川端由香里はやべー奴2
「私は石橋菜々子。由香里と同じ光が丘西小出身で部活も同じく陸上部。一週間だけどよろしくね。」
「菜々子ちゃんは本当に真面目ですねえ・・・。」
「由香里がおかしいんだよ・・・。ちょっとツッコミ疲れたからこれ以上はボケないでね・・・。」
(ツッコミをしてる自覚はあるのかよ)
そう思いつつも広大は自身の自己紹介にうつる。
「俺は石川広大。光が丘東小出身だ。野球部に所属している。一週間だがこちらこそよろしく頼む。」
「へー。石川くんは野球部なんだぁ。」
かなり意外な返答が菜々子からきた。野球部の練習を約半年の間、勿論毎日ではないが陸上部の休憩中であろう時にちょくちょく見にきておきながら、広大の顔を見て野球部であるということさえ知らなかったらしい。
菜々子の目的が少なくとも自分ではないことを知って何とも言い難い、複雑な気持ちになった。
(いやいや、何だこの感じは。むしろここはホッとすべきだろう。万が一の時には部員に対して石橋さんの目的が自分ではないことの証拠となり得る証言が取れたのだから)
「菜々子ちゃん、流石に白々しいですよ。そんな事で私を欺けると思っているのですが?」
「なな何のこと、由香里!?」
「良いですか、菜々子ちゃん。まずあなた、ここ約半年の間ずっと陸上部の練習の休憩中に野球部の練習を見てますよね。」
「えええええええええ!!知ってたの由香里!?」
「菜々子ちゃん、授業中ですよ?うるさいです。」
由香里はそう言いつつも真綿で首を絞めるかの如く、少しづつ菜々子を追いつめていく。
「多分、石川くんもそのことには既にお気づきなのではないでしょうか。どうです石川くん。」
「まあ、この際だから正直に言うと俺だけじゃなく野球部員全員知ってるよ。」
「うわあああああああああ!!」
「だから菜々子ちゃん、うるさいです。」
確かにうるさい。だが、授業中とはいえ幸いにも今はグループワーク中だ。他グループもそれなりに盛り上がっているため菜々子が注目されることはなかった。
「で、でも私が見ていたのはあくまで野球が好きだから。石川くん、こう見えても私ね、大阪ライガースの大ファンなんだよ。」
大阪ライガース、プロ野球屈指の人気球団であり地元関西圏だけではなく全国に満遍なくファンが定着している。強いかと言われると微妙だが、21世紀に入ってからは三度のリーグ優勝をしており7割方はAクラスの3位以内に入っているため、少なくとも弱くないと答えることはできる。
広大もライガースのファンであり、小遣いを貯めては球場に足を運んでいる。
「石橋さん、ライガースファンなのか。俺もライガースファンだ。やっぱり女子にも野球好きはいるんだな。」
「石川くんも!?奇遇だねー。」
菜々子は本当に奇遇だと言った感じで驚いたような表情を見せつつも、その後天真爛漫で屈託のない笑顔を見せる。
「!!」
広大はそんな菜々子の笑顔を見て一瞬だがドキッとした。
(これはズルい。反則だ。誰だってこんな笑顔を見たら心動かされるだろ・・・。別に石橋さんがどうだとか、そんなのは関係ない)
「盛り上がってるところ、恐縮ですが。」
再度、由香里の菜々子に対する追撃が幕を開けた。
「菜々子ちゃんが野球好きなのもライガースファンであることも知っています。でも本当のことを言うことで肝心な部分を誤魔化そうったって、そうは問屋が卸しません。」
「あくまで私調べですが、菜々子ちゃんが野球部の練習を見ている時、必ずと言っていいほど石川くんが投球しているのですよ。」
核心を突かれたのか、菜々子の顔はみるみるうちに恥辱に震え、頬は赤くなっていく。
由香里は新太と全く同じ考察を披露した。由香里は学年でも成績はトップレベルで常に3位以内には入っている。対して新太は良くてど真ん中、平均すると中の下といったところだ。そのため、新太の観察眼がズバ抜けて良いのか由香里の観察眼が新太レベルでしかないのか、どういう表現をすれば良いのかは正直分からない。
由香里はトドメだと言わんばかりに、
「まだ、続けますか?この間はなんか練習が終わった後に石川くんの跡を・・・」
「うわわわわわー、ストップストーップ!!」
由香里が何か不穏なことを言いかける前に菜々子が遮った。見るからに由香里の圧勝、菜々子のライフはもう0といった感じか。
「わかった、わかったから。もう話すよぅ。」
「そうですか、賢明な判断ですね。」
は菜々子は観念したように口を開いた。
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