菜々子の過去
グループワークの授業が自己紹介と過去の身の上話のみで終わってしまった翌日、広大と由香里は放課後に屋上で会っていた。授業中に作業が終わらなかったため、今後の立ち回りを決めるために集まる約束をしていたのだが・・・。
「すまん、少し遅れた。」
「いえ、私も5分ほど前に来たばかりなのでお気になさらず。あ、菜々子ちゃんなら今日は体調不良で休みです。」
「え?そうなのか。」
広大は何となく罪悪感を感じた。勿論、広大のせいで菜々子が体調不良になった訳ではない。ただ昨日の今日ということでどうしても気にせずにはいられなかった。
「石川くん、もしかして菜々子ちゃんの体調不良を気にしていらっしゃるのですか。もし、昨日の事が原因だとしたらそれは私のせいですか石川くんが気に病むことはありません。」
「ああ、ありがとう。」
「それとグループワークのことですが私の方で終わらせておきました。
「ええ?丸々残っていたのにか?」
「私にかかれば問題ありません。それとは別で今日はお話ししたいことがあります。」
そうだ、グループワークが終わったのならわざわざ放課後に会う必要はない。どこかの休み時間にでも広大に待ち合わせの中止を伝えればよかっただけだ。
「石川くん、今から私が言うことは菜々子ちゃんには秘密にしてください。」
「その口ぶりからすると石橋さんが俺に知って欲しくないことを川端さんが代わりに言おうとしているという認識で合ってるか?」
昨日の話が関係しているであろうことは広大にも察しはついている。
「それは、分かりませんね。昨日、菜々子ちゃんが泣いた時があったでしょう?その時に菜々子ちゃんが言いかけていたことの続きを、私は話そうとしています。」
「・・・何故話す必要があるんだ。結局は要点を絞ると俺の投球フォームが石橋さんのお兄さんが投手をしていた時のフォームと似ていて、だから俺を見ていた。それでこの話は終わりで良いじゃないか。昨日も言ったが誰だって知られたくない秘密の一つや二つはあるだろう。」
菜々子と由香里は親友だということは広大も分かっている。頭の良い由香里のことだから何の考えもなく過去の話を暴露しようとしている愉快犯ではないこともわかる。恐らくは菜々子のために起こしている行動なのだろう。
由香里は一息つき、ゆっくりと話し始める。
「そうですね。私も少し話を急ぎすぎました。もう少し段階を踏んで話を進めましょう。」
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