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第52話 ベテラン冒険者③

 セバスティアーナさんが戻ってきた。


 俺は皆にはセバスティアーナさんの事は斥候と伝えておいた。

 ニンジャーというのが斥候かといわれると俺もよくわからないが、本人は似たようなものです、と言っていたので間違いない。


「皆様、ブラッドラプトルはこの先の草原にいるようです。おそらくは獲物を探して徘徊しているものと思われます。

 近づけばやつの方から襲ってくれるでしょう。食物連鎖の上位にいる存在ですから堂々と近づいて狩ってしまいましょう」


「おい、カイルよ。このメイドさんは何者だ? 剣を三本持ってるのに動きは俊敏で潜伏もできる。立ち姿も歴戦の戦士を思わせるが……」


「さあ、俺もよくわかりませんけど、彼女には俺の師匠になってもらってます。ちなみに一度も勝ったことがありませんから間違いなく強いですよ?」


「そうか、それは心強い。んじゃまあ、堂々と討伐任務に挑むとしようか」


 俺達はブラッドラプトルが徘徊する草原まで来た。


 奴も俺達に気付いている。俺達を獲物と認識したのか、やや、姿勢を低くして近づいてきた。


 ギルバートさんは背中に背負っていた大盾を取り、前に向けて構えた。

 鉄製の大きな盾、かなりの重量がありそうだ。

 たしかにこれなら武器にだってなるだろう。


「オズワルド、ヘクターいつも通りで行くぜ。カイルよ。俺が奴の攻撃を受け止める、その隙にお前はその剣で奴に攻撃するんだ」


「分かりました、でも奴を引きつけるのはどうするんですか?」


「それはお嬢ちゃんにたのむぜ、あるだろう? 射程距離の長い魔法が」


「ええ、あるわ、流石ベテランね、脳筋のくせに魔法に詳しいじゃない、じゃあ行くわよ『フォトンアロー』!」


 シャルロットが人差し指を前に突き出すと、そこから光の矢がブラッドラプトルの顔面に向かって放たれた。


 フォトンアローは中級魔法の中で最も長い射程と速度を誇るが、威力は他の魔法に比べて弱い。

 だが敵の目をつぶすのに効果的であるため支援攻撃に向いている、パーティーを組んだ時に便利な魔法だ。


 突然、顔面に光の矢をくらったブラッドラプトルは怒り狂いシャルロットめがけて突進してきた。


 速い。二本脚で掛けてくるこの魔物は鋭い牙と爪が厄介だが、最も強力な武器はその脚力にある。俺がヘイストで全力で走るよりも速い。


 一瞬で接近してくるブラッドラプトルの前に大盾を構えたギルバートさんがシャルロットの目の前に立つ。


「ナイスだ嬢ちゃん。よし、お前らいつもの手順でやるぞ!」


 ブラッドラプトルは頭からギルバートさんの構えた大盾にぶつかる。

 オズワルドさんとヘクターさんはそれぞれ手に持った武器をブラッドラプトルに叩きつけた。


 だが傷が浅い。やつのウロコに阻まれて刃が止まってしまう。

 俺も奴の尻尾めがけて剣を振り下ろしたが、剣がウロコに阻まれてダメージを与えるに至らなかった。


 ブラッドラプトルは素早く地面を蹴り後に飛び退いた。


「ち、硬いな。ブラッドラプトルってこんなに強かったか?」


「いままで倒した奴に比べて大きさが違うからな、平均よりも倍くらいのデカさがある。それだけウロコも分厚いんだろうぜ」


 ブラッドラプトルは距離をとりながら俺達の動きを警戒しながらジリジリと近づいてくる。

「ち、頭もいいらしい。今ので学習したようだ。同じ戦法はつかえない、怪我は覚悟しないとな、それに奴の目は生きてる。魔法耐性も高いんだろうぜ」


 フォトンアローは確かに奴の目に当たった、しかし奴の目はしっかりと俺達を捉えている。


 なるほど厄介な敵だな。複数人での討伐が推奨される理由がわかった。


 次の瞬間、奴は俺達に突進をしてきた。

 狙いは再びギルバートさんだ。


 ギルバートさんは大盾を構える。だが直前で奴は地面を蹴り上に飛んだ。

 そして上空から飛び蹴りをギルバートさんに放ち、その重さで盾ごとギルバートさんは後に吹き飛んでしまった。


 盾役を失った俺達に対して奴は各個撃破する構えだろう。


「シャルロット、ギルバートさんに回復魔法を」


「わかったわ」


 ブラッドラプトルの次の狙いはセバスティアーナさんだ。

 おそらく奴は前衛の中では体格的に一番小さいセバスティアーナさんに狙いを定めたのだろう。


 奴はセバスティアーナさんに向けて牙を突き立てる。


 だが、その牙がセバスティアーナさんに届く前にやつは動きを止めた。

 いや、止められたのだ、何に? 奴はまるで前身が凍り付いたように動きをとめた。


「これはモガミ流忍術・裏。忍法『影縫い・弐式』です」


 ブラッドラプトルの足元には二本の剣が突き刺さっていた。

 いつもセバスティアーナさんが腰に下げていた二振りの短めの剣。


 初めて見た。その形は九番の魔剣『ノダチ』に似ていた。

 長さはノダチの三分の一程度の短刀ではあったが、反りのある刀身と綺麗な波紋はノダチそっくりだった。


「この二振りは十番の魔剣『ダブルコダチ』といいまして、私専用に造られた二振りで一つの魔剣です。

 ちなみにこれも魔剣開放は出来ませんが、私の術との親和性が高いつくりになっております」


 たしかに、ブラッドラプトルの足元に刺さった魔剣は奴の影を貫き、そのまま動きを縛っている。こんな魔法は見たことも無い。


 そしてセバスティアーナさんはノダチを抜くと刀身を水平に構える。突き技だろうか。


「せっかくですのでカイル様に一つお見せしたい技があります。剣術の奥義の一つです、いずれはこれを憶えてもらいましょう」


 セバスティアーナさんから、凄まじい殺気を感じる。


「モガミ流忍術・表。壱の太刀『牙』!」


 ノダチの切っ先がブラッドラプトルの胸部を貫く。

 それは心臓を貫通し、背中から僅かに切っ先が覗いた。


 素早く引き抜くと、セバスティアーナさんは言った。


「これがもう少し弱ければ、いろいろ練習台になってもらうつもりでした。ですが今のカイル様たちでは荷が重いでしょう。大けがをされても困りますし」


 俺はあっけにとられていた。

 俺だけではない。回復魔法を受けて俺達に駆け寄るギルバートさんや他の二人、そしてシャルロットもだ。


「メ、メイドさん、あんた何者なんだい」


 俺も同感だ。ほんとこの人は底知れぬ強さがあった。


 …………。

 ……。


「じゃあな、次の機会があったらまた頼むぜ。だが本当に報酬は山分けで良かったのかい? 俺達は足手まといだったんじゃ……」


 ギルバートさんはセバスティアーナさんにばつが悪そうに言った。


「いえ、お気になさらずに、それにこれは口止め料です。私のことは秘密でお願いします。もし口外したら……分かってますね?」


「お、おう、なら遠慮なく貰うとするぜ。正直、盾が壊れちまってどうしたもんか悩んでたくらいだしな」


 俺達は冒険者ギルドにもどり報酬を受け取ると、その場でオーガラバーズの皆と別れた。


 周りはすっかり日が暮れて、街の明かりがキラキラと川に反射していた。


「では、私達も夕食に行きましょうか。カイル様にシャルロット様も今日のことは秘密でお願いしますね」


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