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それから日々行われた部活動で、アリーシャたちは何度も朗読会を行い、国語の教科書に載っている文章が暗記できる程までになってきた。
次の文章が頭に入っていると、言葉がスラスラと出てきて、感情をこめられるようになってきたが、逆に次の言葉がわかる焦りからなのか、相手の言葉が終わるのを待たずして話始めたり、早口になってしまうことがあり、そこが次の課題となっていった。
そうして練習が楽しくなってきた頃に、残念ながらテスト期間となり、練習は一旦お預けとなった。
学生は勉強が本分である。
テスト期間中は部活動はお休みだ。
この期間は部活だけでなく、バイトもお休みをしているので、いつもの四人で集まり、いつも集まって喋るために使っている自習室を本当に自習のために使用してテスト勉強を行った。
その際に、いつもお菓子を提供してもらっているお礼もかねて、アリーシャもお菓子を持参してみんなで食べることが出来た。
日本のお菓子は個装になっていたり、持ち運びやすいスナック菓子があったり、最初は過剰包装ではと感じていたが、こうやって外で集まってみんなで食べてみたりすると、その便利さを実感する。
テスト期間中も、アリーシャは家で自主練を行っていた。
部活を休んでいる間に、せっかくできるようになったことを忘れたくなかった。
あまり部屋でうるさくするのは申し訳ないので、小さな声での練習にはなったが、それでも毎日文章を読むための速さで声を出すというのは、ただ友達と喋っているのとは違うので、良い練習になったと感じられた。
読むのを国語の教科書だけでなく、歴史の教科書も追加したことにより、テスト勉強にもなったので一石二鳥だ。
テスト期間が終わって、部活が再開されて、そうしてあっという間に冬休み目前となった。
日本の冬は、あのとても長かった暑い夏を忘れさせるくらい寒く、そして天気がいい日は青空がとても綺麗で、そして何故かクリスマスは祝うのに、クリスマス休暇はない。
宗教の違いだとかいうけれども、そもそもの話、宗教が違えばクリスマスを祝わないのだということを、彼らはあまり理解していないようだ。
そんなクリスマスも冬休みも目前という時に、学校の体育館に集まって宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読んでいる。
それはなんだか、クリスマス前の過ごし方としては不思議な集まりで、そしてその不思議な気持ちが幸せでもあった。
現在朗読している物語は、台詞も多く、その前にキャラクターの心情を表す表現もあるので、感情を意識しながらの朗読を行えた。
台詞に感情を乗せて読むのは、今までの聞き取りやすさだけを意識した朗読とまた違った難しさがあった。
また、まだ演技するということに対して、恥ずかしさがあったせいで変に緊張したりもした。
自身が日頃あまり言わないであろう台詞の言い回しに、どういった抑揚をつけて読むべきなのかという考察も必要だった。
一度読み終えると、全員でペンを持ちながら、発音の仕方や抑揚の付け方、読み方が間違っていたり、早く読み過ぎていた所などを挙げ、注意と反省会を行った。
そうして話し合いをしていると、ふいにガラリと第二体育館の入口の扉が開いた。
急に開いた扉に驚いて、全員でそちらに視線をやると、制服を着た女子生徒が三名、中を覗き込んで見ていた。
制服は学年によってリボンの色が変わるようになっているが、彼女たちの付けているリボンからして、同じ一年生のようだとわかった。
「あ、急にごめんなさい」
勢いよく扉を開けた割に、急に注目されたことに委縮したのか、扉を開けた彼女は小さくそう謝った。
「凛子、遊びに来たよー」
そんな彼女の後ろから、別の女子生徒が顔を出し、凛子に挨拶をして手を振った。
「なんだ、礼奈に美鈴じゃん、見に来たの?」
どうやら彼女たちは凛子の友人のようだった。
「演劇部やってるって言ったら興味がありそうだったから、見たかったら遊びにおいでって言ってあったんだ」
そしてどうやら、演劇部始まって以来の、入部希望者になるかもしれない人たちのようだ。
「ごめんね、急に来ちゃって」
松井 礼奈と井元 美鈴の二人は、凛子と同じ二組の一年生だった。
申し訳なさそうに謝る礼奈に対し、美緒莉は首を振った。
「全然だよー。あ、よかったら朗読やってみる? 結構ね、楽しいよー」
是非と美緒莉が使っていた原稿を差し出せば、礼奈はそのままそれを受け取り、原稿を目で追った。
美緒莉の癖のある文字で注釈が書かれている原稿を見た礼奈は、おおと小さく感嘆の声を上げた。
「凄い、いろいろ書いてあるんだね」
「まだただ読むだけしかやってないんだけどね、結構奥が深いんだよお」
肩を寄せ合い、同じ原稿を二人で見ながら、どこがどう難しいのだとか話す、美緒莉は楽しそうだ。
その後、朗読の続きを行うことになり、遊びに来てくれた二人はそのまま見学をしていく流れとなった。
朗読に参加しない人が見ている中での練習は、いつもより緊張したが、練習していただけあって、そこまで失敗せずに終えることが出来た。
その後、見学に来てくれた二人も、冒頭部分の朗読に参加して、その日はそれで帰って行った。
彼女たちはそれなりに楽しそうに参加してくれていたように思えた。
「入部とか、してくれたりしないかな」
帰った彼女たちを見送ったアリーシャがぽつりと零すと、近くにいた冴は肩をすくめて言った。
「どうだろうね。今日は本当に凛子目当てで遊びに来ただけみたいだし、まあでも活動しているってことが少しでも噂になればいいなとは思うよ」
冴は以前から活動していることが大事だと言っていた。
噂が本当に参加したい人に届けば、入部をしにこの体育館の扉を開けに来てくれる人も来るのだろう、きっと。




