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修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね  作者: 星里有乃


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「この大陸では、悪役令嬢の条件は赤毛が本来の基本条件。ダークピンクという中途半端なカラーなのに貴女は悪役令嬢として、認定されてましたねぇ」

「暗がりでは亜麻色に見える髪が、光に当てるとダークピンクになる。これを私の父はピンク髪が条件の聖女認定に申請して、見事に落とされたわ。なのに、赤毛に近い設定は裏で通っていたなんて」

「ひひひ……まぁ悪役令嬢を認定する協会なんて、存在しておりませんし。聖女審議会が聖女の敵対者となる警戒対象として、勝手に名付けているのですよ。致し方ない……では改めてお聞きします。下らない聖女審議会の犬は卒業して、我々と組みませんか?」


 よく見ると、魔族のローブは黒く染めているため気付かなかったが、聖女審議会が身につけているものと色違いだった。


「貴方、本当に魔族なの? それにそのローブは、聖女審議会伝統のもの……」

「くくく……よく気づかれましたね。このローブは私がかつて、魂を捧げた聖女審議会のローブをアレンジしたものです。そして、私は魔族でもあるし人間でもある」

「闇堕ちした聖職者……バルク」


 ハンナが怯えた目で、相手の正体に気づいて呟いた。


「どういうこと。人間が闇堕ちして魔族になるなんて、そんなこと出来るの」

「生贄を捧げるんですよ。魔族や人間からそれぞれを生贄に、そして契約の呪文を唱えて融合した魂を生成するのです。人体生成で得た新しい肉体、違法の錬金術。聖女審議会が私に絶対使うなと禁止した、最高の秘術です」


 自慢の錬金術なのだろう。

 誇らしげにどのようにしてこの肉体を得たのか、そしてそれが秘術であるということをアピールしている。


「……貴方の肉体は人体生成で?」

「もちろん! 私は自分の生まれにも宿命にも嫌気がさしてましてね。まぁお喋りしてもこれ以上進まないでしょう。私の弟子達と一戦交えて、人体生成の素晴らしさを体感してください」


 バルクが錫杖を振ると、地面から何体もの人体生成の半人半妖が現れた。ソンビのような風貌で、完成した状態のバルクとは容姿がまるで違う。


「さてと、彼らは一度死んだ存在。故に、物理攻撃は意味を為さない。そして、貴女達はこの空間では魔法が使えません。ひひひ……どうやって戦うか見ものですねぇ」

「なんですって?」


 散々、対策を練ってきたのに。まさか、物理魔法の両方が封じられているとは、予想外の展開だ。


 キィイイン!

 バシュッ!

 ザッ!


 次々と、ゾンビ達はルイーゼ達に襲いかかるが、斬っても斬っても立ち上がり、斬られた手足もすぐに修復する。


「嘘でしょ! これじゃあ、キリがない」

「マズイですね。こちらの体力消耗まで、連撃で粘る気ですよ」


 サポートに専念していたハンナも攻撃に参加せざるを得ないほど、追い詰められていく。


「それこそ、聖職者のスキルなら対抗出来るでしょうが。ルイーゼ嬢、貴女は防御壁魔法や補助魔法は使えても、聖なる攻撃スキルは取得出来ていない様子」

「聖なる攻撃スキル、上級職を極めないと取得不可能なものを引き合いに出されても」

「そんなの見習い修道女や聖女になりたてで取得出来る技じゃないのに」


 今回のチームメンバーは全員が女子修道院の所属者だが、聖なる攻撃魔法は大司祭レベルでも取得者が少ない秘術だ。ルイーゼも聖女とはいえ、まだ駆け出し状態でそんな大技はまだ遠いだろう。


(落ち着いて、考えないと。こういうのは何かカラクリがあるはずよ。聖なる魔法攻撃なら達と言ってるし、嘘ではないんだろうけど。根本はただの錬金術だわ。錬金の元を絶てば……)


 それらしきものを見つけようと、必死に周辺を探る。

 怪しいのはバルクが手にしている錫杖、邪教を祀るための祭壇、セットされている魔術書。


 けれど、ゾンビと戦っているうちにどこかで見た光景と被る気がして、不思議な違和感を感じる。


(なんか、この光景……以前もどこかで目撃したような)


 斬られたゾンビは一旦崩れて、しばらくすると地面から修復して復活。そう見えていたが、本当に復活しているのだろうか?


(そうだわ。この雰囲気、美加の記憶を俯瞰の目で見た時の光景と似てる?)



『新宿歌舞伎町のビルで、飲食店勤務の女性が飛び降りをした。不思議なことに、彼女の遺体は見つからず、愛用していたゲームのグッズが散らばるだけだった。魔法を意識したグッズには、本物の異世界転移の魔法陣が刻まれていたが、それが本当に発動した』


 魔法陣が刻まれたグッズは確か、ピクチャーカード! ということは、この術は人体生成でもなければ、錬金術でもない。


「ハンナ! カナリヤ! この術は、ただのピクチャーカードを用いた召喚魔法よっ。地面にピクチャーカードが埋まってるはずだから、それを壊して仕舞えば良いだけ!」

「ちっ。小娘がァァあああっ」

「燃やすアイテムと言ったら、これっ。火炎弾……!」


 図星だったのか、形相を変えて焦ってゾンビをさらに召喚するバルク。ピクチャーカードは補助アイテムの火炎弾により、燃やされてゾンビの無限召喚は出来なくなった。


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