
永遠が永遠を解き放つ。
無限の未来。
無限の分岐。
無限の自己。
アニーとナリは“脳内”で永遠に叫び続けている。
「ム、無理ぃ……!」
アニーの竜魂が暴走。
「や、やめてぇ!!」
ナリは精神が多次元に裂ける。
永遠はニコニコ。
「すっごーい♡
じゃ、もう一回!」
エリサ vs 銀河怪獣
エリサは走る。
永遠のペット怪獣――“ねじれ銀河生命体”が追う。
一撃で現実が家具サイズに破壊される。
「なんで私こんなのと戦ってんの!?!?」
「真なる神になりたいんでしょ〜?」
永遠が遠くから応援。
エリサは転ぶ。
怪獣が咆哮。
防御結界を張る。
紙みたいに砕ける。
そして潰された。
永遠が指を鳴らして蘇生。
繰り返し。
フェンリル vs 氷狼軍勢
フェンリルは一匹倒す。
十匹増える。
走る。
倍速で追われる。
吠える。
もっと吠えられる。
フェンリルは死んだ。
狼たちは元気。
セラフィナの精神修行地獄
セラフィナは瞑想。
内面世界で“本当の吸血鬼”である自分と向き合っていた。
静かに、強く、狂暴。
もう一人の彼女が嗤う。
「進化する資格があるのか……?
それとも跪くか?」
セラフィナが牙を剥く。
「私は誰にも跪かない。
自分自身にすら」
激突。
私の地獄は続く
私はいまだにスピードランみたいな勢いで殺されていた。
創造が指を弾く。
《消滅 → 復活》
《消滅 → 復活》
《消滅 → 復活》
呼吸できない。
思考できない。
魂が毎秒書き換えられている。
ニャの声が震える。
【警告:魂の安定度 — 臨界】
【警告:存在定義の崩壊】
【警告:概念侵食、間近】
私は叫ぶ。
「どうやって勝つのよアンタに!?!」
創造は移動なしで“背後に現れた”。
「勝つ? いいえ。
勝つ必要はありません。
──生き残りなさい」
そしてまた殺された。
痛みは肉体を超え、
精神を超え、
概念すら超えた。
それでも――
私は立った。
震えながら。
エネルギーを流血みたいに漏らしながら。
でも生きていた。
創造が首を傾げる。
「まだ諦めないのですか?」
「うん……守れるくらい、強くなるまで……絶対に」
創造が微笑む。
「なら、目覚めなさい。
あなたの中で眠っていたものを。
私にも予測できない“あなた自身”を」
世界が止まる。
ニャが叫ぶ。
【警戒!!】
【警戒!!】
【不可避進化 — 発動】
【ユーザーが限界を超えて進化しています】
え?
何が……?
見えた。
“道”が。
可能性が。
無限に枝分かれする未来。
過去。
現在。
あらゆる攻撃の分岐。
創造が振るう。
――私は動いた。
反応でなく。
“そこにいるべき未来”を掴んだから。
「……なに?」
創造が、本物の驚きを見せた。
初めて――
私は彼女の攻撃を“避けた”。
さらに避けた。
また避けた。
創造が微笑む。
「ようやく目覚めましたね。
禁断の進化……
“不可避超越”」
ニャが震える。
【ユーザー、無限進化状態に移行】
【成長速度が“現実”の上限を改変中】
感じる。
概念が強くなる。
魂が広がる。
存在が昇る。
創造が手を上げた。
小宇宙が震える。
「面白い。
では……楽しみましょうか」
攻撃。
私はまた避ける。
その瞬間――気づいた。
ニャが絶叫。
【更新:不可避超越が連動】
【ユーザーと感情的に繋がる全存在が同時進化を開始!!】
は!?
感じた。
全員の進化が始まる。
ダリウスの身体から混沌が噴き上がり、
ロナンが神気を放ち、
カエルの魔力回路が星みたいに光り、
セレーネの聖力が覚醒し、
リラの矢は概念を貫き、
ナリの思考が次元拡張し、
アニーの竜魂が咆哮し、
エリサの神性が芽吹き、
フェンリルが神狼へと変質し、
セラフィナが真なる吸血鬼へ昇華する。
原初ですら震えた。
ルナの目が見開かれ、
ローグが笑いを止め、
フレイが固まり、
創造と永遠が互いを見る。
永遠が呟く。
「こんなこと……起こるはずがない。
凡人が原初を巻き込んで進化なんて……」
創造が微笑む。
「でも彼女は“自由”。
どんな制約も受けません。
これが新しき女神……
“自由の原初”の力です」
胸の奥で何かが燃えた。
星みたいな、宇宙みたいな炎。
私は手を伸ばす。
オーラが爆発。
「みんなで強くなるんだ。
全員で。
深淵の王を──
ぶっ壊すために!!」
創造が楽しそうに笑う。
「いいでしょう。
では続けます。
次の一撃を生き残りなさい。
そして……
さらに進化なさい!」
彼女が攻撃を放つ。
そして今度は――
私が“準備できていた”。




