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白雪姫になるための魔法  作者: sin
長い長いプロローグ
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この物語はフィクションです。

実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。

一応ディズニーの長編アニメ『白雪姫』は著作権切れでパブリックドメインになっていますが、いろいろアレな感じなので、問題があれば消えます。

アメリカのとある郊外にある家のベランダから、小さな歌声が響いていた。

ディズニーアニメ、『白雪姫』の挿入歌、『いつか王子様が』。

鼻歌交じりにその歌を歌うのは、この度大学への進学が決まった、この家の娘、アリーシャだ。

ラテン系アメリカ人の彼女が歌うその曲は、何故か日本語訳された歌詞だった。

アメリカ郊外のこの場所で、ラテン系アメリカ人の彼女がわざわざ日本語訳された歌を歌うのに違和感はあれど、彼女の歌う日本語自体には全く違和感もなく流暢(りゅうちょう)だった。

短い曲を歌い終えると、換気のために開けたベランダの窓に背を向け、腰に手を当ててぐっと気合を入れた。

少し前に荷ほどきを終えたばかりの部屋であったが、次は大学進学のために荷づくりをしなければならない。

部屋に飾った思い出の品も、いくつか見繕って持っていこうとアリーシャは決めていた。

あまり大荷物にする予定はないが、写真の何枚かと、色紙くらいなら荷物にもならないはずだ。

過ぎ去ってしまったあの日々、友人たちとは遠く離れてしまったけれども、彼女たちと過ごした思い出は、きっとアリーシャのこれからに、たくさんの勇気を与えてくれるのだろうから。


***


ラテン系アメリカ人のアントニオとイザベルを両親として生まれたアリーシャは、二人の愛をたくさん受けてすくすくと育った。

後に二つ下に弟のエミリオが生まれ、二人姉弟となり、わんぱくな二人はいつも庭を駆けずり回って遊んでいた。

そんな二人が大人しくなるのは、アニメを観ているときだった。

両親は子供ができたら観せたいと思っていたアニメをピックアップしていて、今日はお父さんお勧めのあのアニメを、今日はお母さんの大好きなあのアニメをと、二人が笑顔で説明してから流してくれたアニメを観る時間が、アリーシャはとても好きだった。

そんな環境で育ったアリーシャは、勿論アニメが大好きになった。


最初は両親の勧める子供向けのアメリカのアニメばかり観ていたが、だんだん他国のアニメも見るようになって、結局はまったのが日本のアニメだった。

異世界ファンタジーも、SFも、恋愛ものも、全然知らない職業をピックアップしたアニメまであった。

どれもこれもとは言い過ぎかもしれないけれど、面白いアニメがほとんどで、胸躍らせる内容の作品に多く出会えたのは事実だった。


字幕でアニメを観ていたせいか、片言の日本語を真似して喋るようになったり、アニメに当たり前のように描かれているわからないものが気になって調べているうちに、アリーシャは日本という国に興味を持つようになった。

半分くらい異世界のように感じていた、アニメによく登場する日本という国は、アリーシャの今通っている学校と違う形態をしており、アニメの世界だから行われていると思っていた、体育祭や文化祭というイベントを、実際に本当に行っているという事実を知り、アリーシャは本気でカルチャーショックを受けた。

そして、自分の通っている学校では、そういう行事が行われていないという事実を本気で受け入れられなくなり、嫉妬と悔しさで夜通し泣き続けた。

泣いて泣いて泣き腫らして、すっかり涙も枯れた頃、すっきりした頭になったアリーシャは閃いた。

うちの学校でやっていないのなら、そういう行事がある学校に行けばいいのだと。

折角通うのならば、日本の学校に通ってやると。

幸い泣き腫らしたアリーシャは十歳になったばかりだった。


今から両親を説得して行くとするならば、中学校には間に合う腹積もりだった。

しかし、両親への説得は難航した。

日本という国は十歳になったばかりの子供が行くには、当たり前だが遠すぎるのだ。

両親には仕事もある、移住なんてできるわけもないし、百歩譲って行けたとしても、誰一人ちゃんとした日本語を話すことが出来ない。

かの国のほとんどの国民は、母国語以外の言葉を喋ることが出来ないという話は、アリーシャの両親でも知っていた。

それでもアリーシャは諦めきれなかった。

一生は一度しかない。

十代の時期だって一度しかないのだ。

大人になってから旅行として行けばいいと両親は言うが、アリーシャは学生として、あの可愛らしい制服を着て、学校に通って、多くの同級生たちと、スポーツの大会を、文化祭という催しを、開催するために準備に走ったり、団結するために声を掛け合ったり、実際に体験したりして自身の人生の思い出として心に刻みたいのだ。

そしてその体験をできるのは、今でしかないのだ。

アリーシャは十歳だったが、気持ちとしては子供であるつもりはなかった。

アリーシャの知っているアニメのキャラクターたちは、こういう時に泣いて喚いて駄々をこねたりなんてしないのだ。

両親を説得できる材料を、自分のこの胸に(くすぶ)っている情熱を、上手く言葉にできる方法を、交渉に必要な手札を、なんとしてでも揃えなければならなかった。

インターネットの掲示板を使いながら、自分にできる範囲でわかりやすく丁寧な文章で質問をして、知らない大人たちに両親を説得するための知恵を借りた。

かかる費用、ホームステイ先、どのくらいの学力が必要なのか、難しい話がほとんどだったが、頑張っている自分はなんだかとても大人になった気分だった。


彼ら曰く、まず中学校は諦めろとのことだった。

これは意地悪で言っているわけではなく、必要な準備期間なのだという。

まず今の年齢で親元を離れるのは、いくらなんでも早すぎるという。

確かにアリーシャもそれはそうかもしれないと感じた。

両親は大好きだし、離れて暮らすことを考えると、とても寂しく感じてしまう。

本気で目指すなら、高校での留学、そしてその間にやらないといけないことは、日本語の習得だという。

ある程度勉強ができるのならば、受け入れてくれる学校はいくつかあるだろう、しかし、行事に本気で参加して楽しみたいという目標があるのならば、同級生とのコミュニケーションは必須だ。

英語ができる子がちらほらいるかもしれない。だが、君が仲良くなることが出来るのは、その英語ができる子だけで十分なんだろうか。

翻訳アプリなどの便利なものはもちろんあるが、みんなが楽しく笑っているとき、君だけ笑えないことがあったら、その時心に壁を感じてしまうことがあるかもしれない。

だからそれまでに、必ず日本語を勉強しなさいと多くの人が言っていた。

それに日本語を勉強した後に観るアニメは最高だという書き込みもあって、アリーシャはそれはとても楽しいかもしれないと思った。

そしてその期間にたっぷり両親からの愛を充電しなさいという書き込みもあった。

高校留学を本気で三年間やるのならば、両親と離れることになる。

ビデオ通話もあるのだろうけれど、やはり会って話すのとは全然違う。

あなたが寂しいと思う気持ちと同じくらい、両親も寂しいと感じるはずだから、たくさん写真を撮って、たくさん両親と過ごす時間を、その準備期間に設けるべきだという。

アリーシャは、この意見はあえて両親に話すことはしなくても、大切な意見として採用することを決め、この書き込みをくれた人に感謝の気持ちを伝えた。


次に現実的な話について、留学先、受け入れてくれる制度、そしてそれにかかる費用のことだ。

費用は両親と相談すること、場所はアリーシャの成績や、どのように留学を行うかによって、都心でない学校に通うことになるかもしれないという。

だが都心でなくても素敵な体験ができるはずだということ。

また、彼らは差別意識は低いかもしれないが、周囲に外国人がいないという環境で育っている人が多く、外国人というだけで警戒される可能性があること。

一生懸命調べた内容を、パワーポイントにまとめて両親に説得するためのプレゼンテーションを行ったのは、アリーシャが泣き腫らした夜から二か月過ぎた頃のことだった。


アリーシャの本気に、両親もちゃんと応えてくれた。

つけられた条件は、三つだ。

まずは、学校の勉強をきちんと行うこと。

留学するにも、向こうの中学生レベルの勉強ができていないと難しいという。

間違いなく留学するにはここはクリアしておかなければならない点だ。


次に、日本語をちゃんと勉強すること。

これに関しては日本語の家庭教師をつけてくれることになった。

日本語ができないことによって、娘が留学先でいじめられないか、両親はとても心配していた。

その可能性をアリーシャは全く考えていなかったが、ありえないことではないかもしれない。

留学を成功させるために、アリーシャは本気で日本語に取り組むことに決めた。

ついでに、日本語を勉強することにあたって、アリーシャと共にアニメ大好きで育った弟もこれ幸いと一緒に勉強したいと声を上げたので、二人で勉強することになった。


そして最後に、留学先は両親が決めた学校にすること。

これに関しては文句も何もなかった。

具体的にどの学校に通いたいという希望はなかったし、制服だってブレザーもセーラー服もどっちでもかわいい。

都心でなくてもよい体験ができるという書き込みがあったのもそうだし、アニメのキャラクターたちが通う学校が、都心じゃない場合もあって、それはそれで美しい描写に胸躍らせていたので、どのような学校になるのか、むしろ楽しみが出来たのだと思っている。

現実的な話が両親と出来たアリーシャは、まずは両親に、次に掲示板の大人たちにたくさんの感謝の言葉を伝えた。

夢に一歩近づいたアリーシャの心には羽が生えたようだった、どこまでも飛んでいけるような気がした。

そんな翼がぽっきりと折れそうになったのは、日本語を勉強し始めてからだった。

アリーシャはラテンアメリカ人の有色人種です

ラテン系アメリカ人の苗字を調べてみたところ、父親と母親で苗字が違ったり、子供は父親と母親から苗字を貰ったりするらしく、じゃあ母親の苗字とされるのはどこで、ミドルネームを入れると結局どうなるの?となったため、この家庭の苗字は本作では出てきません

主人公がラテン系アメリカ人なのに、作者はラテン系アメリカ人のことを何も知らないし、なんならアメリカのことも詳しくないので頑張って調べて書いています

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