表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/91

第29話 港町グプタ②

 俺達は宿屋街にきている。


 宿屋街は海に面しており、海水がきらきらと輝いている。波の音が聞こえ、爽やかな海風が吹き抜けている。

 白い石畳が敷き詰められ、建物はカラフルな色が施されている。


 屋外にはカフェやバーが点在しており、陽気な雰囲気がただよっている。


「ここは……いい場所だな」


「……ええ、そうね、ビーチに近いし。リゾート地って感じね。素敵じゃない!」


 俺達はしばらくはこの海に面した宿を拠点に活動することにした。


 お金はまだまだある。

 ちなみにグプタで使える通貨は二種類ある。

 エフタル王国とカルルク帝国の通貨がこの独立都市国家グプタの公式通貨だ。


 部屋に入ると、室内には明るいカラーリングの家具が置かれており。

 風に揺れる真っ白なカーテンと大きな窓の外に映るビーチの風景が、俺達を優しく迎え入れてくれた。


 真っ白なシーツの敷かれたベッドに居心地の良いソファー。

 王都にある貴族ご用達の高級宿よりも遥かに安かったが、文句の付けようのない良い宿だった。


「いい感じよ。素敵。もうここに住んじゃおうかしら」


 それも悪くない。

 俺は窓の外を見ていると、後からシャルロットの声がした。


「カイル、さっそくだけど服を脱いで頂戴!」


 若干興奮気味な声だった。彼女はいきなり何を言ってるんだ。


「洗濯機があるのよ! ルカ・レスレクシオンの発明した偉大な魔法機械の一つ、現物は初めて見たわ。さっそく使って見たいから、貴方は先にお風呂に入っててちょうだい」


 ルカ・レスレクシオン。そうだった、俺はその人に会う為に海を渡ってカルルク帝国にいかなければならなかった。


 この宿には他にも魔法機械があった。風呂の給湯器もそうだが、とくに贅沢品の一つとされるこの冷蔵庫だ。

 中には冷えたの飲み物が入っている。さらに驚いたことにその冷蔵庫は二段式になっており、そこには氷が入っていたのだ。


 俺はグラスを二つ取り出し氷を入れて飲み物を注ぐ。

 のどを刺すような酸っぱさと甘さの混じった果実水だった。

 氷が溶ければ程よい濃度になるだろう。そういえば旅の途中に商人がくれた果物と同じ香りがした。


 シャルロットは俺と交代で、今は風呂に入っている。


 その間に部屋にあった新聞を広げる。


 隅から隅まで読む。

 そこにはカルルク帝国からエフタル王国まで様々な出来事が書かれている。

 さすがは貿易で成り立っているだけのことはある。


 どうやら、今のエフタル王国は王が禅譲する形で共和国として生まれ変わりつつあるらしい。

 共和国の最高議長はクリスティーナという女性が選ばれたらしい。

 ドラゴンを招き入れた貴族たちは住民に多大な被害を及ぼした、裁判の結果、国王をはじめとし上位の貴族は全員処刑されたそうだ。


 これには嘘がある。

 裁判官は貴族だ、それが同じ貴族を処刑するなんてありえない。

 それにその後ドラゴンがどうなったかもここには書かれていなかった。

 俺が魔剣で殺したのに、死体はどうしたのだろうか、その辺のことが全て抜け落ちている。


 現在は建設組合や商業ギルド、冒険者ギルドなどのトップを議員に選出して国の方針を話し合う議会制をとっているそうだ。

 これは大変だな。おっちゃんに政治ができるだろうか。大出世したもんだ、少し安心した。


 だが、次の文を読むと、そんな気分はすぐに失せてしまった。


 引き続き、逃げた貴族の追跡は継続するそうだ。

 エフタル共和国は王国だったころの汚点に対して全ての責任をとってこその共和国だとして、その記事は終わった。


 ふう、いずれグプタも危なくなるかもな。


 次の記事に移る。

 ――偉大なカルルク帝国皇帝の意外な過去。意中の男性に付きまとう彼女の本当の素顔とは? かつての学友は語る。カルルク帝国初の女帝は学生時代からすでに女帝だった?――


 なんだ……意味深な見出しに驚いたが、ゴシップの類か。

 こういうの皆好きだよな、魔法学院にもそういう浮ついた話で盛り上がっていた奴はいた。


 シャルロットが風呂から出てくる。

 俺は新聞をテーブルの上に置くと、冷えた果実水の入ったグラスを彼女に手渡す。

 グラスの外側には水滴がついており、中の氷が半分ほど溶けていた。


 彼女はその冷えたグラスに一瞬驚いた。でも中に入った氷の浮かんだ爽やかな香りがする飲み物に直ぐに上機嫌になった。


 いつの間にか夕方になっている。

 今日は疲れたし、風呂にも入ってしまった。外出は明日にしよう。


「今日はこの宿の外にあるカフェで夕食をとろうか」


 俺がそう言うと、シャルロットは果実水を一気に飲み干し言った。


「何があるのかしら。海の幸がいいわ。」


 同感だ、初めての港町だ。今日は海産物を堪能しよう。


「あら、その新聞になにか書いてある。どれどれ……」

 ――旬の海産物は海の見える宿屋で食べよう。グプタが初めてなら、ぜひこれを食べるべき。旬の海産物ランキングトップ10――


「ねえ、カイル、今日は10品食べましょうか、気合入れていくわよ!」


 分かりやすい反応。でも俺も興味がある。

 ゴシップよりもグルメだ。情報ってのは自分に有益な情報以外はどうでもいいのだ。

 皇帝の過去の恥ずかしい話でお腹は膨れんよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ